見出し画像

映画/羊たちの沈黙(1990)/人間が切望してやまないものとは

こんちにわ😆✨

ここ最近の自身の映画鑑賞記録を確認すると、
「アメリカンサイコ」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」「横溝正史シリーズ」etc....
まさに、殺人鬼にハマっている今日このごろです💦笑
横溝正史シリーズは別にしても、それ以外の、要するにシリアルキラー(連続殺人鬼)の映画は今まで私は食わず嫌いをしておりまして(なぜなら、怖いからです。)このジャンルの映画にこれほど夢中になるとは、私にとっては新しい自分の発見とも言えるわけです。

 さて、今回ご紹介する映画はもちろん例のジャンルから
「羊たちの沈黙」(1990)*言わずとしれた不朽の名作です✨
 ご存知の方も多いかと思いますが、簡単にストーリーのご紹介です。

 主人公クラリス(ジョディ・フォスター)はFBIの研修生で、男性の多い職場の中でも男勝り(今では死語になりつつありますね)に研修で優秀な成績を残しています。そんなクラリスに、ちまたで騒がれている連続殺人犯、通称バッファロー・ビル事件の調査の依頼が舞い込んできます。アメリカ各地で女性を殺害し、その死体の皮を削ぎ落とすという残虐な殺人鬼ビルの正体を突き止めるために、クラリスは元精神科医で猟奇殺人鬼であるハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)に協力を求めます・・・

 この映画は、「ハンニバル」(2001)「レッドドラゴン」(2002)「ハンニバル・ライジング」(2007)とアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター博士にフォーカスをあてシリーズ化されており、その第一弾にして最も有名な作品です。
 さて、このレクター博士シリーズの最大の特徴は、この猟奇的かつ残虐な殺人鬼レクター博士、要するにこの最大の悪役が、圧倒的な魅力😍✨を放ち、我々に何故かこの殺人鬼が思ったとおり周りの人々を翻弄し、そして計画を達成する姿を期待させるところです。
 作品の中で、レクター博士は精神科医の技術を最大限に利用し、同じ監獄に収容されている囚人を言葉巧みに自殺させたり(まぁ、遠回しに殺害しています)、もちろん実際にレクター博士の監視を任されている警察官をあっさりと殺害していまいます。まさに残虐・・・
 しかしこの作品で悪役とされるバッファロー・ビルの殺人に我々が抱く嫌悪感とは異なり、なぜかレクター博士の計画と殺人には何故か我々視聴者はなにかしら最もな理由があるような気がして(実際は罪のない人達を殺害しているのですが・・・💦)、なぜか我々はレクター博士の殺人を「許し」てしまうのです。

 さて、レクター博士とバッファロー・ビルとの違いは何なのか。

 このジャンルの議題に対して、よく取り扱われる話に、「性悪説/性善説」があります。人間は本来「悪人」なのかはたまた「善人」なのか・・・
 そんなことは議論しても正直答えがでるわけがないのですが、人はそういう人間の根源の追求、もしくは一生知り得ないものに対して魅力を感じる生き物なわけです。笑😢
 さて、ここからは私の個人的な解釈なのですが、私は基本的に性悪説💦の立場に立っておりまして、人間は本来「悪人」であり、「ダメ」だと言われることは、必ず「犯したく」なる生き物です。(フランスの哲学科のジョルジュ・バタイユはこのような人間の本能を「人間の侵犯の本能」として説明しています。興味がある方はこのフランス哲学者の著作をいくつか読んでいただくことをおすすめします。ほとんどがそんな思想の話です・・・笑)
 レクター博士シリーズの第三段「レッドドラゴン」の中で、レクター博士を逮捕したFBI捜査官ウィル(この映画の中の主人公)がレクター博士がこのウィルを殺害できなかった理由として「あなたは残念ながら狂人だった。だから僕を殺害できなかった」という内容のセリフがあります。

 はたして、本当にレクター博士は狂人なのだろうか?

 そこに、バッファロー・ビルとの大きな違い、要するにレクター博士の圧倒的な魅力がある。
 レクター博士は気が触れた勢いて殺人を犯してしまうイカれた狂人ではなく、(これが倫理的に良い悪いは別にして)、全くの正気であり、自身の本能の欲求に従い計画的に殺人を犯す、まさに、もしかしたら、我々人間が倫理感によって押さえつけている「性悪」の本能の欲求を実現してくれる、しかも華麗でかっこよく、まさにダークヒーローなのである。
 この作品の中でバッファロー・ビルが、汚く荒れた家で、叫び声をあげながら殺人を犯していく、要するに何かしら衝動的で気が狂ったキャラクターとして描かれているのに対して、レクター博士は監獄の中でさえ、髪を綺麗に整え、ホコリ一つない部屋で、ゆっくりと、そして丁寧な口調で分析を行います。
 視聴者である我々はその冷静沈着で、物腰の柔らかい、いかにもまともな精神状態で、本能に従い罪を犯すレクター博士に無意識に共感とともに憧れを抱いているのです。
 レクター博士のセリフでこんなものがあります。

「ビルが行っている連続殺人は2次的なものだ。本当にビルが切望してやまないものはなんだと思う?」
「人は毎日見ているものを切望する。人は毎日見ているものになりたいと思うし、毎日見ているものに憧れる。人は変化の欲求を常にもっている。」

 まさにレクター博士の分析通り、人間は身近にあるのに自分ではないもの、自分に近いのに違うものに魅力を感じ、そして変化したいと欲するのである。

 それはまさに、自分の中にあり、押さえつけている本能なのです。

 そんな、人間がもつ無意識の欲求を華麗に実行してしまうダークヒーローのレクター博士に我々は実は憧れ、魅了されていくのです。✨

 この「羊たちの沈黙」のバッファロー・ビル事件の解決にもこの「切望」がキーポイントとなります。
ビルが切望しているものとは? その答えはぜひ、映画を御覧ください♪


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?