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組織でデザインする身体性を得るための小さな工夫

こんにちは。rootの岸です。
今年はコロナが明けたということで、本当にたくさんのイベントが行われましたね!そして不思議なことにDesignShipやSpectrumの登壇資料を眺めていると、デザインという壁を捨てて違う領域に染み出していく、みんなでインクルーシブにデザインできるようになる…そんな話がかなり多かったように思います。
その中で「じゃあ、デザインとは何をやることなのか?それは事業、もっと言えば集まって何かを成すとき、つまり何に役立つの?」ということを考えることも多くありました。

もちろん概念図やプロトタイプみたいな方法で認識を揃えたり、ユーザーについていろいろなことを確かめたりといったスキルが、デザイナーが活かせる能力だというところは、私もそうだよなぁと思うところではあります。

なのですが、もっとこう、ひとまとめにこれが何をしていることなのか、言えないものなのかなぁといろいろ考えているうちに、それは「身体性を組織に宿す」ということなんじゃないかなぁと思えてきています。

身体が抜け落ちたプロセス導入

なんだかたいそうなことを言ってしまったのですが、これを考えるきっかけとなった失敗があります。過去に品質基準やプロセスを導入しようとした時のことです。
その時参加したプロジェクトでは、事業フェーズの移行に伴う増員が見込まれており、そこに向けて体系的に開発を進められるようなプロセスを提案してみていました。

そこで、結構細かめに「このタイミングではこれを書いて、それを確認して、次はあれ」みたいな感じで色々と考えていましたが、これがまぁうまく行きませんでした。意図しない分業化が生まれてしまい、良いとは思えないけれども言われたから作る…みたいな雰囲気が生まれていきました。開発が機械的なプロセスとなってしまい、出来上がったものの「手触り」ではなく、どの工程でどの問題が起きたか、という話に収斂してしまう構造が出来上がってしまったのです。

ですがそれもそうですよね。何かを作ろうとするとき、頭はこの工程を、目はこの工程を、手はこの工程を担当する、というふうにものを作ることはしません。まず作ってみた上で、手触りの違和感、つまり手と頭の間に起きるズレを認識して、その場でやり方自体を更新する、という、身体をともなったようなやり方でものを作るはずです。

それと同じように「組織的にデザインを遂行する」というのは、デザインをバラバラに分解して埋め込むことではなくって、身体性が組織に必要な形で宿され、その上に出来上がる道筋を踏んでいくことなんだろうというのが、この失敗からの学びでした。

デザインは身体的な営み

これまで多くの方法でデザインのプロセス化や構造化が試され、多くの人の支持を得るような有名な概念も生み出されてきました。その数は決して少なくありません。しかしこれほど多くの考え方が生み出されながらも、デザインをどうやって進めていくかの、決定的な体系はまだないんじゃないかと思います。

自分も構造化や一般化を諦めてはならないとは思いつつ、一方で「デザインは身体的な営みである」ことは認めざるを得ないよなぁ、と思えてきています。

例えばユーザーが何かGUIやグラフィックを見た時、いきなり論理的に解釈するわけではなく、その瞬間の状況や、それまでに起きてきた諸々の出来事に応じて、対象物に対する理解が、意思とは関係なしに、知覚から直接かつ反射的に立ち現れてくるものなのだと思います。

そしてデザイナー自身も、最初から完璧に計画を立ててものを作っているわけじゃない。ユーザーと同じように、作るのと全く同期的に作られたものから何かを学び取っていて、そうして計画も即応的に見直されている。そういうふうに計画と制作のあいだを行ったり来たりしているはずです。

とはいえ組織は身体とは違う

一方で「身体性」みたいな曖昧なことを言い出すと、それを組織でどうやっていくのかがわからなくなります。組織と呼ぶからには何らかの統率の論理が必要です。業務の品質基準を定めたり、計測できるようにしたり、そのためのプロセスを組み立てたりしなくてはなりません。

チーム全員が作ったものに即応し続けるようなやり方ばかりしていると、作るために際限なく時間がつかわれていってしまう可能性もあります。そのために後戻りできないポイントを抑えたり、ステップに分けて制作を進めたり、そういう工夫がされています。そしてそういうノウハウは、先人たちの手によって多く作られてきました。
それでもなお「組織でデザインをすること」はままならない。どうやって基準やプロセスを作っていくかについては、私たちもそれぞれの事業ごとに頭を抱える部分の1つです。

その中で、突破の鍵になると感じているのが「小さな挑戦とその振り返り」です。

期待や可能性の出どころを確かめあう

rootの過去の記事では、折に触れて「振り返り」に関する話をしてきました。振り返りというのは、やったことがどうだったか、どこから生まれてきたのかについて吟味する良い機会となります。

例えば、関係者からのもっとデザイナーにこういう動きを期待していたとか、デザインでこういうことが出来たかもねというフィードバックを受け取った時、その奥にある期待や可能性の出どころについて深く話しあってみる機会があるといいのかなと思っています。そこにはきっと、まだ明らかになっていない個々の身体感覚みたいなものがあるように思います。

あるいは、ただ困っていることを聞いて、そこにどういう解決を見込めるかをこちらから提案してみる、という入り口でも良いと思います。そして忘れずに、その実行結果について振り返り、どうしてそういう解決策が導かれたのか、それはどんな視点の違いがあったのか、という話を関係者の間で共有することで、徐々にデザイナーの意味や態度が組織の身体として蓄積されていくと思います。

長期的に、ボトムアップに身体性を獲得する

rootでは、平均支援年数3年と比較的長期間の支援を基本としており、また必ず制作の現場から入っていく形をとっています。ゆえに、組織の中で小さなデザインのトライが起きるたびに、それを色々な角度から眺めてみて「あぁ、こういう可能性もあったのだな」みたいなことをわかりあうことができる土壌があるように感じています。

対話を繰り返して、デザインやデザイナーという概念の、その事業や組織にとっての意味をみんなでデザインしていけると、いつしかそれが組織の身体として当たり前になっていくのかもしれない。そういう仮説にトライしやすい土壌をぜひ活かして、この仮説に対するアンサーの記事を書けるようやっていきます💪


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