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中井久夫先生のささやかな思い出 その11

精神医学にかつて、体格と性格と精神疾患を関連づける考え方があった。
気質論といい、ドイツの精神医学者クレッチマーが提唱し、翻訳も出たので、昭和の頃に精神科医の一部が汎用した。当時は、正常な人間にもある、病気とまで言わないけれど病気をされた方と相似した言動パターンをとらえ人間理解を補うものと考えられた。

その後、科学的根拠がないことからあまり使われなくなった。
 
多分、先輩の先生がファクシミリで送られてきた中井久夫先生の手書きのメモを見せてくれた。
そこには、
統合失調気質の人は人と出会いづらい
と書かれていた。
気質論はまだ有効かどうか定かではないが、
統合失調気質の徴候性優位、先々を前のめりで考えやすいこと、あるいは木村敏のいうアンテ・フェストゥムの対人場面ともいえる。
統合失調気質、あるいは統合失調病質スキゾイドが孤高で気高く、孤独になりやすいのは人よりほんの少し未来を向いているからかもしれない。
神経心理学的には0.5秒か。

統合失調症も人と出会いづらいと仮定すると、身体診察をしたり、身体感覚の話しをしたりすることは、現在の話しに戻して対話していることになる。

また音楽療法、絵画療法も現在起きていることに焦点をあて出会いやすい場のなかで対話していることになる。
そのまま黙っている患者さんにより添ったり、グループに一緒に参加したりして疲れるのは、そうしたあり方にセラピストが波長合わせするからかもしれない。


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