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#4 現場代理人は戦友であり頼れる兄貴

公務員(土木)が監督員として工事を担当する際、頻繁にやりとりするのが工事を受注した会社の担当、いわゆる現場代理人です。近年土木工事の担い手不足問題もあり、地方の土木会社は高齢化が進んでいます。

私も新採用職員の頃(22〜23歳)に担当した工事の現場代理人は父親と同い年くらいの方々(50代以上)ばかりでした。そんな自分の子供くらいの公務員(土木)に対しても丁寧に敬語で接してくれた現場代理人には今でも本当に感謝しています。

新採用から約20年経った頃(少し前)も現場代理人は50代、むしろ60代以上の方が多く、たまに20代〜30代の現場代理人に会うとこの会社は世代交代をしっかりしているな、と感じたものです。

地方の土木会社の担い手不足問題は切実です。担い手不足を解消するためには、大幅な賃金アップ(基本給+残業代(手当て))、完全週休2日の確保、ICT施工の拡大、働きやすい職場の人間関係構築(体育会系な縦社会の完全撤廃)など、既に始まっている取り組みの加速と拡大なのでしょう。
私も月100万貰えるなら地方の現場代理人やります!笑


何も分かっていなかった新採用職員時代

私は普通科高校を卒業して大学(土木科)に進学したのですが、実家や親族に土木関係の仕事をしている人はおらず、大学で勉強した程度のことしか知らなかったため、工事現場なんてほとんど見たことがありませんでした。

そんな私でも公務員(土木)になれば直ぐに工事を担当することになります。最初は右も左も分からず、現場代理人から工事の相談をされても何も回答できないため、職場の先輩や上司と一緒に現場に行き、先輩や上司が現場代理人やりとりをしている姿を見ながら工事の進め方や調整の仕方などを勉強していきました。

新採用職員の頃はその地域の地名や道路・河川の名前、工事や設計業務を受注している会社の名前もほとんど知らないため、電話を取るのがとっても怖かったのを思い出します。そんな中、公務員以外で一番連絡を取るのが現場代理人や測量・設計会社の担当です。

我々公務員と同様に現場代理人にもいろんなタイプの人間がいましたが、幸い私が担当した工事の現場代理人は親切で丁寧な人が多く、20代前半で工事のことが何も分からない私に対しても敬意を持って接してくれました。現場代理人はその会社の社長の代理という位置付けであり、会社の顔です。公共工事では地域住民からちょっとした事(除草や側溝の泥あげなど)を頼まれることも多く、そういう時に快く対応してくれる現場代理人には救われてばかりでした。

現場代理人との信頼関係を築くためには

土木に限りませんが、仕事を進める上で重要なのは信頼関係です。私は現場代理人と良好な関係を築ければ、工事の進捗が上がるだけでなく、現場の安全性や目的物の品質向上にも繋がると思っています。仕事をする上での信頼関係とは、ただ仲が良いというのではなく、腹を割って前向きで建設的な話ができる関係ではないでしょうか。私は信頼関係を構築するためには、以下の5つが重要だと思っています。

①協議や相談は早ければ早い方が良い

公務員(土木)は担当1人の裁量で決めれることはほとんどありません。基本的に書類での協議が必須です。工事内容の変更や追加などがあれば、当然上司の承諾が必要であり、重要事項(大幅な工事費の増額に繋がる事案、関係機関の承諾や許可が必要な事項(地域住民、市町村、警察など))であれば所属長への説明・承諾が必要となります。

上司や所属長から承諾を得るためには、時系列の整理・代替案(解決策)の提案・責任の所在など、書類整理から説明・承諾まで時間がかかり、最悪現場が止まる可能性もあります。
私の経験上、相談が遅れて問題になるケースの多くは、もう少し早く相談してくれば別の解決方法があったり、問題にならずに済むケースが多いです。
よって、細やかな報告・連絡・相談が信頼関係を築くために必要不可欠だと思っています。

