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裏側の世界

月曜日にバイトの研修があって都内へ行った。今年度初めの通勤電車は入社式に参加する新社会人や転職した人たちで溢れかえっていた。急病人が出たこともあり、地下鉄のホームは階段まで人が待ち行列を作っていた。

駐車場バイトの警備員の仕事があり、研修を受けることにした。警備員のお仕事がオススメのバイトの中にあったからで、興味本位で受けたに過ぎない。研修では交通事故時の責任の割合とか、窃盗が強盗に変わる案件とか、不法侵入などのあらゆる遭遇する可能性のある場面が紹介された。最初は面白がって聞いていたのだが、午後になってだんだん気分が悪くなってきた。このとき散々出てきたトラブルありきの場面設定は私がこれまで経験してきた職場とは真反対の業務だった。

そもそも研究所では犯罪なんかほとんど起こらない。随分前に実験施設に泥棒が入ってパソコンが何十台も盗まれたけど犯人が捕まったことがあったり、カラ出張した上司のせいで出張申請の手続きが煩雑になったことはある。問題だとは思うがいずれも軽微な犯罪やグレーゾーンに属するものばかりだった。

科学は自然を対象にこの世界の不思議を探索する学問だから犯罪や法律は直接の担当領域ではない。とはいえ犯罪や法律は社会科学に属していて、人間社会のルールやルール破りをどう扱うかという取り組み方をする。極めて人間臭いというか社会に必要なことばかりだった。

中学生の時に将来なりたいものを1行で卒業アルバムに書くというお題を与えられて困った記憶がある。なりたいものなんてないと思っていたから答えを捻り出すのに大変だった。一晩考えて『将来裁判官か科学者になりたい』と書いた。なぜそんな答え、答えではないかもしれないが、を書いたのかその時はわからなかった。でも後から考えて見ると両者に共通点はある。どちらも法則を取り扱っているのだ。一方は人の作ったルールを扱い、もう一方は自然のルールを探索する。全く異なるアプローチ。法律関係の分野へ進んでいたらどうなっていただろう。

過去を修正することはできないが、多分うまくいかなかっただろうと思う。国語も英語も苦手だったから文系科目で大学を受験したら大変だっただろうなと思う。受験がなかったらどうだっただろうか。ちょっと想像がつかないが、好きに大学の専攻を選び学び始めていたとしたら何を選んだかというと、物理学か建築か歴史学。法学は選ばなかっただろう。高校生になった時点でやりたいことの方向性が明確になっていったからだと思うし、なんとなく潜在意識が選んでいる選択肢は正しいことが多いからこれでよかったのだと思う。

研修の後半が明日行われる。さて、終わるとどんな感想を持つのか。再び犯罪の話でぐったりするのか、それとも別の体験をするのか。多分別の体験になる。そして次の扉が開かれる、気がする。

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