36通り

8月8日水曜日、雨(復帰丗九日目)

台風13号が近づいている。9日になった真夜中のいま、結構風が強くなっている。

さておき。

アンディ・ウィアー『アルテミス』を読んでいる。楽しい。おっぱい。女の子が主人公なのに、言わせちゃう。
知っている人は知っている映画『オデッセイ』の原作本『火星の人』の二作目。(原題は The Martian。火星は英語で Mars と s で終わるのに火星人は Martian と t に変わるのはなぜですか? いじめ? 意地悪?)

ドキドキハラハラしながら下巻を読んでいるところです。

* * *

ところで。
その下巻の最初に『ふーん。三つの数字で四桁のコードか。わたしは目を閉じて計算した。組み合わせは……五四通り』という場面が出てくる。(四桁の PIN コードを当てる。使われている数字が三つ、0と1と7だというところまでわかっている状況)

組み合わせ、数え上げに僕は苦手意識がある。だから主人公のジャスミンことジャズが目を閉じて、つまり暗算で(!)組み合わせを計算したというところに燃えるような嫉妬を覚えてしまった。(バカだよね。相手は小説の中の架空の人物。ひょっとすると作者が1週間紙と鉛筆で格闘して、その結果を書いているだけかもしれないというのに。わかってる。バカだ。僕は)

54通りが正しいとして、これは2掛けることの3の3乗に因数分解できる。いったいどういう想定でこの数字が出てきたのか。
すごく気になる。

そして実際のところ、三つの数字が手元にあるとして。この三つで四桁の数をつくる場合、どういう考え方をしたら漏れなく、ダブりなく、すべての場合を尽くせるのだろう?

* * *

ツイートしたとおり、僕は36通りになるとおもっている。

* * *

最初に考えた方法。

最初に三つの数字を並べて、あと一桁をいずれかから複製する。複製した数字を置く位置も考慮に入れる……。
つまり。

「071」と並べたとして、次の6通りの複製の仕方が考えられる。
A)最初の0(0番目)を複製して右隣(1番目)に置く ── 0071
B)最初の0(0番目)を複製して二つ隣(2番目)に置く ─ 0701
C)最初の0(0番目)を複製して右端(3番目)に置く ── 0710
D)真ん中の7(1番目)を複製して右隣(2番目)に置く ─ 0771
E)真ん中の7(1番目)を複製して右端(3番目)に置く ─ 0717
F)右端の1(2番目)を複製して隣(3番目)に置く ─── 0711
この複製で生成した数字列にダブりはない。

念のため0を頭に置くもう一つの並べ方を確認。017に対して6通りの複製法でダブりのない四桁が得られる。
0017
0107
0170
0117
0171
0177
そしてそれぞれ最初の0071と0017は違っていて、残りは最初の二桁目が違うので、すべて違う並びができている。

さて、最初の数字の並べ方は3掛ける2で6通り(単純な組み合わせ)。

複製のタネになる6通りの数字の並びそれぞれに異なる6通りの複製の仕方がある。
つまり掛け算で36通り。

* * *

もうひとつ、考えてみた。

0、1、7のうち、どれか一つを複製する。例えば1を複製して手元に0、1、1、7の数字があることにして、これを並べ替えることを考える。

4つの異なる文字からできるすべての並べ方は順列(Permutation)として知られている。考え方は、最初は4つの好みの中から選べる。残りは3種類から2番目を選ぶ。残りは2種類、ここから3番目を選び、最後は選択肢なし。4掛ける3掛ける2(掛ける1)、答えは24。

生成する順列の中に同じ文字が含まれている場合、それらは区別できないので取り除く必要がある。重複して数えた分を取り除けばよく、重なる文字数の階乗で順列を割った数になる。

今回の場合4文字のうち1種類の文字が二つ含まれているので「2!」、すなわち2で割ればよい。24割る2で12。

複製する数字は0、1、7の三つが選べるので12を3倍して36通り。

* * *

ほんとに、ねえ。
どこから出てきたんだろう、54?

* * *

そしておもいだした。
僕はプログラマーだったのです。
飛び道具があった。

10進数の四桁の数字は高々1万通り。
ここから0と1と7だけを含み、すべて使っているものを全部、コンピューターに数えさせてみよう。

えい!

[00] 0017
[01] 0071
[02] 0107
[03] 0117
[04] 0170
[05] 0171
[06] 0177
[07] 0701
[08] 0710
[09] 0711
[10] 0717
[11] 0771
[12] 1007
[13] 1017
[14] 1070
[15] 1071
[16] 1077
[17] 1107
[18] 1170
[19] 1700
[20] 1701
[21] 1707
[22] 1710
[23] 1770
[24] 7001
[25] 7010
[26] 7011
[27] 7017
[28] 7071
[29] 7100
[30] 7101
[31] 7107
[32] 7110
[33] 7170
[34] 7701
[35] 7710

疑いの余地なく36通りでした。(でも頭悪い。気がする)

* * *

使ったソースコード、載せておきますね。

/* artemis.c */
#include <stdio.h>
#include <memory.h>

typedef unsigned short number_t;

static void* filter(const void* begin, const void* end, unsigned size,
                    unsigned (*remove_if)(const void* elem, void* context),
                    void* context, void* result) {
 const char* p = begin;
 char *q = result;
 while (p != end) {
   if (!remove_if(p, context)) {
     memcpy(q, p, size);
     q += size;
   }
   p += size;
 }
 return q;
}

static unsigned not_three_figures(const void* elem, void *context) {
 const number_t* n = elem;
 number_t figure[10] = {0};
 number_t *it = figure;
 unsigned sum = 0;
 figure[(*n/1)%10] = 1;
 figure[(*n/10)%10] = 1;
 figure[(*n/100)%10] = 1;
 figure[(*n/1000)%10] = 1;
 while (it != figure + 10) {
   sum += *it;
   it += 1;
 }
 return sum != 3 || !(figure[0] && figure[1] && figure[7]);
}

int main() {
 number_t array[10000];
 number_t *it = array;
 number_t *end = array + 10000;

 /* initialize */
 while (it != end) {
   *it = (number_t)(it - array); /* distance */
   it += 1;
 }

 /* filter out, which does not fulfill condition */
 end = filter(array, end, sizeof(number_t), not_three_figures, NULL, array);

 /* print result */
 it = array;
 while (it != end) {
   printf("[%02ld] %04u\n", it - array, *it);
   it += 1;
 }

 return 0;
}

この C ソースコード artemis.c をコンパイルして実行すると、先の結果が得られます。開発ツールが入っている環境なら以下でおk。

make artemis && ./artemis

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