また、事故など、新聞に載るような事案が発生した際は、例え深夜や休日であっても、発注者(公務員)が1番最初に状況を把握(所属長や本庁、県知事含む)し、施工者と一緒に速やかに最良の対応を取らなければなりません。発注者への報告が遅れ、先に新聞やテレビで報道され、そこで初めて事故が起きたことを知るのは最悪のケースです。子供が新聞沙汰になった事を子供からでは無く、知人や新聞・テレビを見て初めて知った時の親と同じ気持ちだと思います(少し違うかも笑)。

事故は起こさない事が一番ですが、しっかり安全対策を取り、注意しているにもかかわらず起きることもあるため、事故の内容(被害者か加害者かなど)にもよりますが、事故を起こしたことより速やかに報告しないことの方が問題であると私は思っています。勿論怪我をした人への対応(救命措置や救急車の手配、安全確保など)が第一優先であり、連絡はその後速やかにで大丈夫です。

他にも、工事により完成した目的物の品質が県の基準(規格値)を満足していない事を把握していたのに、速やかに報告しなかったケースなども最悪です。当然こういう対応をされれば信頼はできなくなりますし、会社の今後の仕事(指名停止など)にも影響が生じます。悪いことは相談しにくいですが、悪いことほど速やかに報告する事が重要です。

②現場が整理整頓されており、安全対策が充実

私の経験上、資材やゴミなどが整理整頓されている現場は事故を起こす確率が低いです。発注者の指示より安全対策が充実(注意看板の追加設置や固定方法の充実、わかりやすい歩行者通行帯の設置、近隣住民への定期的な工事進捗状況のビラ配布、安全訓練や自社パトロールの充実など)している現場の代理人は非常に信頼できると感じます。

ここで1つ重要なのは、発注者は安全対策にお金をかけて欲しいと言っているのではない事です。勿論お金をかけなければ出来ない事もありますが、出来るだけお金を掛けずに取れる安全対策で十分であり、その方が継続的に取り組めるものだと思っています。今は現場環境改善として発注者が安全対策などの経費を変更計上できる取り組みもあるため、必要と思った安全対策は発注者に相談し、必要経費はできる限り発注者に計上して貰いながら積極的に現場の安全に寄与する取り組みを実施していくべきだと思っています。

よく安全対策にやりすぎは無いと言いますが、事故は作業員や第三者の不注意により起こることもあるため、どこまでやるべきか判断が難しいものではあります。現場の整理整頓はその第一歩ではないでしょうか。

③工事進捗管理の徹底

現場代理人の技術力や調整能力が高く、優れた品質の目的物をつくるとしても、受注者の責によらない理由等(不可抗力)無く、最初に現場代理人が立てた計画より工事の進捗が大幅に遅れ(20%以上)たとしたら、その現場代理人を信頼するのは難しいと思います。

公共工事は基本的に年度毎に予算を精算しなければならないため、債務負担工事(2年以上の長期契約)や翌年度まで繰越可能な工事以外は、年度末(3月)までに工事を完成させなければなりません。

現場ごとに完成しなければならない期限は異なるため、当初の計画より大幅に工程が遅れたとしても年度内完成であれば問題ない現場はあるかもしれませんが、当初立てた計画より工事の進捗が遅れるということは見通しが甘かったという事であり、段取りが何より重要な土木工事ではいくら技術力があったとしても一流とは言えないと思っています。

様々な調整(資材の手配、下請けの調整、発注者との協議、地元住民との調整など)をこなしながら、無事故で品質の良いものを当初予定期日までにつくれる現場代理人こそ一流で、信頼できる人物です。

④地域住民との良好な関係構築

公共工事をしていると地域住民から様々な要望があります。その中には工事に関係するものもありますし、全く関係ないものもあります。公共工事は地域の発展や安全安心につながる国や県の事業であり、受注業者もその一員だと私は思っています。

