宮澤諒|建築意匠設計

建築とその周辺の記述。

宮澤諒|建築意匠設計

建築とその周辺の記述。

最近の記事

(仮)成長なき時代の建築論

定常化社会における建築の主題 日本は人口増加が頭打ちとなり、定常化社会へと向かっている。これにより都市・建築の論理は近代化に伴う拡張拡大に対応したものではなく、定常化社会を支える論理が求められるのではないだろうか。 近代化の論理の中で進められて建設行為は、資本主義の流れを進め、その対価として自然環境や既存のコミュニティを破壊してきた。人口縮減による生産力の低下や、度重なる甚大な災害、パンデミックによる社会の変化をみても、資本主義の終焉は現実のものになりつつある。 このような現

    • コンヴィヴィアリティのための道具としての新聞

      コンヴィヴィアリティのための道具としての新聞 2022 〈横浜市郊外住宅地でのプロジェクトを通じて〉 かつての情報発信の拠点である新聞配送所は高度経済成長期では街のコミュニティにとっても大きな役割を担っていたが、その存在は情報化が急速に発達した現代においては不要なものへとなってしまった。 同時に情報というメディアは私たちの身体性を超え、今日のそれらは制制御不可能な存在である。 一方でまちには地域新聞を懲りずに毎月発刊する住民がいるのが発見できた。彼の営みは無慈悲にも少

      • 資本から社会的共通資本へ変換するOS_2

        社会的共通資本 社会的共通資本とは宇沢弘文著の「社会的共通資本」で示されている考え方である。 ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する―このことを可能にする社会的装置が「社会的共通資本」である。その考え方や役割を、経済学史のなかに位置づけ、農業、都市、医療、教育といった具体的テーマに即して明示する。混迷の現代を切り拓く展望を説く、著者の思索の結晶。(本書紹介文より抜粋) 社会的共通資本の考え方は建築学の領域では「コモンズ」と表

        • 資本から社会的共通資本へ変換するOS

          請負業から生まれる新しい流れ 最近の気になるプロジェクトの中に前田建設工業が取り組んでいるICIという事業がある。それはいわゆる前田建設工業の技術研究所であるのだが、他のゼネコンと少し違った点としてICIの一部はまちに開かれ近隣の芸術家や美術系大学、地元自治体との連携や地域住民を取り込んでいくプログラムが企画されている。 このプログラムの興味深い点は、ICIの中の甚吉邸・W ANNEXの運営を前田建設工業の中から運営部隊を立ち上げ自社で実際に運営しているという点にある。

        (仮)成長なき時代の建築論

          テーブル

          テーブルみたいな建築 2023 テーブル 世界の中に共生するということは、本質的には、ちょうど、テーブルがその周りに座っている人々の間に位置しているように、事物の世界がそれを共有している人々の間にあるということを意味する。つまり、世界は、全ての介在者と同じように、人々を結びつけると同時に人々を分離させている。 「人間の条件(ハンナ・アーレント)」 私たちは世界の中に共生していて、他者との関係を持ったり、分離されひとりになることができる。 高度経済成長期に一斉整備され