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ドアと鍵の物語〜第三章 2

現地でたくさんの人に会った。スペインから旅行中の方、フランスから旅行中の方々、モロッコ国内を旅行している方、カナダから旅行中の方、そして泊まったホテルのスタッフの方々、レストランで働く人々、タクシーの運転手さん。全ての関わった人々が登場人物だった。

ダールヌールから大通りを広場に向かって下っていくとタジン鍋の美味しいレストランがある。そこで海鮮鍋、と言っても海鮮タジン鍋のタコのものを食べていたら一人旅の女性と知り合った。スペインからご両親のルーツであるモロッコを訪れていて彼女とは気が合いそう。泊まっているホテルを聞いてみたら向かいのホテルだった。タクシーを貸し切って近くの観光をする予定だというので、割り勘にして便乗させてもらった。ヘラクレスの洞窟をはじめ周辺の観光地へタクシーで行き、大西洋と地中海の交差する地点を訪れたり、灯台へ行ったりした。ヘラクレスの洞窟というのは伝説の地でヘラクレスがここで休んだとか。アフリカ大陸を上下逆さまにしたような光が入るポイントがある。アラビア語を話す彼女と一緒に行ったらちょうどその日は無料入館の日だったし、いくつかの観光地で現地人価格で観光した。

その後数日してGoogle map で調べた地元のレストランへも行った。定額制でコース料理を出すレストランだ。値段は忘れたけどかなり美味しかった。自家製ブドウジュースと海鮮料理が絶品。小皿でいろいろ出てくる。世界中どこへ行っても地元にいるのと同じ方法で外食できるのは手軽でいい。こんな店に家族や友人を連れてきたいし、このレストランをツアーに組み込んだ旅行を計画してもいい。15人くらいしか入れないし、かなりカジュアルな居酒屋見たいな雰囲気だけど。

あとは泊まったホテルのスタッフのおもてなし。日本人にも勝るとも劣らない心のこもったものだった。咳が止まらずに困っていると咳がおさまるハーブティーを部屋に持ってきてくれたり、飲むと元気になるからと言って、ホテルのレストランの特性スープを部屋に届けてくれた。そのあと教えてもらったハーブを地元のマーケットへ買いに行き、スープは翌日からしばらく部屋にルームサービスにして届けてもらった。そうこうしているうちに体調も良くなり、ホテルを後にする日がやってきた。同じ日にホテルをチェックアウトする、あのドアを開けたJFさんとCさんの2人はこれからパリへ移動するという。うちに何日か寄っていかない?というお誘いにかなり惹かれたものの、フライトをさらに変更すると30万円くらい必要だったので、今回は日本に帰ることにして、また改めてフランスへは行くことにした。そして4ヶ月後、次の年の春にフランスへ行った。

この地で開かれたドアというのは人とのつながりであり、誰かと出会うことで変化する人生そのもののの選択肢だ。どこかの扉が開く時、別の扉は閉まる。どの扉を開けておくかを自分で選び、その結果に責任を持つ。そうして時は流れ人生は変化していく。何を選んだとしても結果は変わるし正解なんてない。だけど何もしないでいたら変化することはない。だから家から出て、人と会いたくさんの面白い経験を重ねよう。一つ一つの経験があなたの人生の1日を変え、それが別の道へと導いていく。そう、私たちは変化という人生の旅路を今も歩んでいる。一日ずつ、一歩ずつ。来年の今頃何をしているだろうか?変わり続けているだろうし、どこかに住んで働いていると思う。扉を開けて家に帰り、翌朝扉を開けて外へ出ていく。鍵はかかっていない。あなたはただドアの前に立てばいい。そのドアは自動ドアだから。

写真は最寄駅の午後5時半。太陽は沈みもう夜が始まっている。また明日が来るし、また夜になる。夜が明けないことはないし、明日はまたやってくる。

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