見出し画像

#3 公務員(土木)は残業が多い!?夜遅くまで頑張っているんです


出先機関(土木事務所など)の仕事は残業ありき

残業が多くなる理由は仕事内容によるものが大きいです。公務員(土木)の主たる仕事は、①設計書作成(積算)②工事監督③用地買収④苦情対応です。その中で、1番時間がかかる作業が①設計書作成(積算)です。

例えば新しい道路をつくる際、道路をつくりたい場所の地形を調査し図面にする「測量作業」、道路の構造や最も経済的なルートなどを決める「設計作業」、設計に基づき買収しなければならない土地の範囲を整理し、手続きに必要な書類や現地での土地の境界確認(民地同士や里道や道路などの官地との境界)などを行う「用地測量」などの作業が必要となります。

それらの作業は、公務員(土木)がリードしながら進めるのですが、実際の作業は外部の測量・設計会社へ委託し、成果を取りまとめてもらいます。用地買収後に工事を発注する際にも外部の会社に工事を受注して貰わなければならないため、設計書の作成(積算)が必要となります。

設計書作成と積算業務

外部の会社に業務や工事を受注して貰うためには、実施して貰う業務の条件(作業期間や有資格者の配置条件など)や金額、数量や図面などを取りまとめた書類をつくらなければならず、それが設計書となります。

なぜ、設計書が必要かというと、発注する業務の適正な価格を算出するためです。受注業者はその設計書を見て業務内容を理解し、発注者が提示した価格で利益が見込めるかを判断し、受注するかどうかを決めることとなります。もし設計書にミスがあった際は入札が取り止めとなり、再度設計書の作成と入札をおこなわなければならなくなり、手続きに時間もかかるため、設計書作成時はミスがないように集中して作業をおこなう必要があります。

積算業務とは

設計書作成の中で最も厄介なのが、発注する業務や工事の金額を算出する「積算」業務です。これは新たにつくる道路や地形などに応じて細かく基準があり、基準通り作成すれば基本的には誰が作成しても同じ金額になります。この基準書は「歩掛り(ぶがかり)」と呼ばれ、県や市長村は国が毎年作成・更新したものを使用(準用)しています。この歩掛りには1つ1つの作業における細かい条件が記載されています。読んだことがない人は基準に基づいて淡々と作業するだけでは?と思うかもしれませんが、発注する業務や工事の条件に合うように歩掛りを選択する作業は、類似の業務や工事の現場を実際に見て経験したことがある人でなければ簡単ではないため、非常に時間がかかります。

例えば、都市部で片側交互通行規制をしながら既設の古く傷んだアルファルト舗装を取り壊し、新しく舗装をするとします。積算する際は、工事の時間は昼間か夜間か、どういった大きさの重機で作業するか、新しく舗装するアスファルトはどれを採用するか、交通誘導員は何名配置するか、資材や取り壊したアスファルトはどのルートを通って運搬・搬出するか、などの条件を事前に整理し、設計書に反映させなければなりません。また、これらの条件を整理したとしても、実際に施工可能な計画となっていなければ、工事業者に発注者の計画では条件が悪く儲けが出ないと判断され、落札してくれない可能性が高くなります。

よって、公務員(土木)には、工事現場付近に住んでいる住民や通行する方々(第3者)へ少しでも迷惑をかけずに工事をするためには昼間が良いのか夜間が良いのか、実際に施工会社はどのような規模の重機を使って工事をおこなうか、工事業者や地域住民などへの安全対策に必要な資材・人員はどのくらいか、などがイメージできなければなりません。また、使用する材料(アスファルトなど)については、なぜその材料を使用するのかを経済性や施工性、基準書等から説明できなければなりません。これらは勉強しても分かることではないため、いかに現場を経験するかが重要になってきます。特に若手の頃は先輩や上司と一緒に現場に行き、疑問に思ったことは質問し、施工会社や設計会社とコミニケーションをとることが最も成長の近道になると思います。

それらの設計書作成業務は、本当は日中やりたいのですが、他の②〜④の業務や施工現場を見るのは相手がいるため日中しかできません。よって、必然的に最も時間がかかる設計書作成作業は残業してやらなければならなくなります。国土交通省では、こういった状況を改善するため、①設計書を作る担当②工事監督をする担当③用地買収をする担当などを分け、分業化していると聞いたことがありますが、私が勤めていた県では分業化が進んでいなかったため、日中は外に出て②〜④の業務をこなし、夜残業して①の作業をしていました。こういった実情から、公務員(土木)の仕事はどうしても残業ありきになってしまい、多くの職員が夜遅くまで事務所で設計書作成作業をしていました。
※③用地買収の書類作成や手続きだけは事務職員が行いますが、土地所有者との交渉は土木職員が主体的に実施していました。

