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今日はフルーツサンドを食べよう

今日は絶対にフルーツサンドを食べよう。
そう心に決めて家を出て、電車に乗り込む。
パン屋さんのものでも、コンビニのものでもなんでもいい。とにかく食べる。フルーツの種類や生クリームの具合なんかを想像していないと正気ではいられない。
昨日、私は家出をした。
一緒に家にいてと泣く次男の小さな手を握り、家から徒歩20分ほどの公園まで泣きながら歩く。
私も、次男も、ぽつりぽつりとお互いの嫌だったこと、悲しかったことを話ながら聞きながら歩く。湿気を含んだ夜はひんやりと秋の風を纏っている。長男がこの間家に帰ってきて、「秋の匂いがした」と言っていたことを思い出す。その長男と喧嘩をして家を出たことを考えまた悲しくなる。
次男は、飲み物や寝る場所、お風呂はどうするのかと聞いてきた。幸いスマホがあり僅かばかりのお金があったため、飲み物くらいなら買えるだろう。こういう時に車があってお金もあれば、スーパー銭湯に行ったりまんが喫茶やファミレスで過ごすことも出来るのかなと考えたりする。
しかし、私は車を持っていなくて良かったと考え直す。秋の気配を感じとることも、次男と話ながら歩くことも、小さな手を繋ぐことも、公園で少し遊ぶことも、この後探しまわって迎えに来てくれた長男が私へ想いや意見を話しかけながら歩いて帰ることも、車があっては叶わない。
だれもいない公園で、眼鏡を忘れてなにも見えない私と私を元気付けようと変なテンションの次男は、ベンチに座ったり、遊具で遊んだり、小川を眺めたりしてしばらくの時を過ごした。
長男と夫が、夫の運転するバイクで通りかかり、私たちを見つけた。
私はまた泣きながら話す。長男も次男も、ママが必要だと言ってくれる。自分自身にとてつもない嫌悪感を覚える。
私は、子供たちに何を言わせているんだ。
コンビニに寄り、帰宅する頃には夜中になっていた。
明日のことを考えるだけで不安になった。
だから、私はフルーツサンドを食べること、明日も1日みんなと無事に過ごそうと決めた。

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