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目的論/原因論へのアンチテーゼ(アドラー心理学実践講座 第1回目より) ③

10月04日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー心理学実践講座」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。

10月03日、第1回目のテーマは「アドラー心理学の価値」でした。21世紀におけるアドラー心理学の価値、さらにアドラー心理学をどう学ぶかということについて学びました。今日はその報告の3回目です。

アドラー心理学には5つの基本前提があります。その基本前提は現代心理学の基本となりアンチテーゼになっているとのことです。アドラー心理学の5つの基本前提は次の5つです。
 1)目的論
 2)全体論
 3)社会統合論
 4)仮想論
 5)主体論
この中で、目的論が原因論へのアンチテーゼであるという点に大変共感を興味を持ちました。

障がいのある人への支援においては、目的論で対応する必要があります。しかし、ケース会議に参加すると話は原因論で始終します。

養護学校高等部を卒業されたばかりの女性の利用者のケース会議でのことです。この女性はスキンシップの大好きな人です。すぐに抱きついてきたり体を寄せてきます。それが課題として提出されました。また基礎情報として成育歴、ジェノグラム(家族の構成を表す図)、エコマップ(家族構成を中心にして社会資源をまとめた図)などが資料として提示されました。参加者たちはその資料の中から、この女性利用者がなぜ、過度にスキンシップを求めるようになったのかを探っていました。この会議で導き出された結果は、愛情不足と社会経験のとぼしさでした。対応策としていろいろな社会資源の利用が提示されて初回は終了しました。

私は、この女性に会うときは正面に向かい合い、私から彼女の手を握って話しかけます。彼女はスキンシップを求めています。それで安心しているのかもしれません。ほとんど言葉がないので真意はわかりません。しかし正面で手を握っていると笑ってくれます。そうしていれば抱きついてくることも体を寄せて来ることもありません。彼女のそばを通るときは必ずそうします。

支援をするときは、利用者本人だけでなくその利用者を取り巻く社会資源に着目して包括的に支援していきます。しかし、社会資源を使うことばかりに重点をおくと利用者本人の行動の目的が置き去りにされます。本人がどうしたいか、どうなったら幸せか、それを忘れないためには目的論を意識した支援が大切になります。

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