自然災害が発生すると残業は深刻化

自然災害(梅雨前線豪雨、台風、雪、地震など)が発生し、被害を受けた場合、災害復旧業務が通常業務に追加されます。災害復旧は完全に追加の業務となるため、当然残業時間も深刻になります。基本的に職員は自分の仕事で手一杯なため、災害が発生した際は、被災していない地域の職員や本庁から、特に被害がひどい時は他県などから職員を派遣して貰い、災害復旧業務を行うことになります。この時の残業は月100時間を超えてきます。なので自然災害が多発する梅雨や台風の時期は、皆災害が発生しないよう祈っていました。

気象警報に伴う出勤(水防待機)

また、公務員(土木)は気象警報(大雨・洪水など)が出ると職場に待機し、パトロールや被害状況の確認・報告などを行わなければなりません。これは当番制ではありますが、職員の数が減ってきているため、警報が頻繁に出れば毎週のように職場に待機することとなります。待機は警報が解除されるまで継続(警報解除後も河川の水位などが高ければ下がるまで継続)されるため、警報が夜間(暗くなるまで)までに解除されなければ基本的に徹夜になります。大雨や雷で家族が不安がっている中、職場に出勤するのは親としてどうかと思うこともありましたが、仕事ですし、誰かがやらなければならない業務なため仕方ないと家族には理解して貰っていました。

災害復旧業務は短期集中

災害復旧はスピード感が重要です。被災した施設の重要度にもよりますが、重要度の高い道路や橋梁、河川などが被災した際は、速やかに復旧する必要があります。例えば、夜間に被災すれば、すぐに現場に行き通行止め作業(看板・バリケードの設置や誘導員の手配)を行い、迂回路の確保と周知(看板設置やHP・広報など)を行います。その後、雨が止み、2次災害が起きないか安全を確保した上で測量・設計会社や工事業者と一緒に現地調査を行います。

災害復旧事業は手続き(以下、災害査定)を踏んで国から承認を受ければ、県や市町村は手出しがほとんどなく復旧工事を行うことができます。特に地方の県や市町村は予算に余裕はないため、被災した際はほぼ100%災害査定を受けることになります。テレビで中継があるような大規模な災害が発生した際は、一度の災害で1000件以上の災害復旧事業を申請(県・市町村全て)することもあります。災害査定を受けるためには、全ての箇所の被災状況写真(幅・延長・被災状況・被災時の水位などが分かる写真)、復旧内容が分かる図面・数量、金額(設計書(積算))などを整理しなければなりません。よって、被災後は公務員(土木)だけでなく、測量・設計会社も大忙しになります。

災害復旧工事の着手は、基本的には災害査定を受け、国からの承認を得てからとなりますが、即時復旧が必要な災害(重要度が高い道路や河川など)の場合は、特例としてこれらの事前の手続きを省略し、復旧工事後に災害査定を受けることも可能です。

私の経験では、即時復旧が必要な災害でなければ、概ね被災してから1ヶ月〜2ヶ月以内に必要書類を整理し、その後国の職員が来県して災害査定を受け、承認を得てから工事を発注する流れとなり、被災から工事発注まで3ヶ月〜5ヶ月程度かかったと記憶しています。3ヶ月〜5ヶ月と聞くと、そこそこ時間があるように感じますが、災害が発生する度にこれらの作業を繰り返すため、梅雨前線豪雨や台風による被災が年に1回だけでなく、数回発生した場合、ほぼ毎日災害復旧業務をしなければならず、年度当初に予定していた通常業務はほとんどできない状況となります。だからといって通常業務を進めないわけにはいかないため、本庁や他の事務所、他県などから応援を呼び、災害復旧業務を手伝って貰いながら、通常業務を回していくこととなります。

こういった状況に陥っても公務員(土木)は残業代以外に特別に手当があるわけでもなく、増えるのはストレスと疲労と仕事のみです。連日深夜遅くまで頑張って作業してつくった書類もミスがあれば上司や国の職員(災害査定)に責められ、、、とにかく大規模な災害の発生は勘弁してほしいです。

公務員(土木)は地域を守るために目立たない所で日々汗をかいています。

公務員(土木)は夜遅くまで残業し、地域の発展や安心安全のために頑張っています。勿論残業代も税金のため、残業が減るに越したことはありませんが、職員の定員数が減り、公務員希望者が激減している中、今いる職員が頑張るしか無いのが実情です。

公務員は出来高による給料アップはありませんし、工事が遅れたからといって地域や企業から苦情はあってもクビにはなりません。正直辛い思いをして夜遅くまで残業せず、勤務時間内(17時15分まで)までにできることを精一杯するだけでも給料は貰えます。ただ、少しでも地域のためにできることをしたいという正義感と誇りを持って日々頑張っているのです。

現在の本記事はここままでです。今後も本記事について、追記したい内容があれば追記していきます。

最後まで私の記事を読んで頂き、ありがとうございました。

可能であれば、「スキ」や「サポート」をよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?