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SWCの世界はいつだって劇的だ

  • HasselbladSWCとは

  • 作例

  • 使ってみた感想

  • SWCの希望と諦め

  • 総評

HasselbladSWCとは

ハッセルブラッドのSWCというカメラはご存じでしょうか。66フォーマットにBiogon38mm4.5(135換算だと21mmくらいのイメージとなります)を搭載した目測ピント方式のカメラです。500シリーズとフィルムバックは共通ですが、ミラーを省いた設計であるためレンズ交換はできません。
仕様上は専用設計とした割には極端な広角でもなく、レンズの明るさもやや暗めなのでいまいちパッとしないカメラです。
しかしながら、優れた点もあります。描写に関しては後述しますが、Hasselblad500シリーズは80mmに対して50mm, 40mmともに非常に大きいレンズになってしまい、広角レンズでありながら軽快に振り回せんが、SWCはPlanar80mm2.8と同程度の大きさで取り回しに優れています。

大きさはPlanar80mm2.8を搭載した500シリーズとほぼ同程度です。
ファインダーが飛び出てしまうので、鞄のおさまりは少し悪いです


作例

高解像かつ周辺まで整った広角レンズなので、一つの被写体を水平に構えて撮るというのが楽しくなります。ライカ版での広角レンズだと、動きのある被写体をとにかくぎっしり詰め込みたくなりますが、フォーマットの特性も相まってゆとりのある構図の方がしっくりきます。横長のフォーマットであれば複数の被写体を横に並べて物語性を作れますが、スクエアはシンプルに中央付近に被写体を配置して対峙するという構図以外は難しいです。
特に「66は被写体の正面を探すフォーマット」ともいわれるそうで、広角レンズと組み合わさると建築物など静的で大きなものを撮りたくなります。

FP4+, Rodinal(1+25)

また、目測ピントはピント精度にやや不安が残りますが、1m以上離れているれば見れる写真にはなる印象です。この写真も結構近くで撮ってますが被写界深度が深いのでピントは結果的にはあっています。
本来は三脚を構えてきっちり撮るように作られたカメラのようですが(内蔵されている水準器も結構シビアです)、GRのように気軽な広角スナップカメラとして使用しても楽しいです。

FP4+, Rodinal(1+25)

スナップで使う分には、水平垂直を無理に頑張らなくてもよい気もします。静物写真ならきっちりした方がおさまりがいいですが、ちょっとくらい斜めになっていてもトリミングでごまかせたりしますね。SWCはよくよく水平垂直を意識しないと..…と言われがちですが使い方次第かなと。それよりもフットワークの軽さを意識してたくさん撮った方が楽しいです。

FP4+, Rodinal(1+25)
花の周辺をすこし覆い焼き風にレタッチ

広角で逆行気味に撮影するとドラマチックな印象になるので結構好きです。特に66フォーマットだとおさまりも良く、上質に見えます。マンネリ化しやすい気もしますが、そもそも66はあまり構図で遊べないのでマンネリ化と捉えるよりも積み上げていくという意識で撮った方が良いでしょう。

FP4+, Rodinal(1+25)

使ってみた感想

軽くて最高によく写るカメラ、という意味では中々ほかに類を見ないのではないでしょうか。広角で軽くしようとするとライカ系が有名ですが、やはり中判フォーマットの解像力は圧倒的で、個人的にRussar20mm5.6と撮り比べましたが(たまたま持っていたので)、やはり中判の絵作りの方が力強く感じられました。好みの世界と言ってはそれまでですが、Hasselblad特有の線のやや硬いかっちりとした描写は他のカメラでは出せないと思います。
また、目測ピントになった分厳密なピント合わせから解放されるので、良い点としてはより気軽にシャッターを押せますが、実際的にはすごいスピードでフィルムが消費されていくので、現像作業やフィルム代を考えると頭が痛くなります。まぁ、撮りたいものがなくて悩むよりは、フィルムも現像も足りなくて悩む方がよっぽど楽しいですけどね。
代わりになるようなカメラはほぼ存在しないカメラですし、何より使ってて楽しくなってくるカメラなのでスナップにも風景にもいいカメラではないでしょうか。

SWCの希望と諦め

個人的にSWCは使ってて楽しく、描写も優れたカメラだと思いますが万人受けはしないだろうなという気もします。
複数台のカメラを使いこなすタイプの場合、中判フィルムは比較的高価なためSWCの優先順位がどんどん下がってしまい、結局持ち出しても使わなくなります。SWCを使う場合は、少なくともライカ版との併用は避けた方が良さそうです。
一方で室内での撮影を考えている場合には、フィルムバックを複数持っていればISO400クラスでも結構対応できるの、レンズはやや暗いですが気にならないと思います。また、広角レンズではありますが、レンズの素性がいいためかテーブルをはさんだくらいの距離ならポートレートに使っても意外と広角感もあまりなくちゃんと撮れます。周りが結構写る感じの時代を映した感じのポートレートになってこれもまた面白いです。ブツ撮り以外なら何でもできる感じですね。

FP4+, Rodinal(1+25)

総評

SWCをさんざん褒めてきましたが、SWCって結構高価なんですよね。素性の知れない怪しいものでも大体25万円程度~という感じがします。それだけの価値は感じられますが、中判カメラのポテンシャルやフィルムの描写傾向などを熟知した中級者~上級者向けのカメラではないかなと思います。目測ピントやマニュアル露出は結構初心者には難しいですしね。
とはいえ、これだけ使っていて面白いカメラもなかなか無いので、広角のスナップが好きな方は人生で一度は使ってみてほしいと思います。


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