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福祉業界はなぜ儲からないのか?

今年の春闘では様々な業界が賃上げに成功し、その影響はマイナス金利解除にまで影響しました。元銀行員としてはかなりのビッグニュースで衝撃を受けたことを覚えています。今後さらに景気が良くなるであろうという方向に日本が進み出しています。

では福祉業界はどうでしょうか。今回介護職員処遇改善支援補助金として2月から順次、6000円が支給される事が決まりました。しかし、元々他業種に比べて賃金が低い中で、この金額では焼け石に水だと感じてしまうのは私だけでしょうか。

ではなぜ福祉業界はこんなにも賃金が上がらないのか、その部分について考えていきます。

以下については目次どおりとなっています。


介護報酬で制限されている

介護業界の売上のほとんどが、国から捻出されたものになります。施設側が勝手に報酬を上げることは出来ず、介護度によって決められた金額が国から支給されるということです。一番課題となるのは備品や消耗品のやりくりではないでしょうか。介護度が高い利用者であればトイレに行く事が出来ず、オムツやパッドを消費しますし、認知症が進行している方であれば、備品の溜め込みや破壊もあります。そういった日々のマイナスが自分達の給料に直接影響していく現状では、伸び伸びと仕事に取り組める環境では無く、サービスの質や日々の意欲の低下に繋がるのではないでしょうか。

利用者の人数に制限がある

施設の規模や職員の数によって、利用者の受け入れ人数が決まっています。どれだけ全員一丸となって頑張ろうとも、売上は見込み以上にならず、変わらないという事です。もちろん利用者数を増やしてサービスの質が下がる事は望ましくない為、必要な措置ではありますが、既に利益が確定している仕事だと意欲低下に繋がりかねないと思うのは私だけでしょうか。

内部留保を溜め込んでいる

内部留保とは、施設の経営者が資金を組織内に貯めることで、トラブルに備えて安定した運営を図る取り組みです。トラブルに備えて資金を貯めることは重要なことであると思います。しかし、そちらに資金を回すということは、その分労働者に還元されないということです。売上金が決まっている業界だからこそ、ちょっとした損失でも他業種より痛手になります。しかし、そのせいで低賃金になり働き手も離れる事になったら、より損失になる事でしょう。守りに入りすぎず、良い人材を確保出来る様攻めの姿勢も重要ではないでしょうか。

大きな改革に乗り出すエネルギーが無い

個人的に福祉業界は業務の改善に後向きな姿勢であると感じます。人手が少ない割に無駄な業務が多いと感じるからです。例えば利用者の様子を記録する際も、まだ紙媒体で記入している施設もある様です。また私の施設でも、シフト制によりそれぞれ出勤時間が異なる為、申し送りを伝言ゲームの様に多くの時間を使い行っています。ITを取り入れ業務の簡略化が出来そうな部分がたくさんあるにも関わらず、初期投資の資金捻出が困難であったり、業務が忙してマニュアルを変える暇が無いといった理由で、古い体制で現在も運営されている施設が多い様です。確かに出費や多くの時間が必要かと思いますが、長い目でみればプラスになるのであれば、むしろどんどんと取り入れていく必要があるのではないでしょうか。

負の連鎖から抜け出すためには

如何でしたでしょうか。正直なところ、法律面は我々一般市民が訴えたとしても、すぐに変えることは難しいと思います。しかし、施設で出来る給与アップの方法はいくつかあります。給与水準が低過ぎて人手が集まらない、また給料が上がらず人材流出が止まらないという負の連鎖を抜け出すためには、施設側も未来への投資だと思って、変化を恐れずに行動していく事が求められるではないでしょうか。


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