当然大きな費用が必要となる事案であれば現場代理人だけでは判断できませんが、地域住民の要望を受け止め、受注業者としてできること、県からの予算措置があれば出来ることなどを整理した上で発注者に報告・協議し、地域のために前向きに取り組める現場代理人と一緒に工事したいと強く思います。

発注者としては、現場代理人から要望内容の説明を受け、地域住民と協議した結果、予算や公平性などから出来なかった(地域住民からの要望に答えられなかった)としても問題ありません。地域住民としては不満足だと思いますが、発注者として重要なのは、地元住民からの要望に耳を傾け、一旦受け止め、受注業者として出来るかを考えた上で発注者に相談してくれる事が重要なのです。

⑤遅延なき書類の作成

現場代理人の重要な仕事の1つが工事書類の作成です。公共工事は民間工事に比べて経費率が良い代わりに多くの書類整理(施工計画書や指示・承諾・協議書、工事写真、段階確認書類、出来形管理書類、品質管理書類、施工体制台帳、安全関係書類(KY、安全パト、重機などのチェックリスト)などなど)が必要となります。

それらは日々現場監督をしながら作成しなければならないため、大変な作業だとは思いますが、日々書類を作成し、工事完成と同時とまでは言いませんが、工事完成後速やかに書類の提出ができる現場代理人は尊敬します。発注者側も書類作成が遅れる事が多々あるため、あまり早すぎるとプレッシャーではありますが。。

書類作成の中でも発注者として特に速やかに提出して欲しいのは、工事の変更数量・図面資料です。これは、当初設計と完成した現場との差が分かるように、数量と図面に整理した根拠資料です。

土木工事の現場では大小様々な変更(例えば、当初側溝を100m設置しようと考えていたが、曲線部だった事もあり実際は99mだったなど)が生じるため、必ず設計変更が必要となります。現場代理人の中には、現場はしっかり施工してくれたとしても書類整理が苦手で全然できない人もいます。

発注者としては、設計金額以上のものが出来ているかどうかを書類を見ながら現場で確認しなければならず、数量が変われば契約金額も変わるため、工期内に変更数量・図面を受け取り、変更設計書を作成し、変更契約をしなければなりません。変更設計書作成は、現場代理人がどのタイミングでどの程度変更数量・図面を作成してくるかによって大きく労力が変わってくるため、発注者にとっては非常に重要な事案です。また、受注会社としても、仕事に対して適正な対価(金額)を得るために必要不可欠な作業であり、変更資料を整理しなければ施工した分の儲けを得られません。工事では現場の出来栄えと品質が1番大事ですが、変更数量・図面作成作業についても会社として力を入れて欲しい作業の1つです。

それぞれの立場があるが、腹を割って協議しながら信頼関係を築き、win-winな関係を!!

記載した5つの内容は、現場代理人に限らず、社会人として世の中で働くためには欠かせないことかもしれません。実際私も全て完璧にこなせてたかと言うと、忙しさに甘えて出来ていなかった時期も多々あったかなと感じています。ただ、優秀な社会人であれば当たり前のことかもしれません。

これらのやり取りを短くて半年、長くて2〜5年間(債務工事)するため、現場代理人との間には絆が芽生えても不思議じゃないと思っています。そうして芽生えた信頼関係は、工事が終わって異動した後も失われず、また再会した時は自然と話が長くなるものです。お世話になった現場代理人は今でもよく覚えていますし、勝手に兄貴だと思っています。笑

本記事を読んで頂いた公務員(土木)や現場代理人の方には、そういう出会いが今以上にあることを祈っています。また、公務員(土木)はそういう気持ちで仕事しているということを知っていただければ幸いです。

現在の本記事はここまでです。今後も本記事について、追記したい内容があれば追記していきます。

最後まで私の記事を読んで頂き、ありがとうございました。

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