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国民に資金を貸す国

その国では20歳になった時点で、1000万円ほどの資金を国から与えられる。その資金はどう使ってもいい。生活費にしてもよいし、勉強や趣味など自身の向上に費やすのもよい。
ただし、資金はあくまで国からの貸与であり、60歳の誕生日までに全額返済しなければいけない。
もし60歳の誕生日を迎えても返済されない場合は、懲罰こそないが、返済だけでなく利子が加算されてしまう。

もちろん、資金を返済し、かつ手元に残った分やその後稼いだ分は、国民自身が好きに使って構わない。

どう使うか、どう返すかは人それぞれ

資金の返済タイミングや回数は国民の自由である。自分で稼いだ金があるなら1円も使わず返還し、早々に借金のリスクを抑えるのもよい。
学生時代からバイトを始めておいたり、心配症な子供であれば、お年玉からコツコツ貯めるなどの対策をしているケースもある。
あるいは住居など、必要な分にだけ資金を費やし、生活を安定させた上で余った分を先に返還、残りを稼ぎなどで返していく人もいる。

一方で、無論のこと、ギャンブルなどに一切をつぎ込んでしまい、早々に借金から始まるパターンもある。
またある程度リスクの低い投資や貯蓄であれば、資産を預けて利子のみで返済していき、60歳近くになった時点で投資や貯蓄を解除、残額を返済しきって手元にある分で余生を楽しむという手もあるようだ。

途中の損益

ちなみに該当者が亡くなった場合、未使用の資金は国に返還される。遺産にはならない。
しかし該当者が資金を消費した上で亡くなってしまった場合、財産があれば返済に充てられ、それでも足りない場合は遺族が借金として背負わなければならない。当人が60歳でも払いきれなかったとして利子も発生する。
遺族の方が60歳になっても亡くなった家族の分を返済しきれなかった場合は、利子のさらなる追加こそないが、やはり永久的に返済は続く。

ただ遺族が借金として請け負うのはあくまで1回でよい。例えば祖父が借金を残して死に、その息子が請け負った場合。息子が途中で亡くなっても、その遺族が請け負うのは息子分のみで構わない。
また遺族が複数人いる場合は、全員で借金を等分に負担し、1人あたりの金額を減らすことも可能だ。
そもそもギャンブルで一切合財を無にしてしまったような人でもない限り、借金が遺族1人で足りなくなることは稀である。

国の利益?

国の利益には、あまりなっていない。資金は同額を返せばよいため、国からすると、「60歳でも返せなかった人の利子分」しかプラスにならないのだ。

代わりに、ギャンブル塗れを除けば大抵は手堅く返済に努めるため、国民の生活は安定するらしい。そうなれば、余暇に勤しむこともできる。返済がすんでも生活やそのほかで金は必要だから、経済も回る。と、結果的にはプラスになっているようだ。

金があるがゆえの犯罪

一方で、資金を全てつぎ込んでいないなら、成人した全国民にある程度の金がある状況であり、詐欺や強盗が多いのもこの国の特徴である。
無論、あくまで国の金であるから、罪は重い。犯罪に手を染める=国そのものを敵とみなしたとして、少額の窃盗であっても十年以上もの懲役が発生する。
が、それでも、破産してしまった者からすると、まだ持っている者は妬み嫉みの対象である。さらにバレなければいいという僅かな期待を胸に、無謀にも挑む者は少なくない。ちなみにこの国では殺人よりも詐欺や強盗の方が多いともされ、被害者が亡くなってしまうと、財産を徹底的に調べられ、不自然な損失=盗難がバレてしまうからだ。被害者が生きていて、他言無用と脅迫しておく方が、比較的マシなのかもしれない。
とはいえ、被害者は徹底して守られるため、犯人の監視をかいくぐって警察に保護を求めれば、報復を恐れることなく資金を取り返すことも可能である。

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