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母親失格

「俺、ママのことダサいと思ってるから」
炎天下、汗を流し張り付いてくる横髪を払い除けながら歩く私は、同じく隣で汗を光らせ顔を真っ赤にしながら歩く長男の言葉に、頭を鈍器で殴られたような、突然激しい目眩が襲ってきたような、内蔵を直に握り潰されたような衝撃を受けた。
「だって、好きなこと仕事に出来てないし」
ダサい。
仕事を理由に言われたその言葉は、しかし、私の母親になってからの約12年間全てが否定されたと思うには十分すぎるほど強い力を持っていた。
ーー私の人生は、ダサいのか。
次男を後ろに乗せて押していた自転車がぐらつく。ショックを受けている場合ではない。私は腕に、足に、力を込め直した。
そして、泣きたい心とは裏腹に顔は笑っていた。私には、困ったときほど笑ってしまう癖がある。自分に対するこういったことばには特に、なにも言い返せない。腹が立つよりも悲しくなり、そして困ってしまい笑ってしまう。
長男が中学生になり、次男も手がかかるなりにも色々なことが1人でできるようになってきたこの頃は、よく自分に向き合わなければいけない瞬間が訪れる。
私は何が好きなの?何を楽しいと思い、どういうことを目標にしようとしているの?
これからどうやって生きていくの?

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