逼塞の夏。
プールのにおい。
遊びに行きたくて見上げた真っ暗な曇り空。
勉強するって親には嘘をついてでかけた図書館。
涼しい中でぼんやりと本を読むフリをした。
夕立の雨に濡れながら、漕いだ自転車。
濡れて透けたTシャツ、覗く焼けた二の腕。
クラスメイトと待ち合わせて出かけた夏祭り。
好きな人と少しでも2人きりになれないか、ってドキドキした。
「食べる?」って差し出された綿菓子。
恥ずかしくて、首を横に振った。
カランコロン。
下駄の音。
浴衣を着て、恋人と初めて行く花火大会。
何の理由もつけずに手をつなげるのが嬉しかった。
夏休みの宿題。
穴だらけの問題集を友だちと協力し合って埋めていく。
ずっと夏休みが続けばいいのにね、なんて笑いながら。
嘘。
夏休みなんてなくていいと思ってた。
早く学校が始まればいいのに、と思ってた。
幻の夏の思い出。
とっくに青春を過ぎて。
晴れ渡った空を眺めて、夏の思い出を振り返る。
本当の夏の思い出。
7月中に終わった宿題。
24時間テレビ、サライとマラソンランナー。
それだけ。
青春時代に過ごせなかったキラキラの夏はたぶんいつでもやり直せる。
なのにやり直せない気がしてるのは、そんな夏への憧れがいつのまにか消えてしまったから。
自由に過ごせる8月。
もったいないから、あの頃の私にあげる。
キラキラの夏。まぶしい夏。
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