苅野 リン

基本的に小説を書いています。 現在、異世界ファンタジーの連続短編小説を執筆中。南・東の…

苅野 リン

基本的に小説を書いています。 現在、異世界ファンタジーの連続短編小説を執筆中。南・東の国編は完結してます。 次回より西の国のお屋敷を中心とした物語がスタート予定。 全5か国、各国8話で完結形式。

最近の記事

重要なのは味見である [小説 東の国⑧]

わし、長老。 この村で一番年長だから長老となっているが、この国ではありがたいことに長老の仕事はほとんどないんじゃ。 まあしいて言うなら、長老だから村人の事はほとんど知っている感じかの。 お国への書類だとかそういう仕事はこの国では組合…まあ、他国で言うギルドの組合長である村長が担うので、長老の仕事は何か起きた時の村人の安否確認ぐらいじゃな。 あ、そういえばこの村の場所を話してなかったわい。 今回はゲートを通って送ってもらったから、地理的な説明をした方が良いじゃろ? 一番特徴的な

    • あなたに必要な雑炊 [小説 東の国⑦]

      此処、東の国にある南側に属するぽこ食堂では、ありがたいことに常連さんが多くいらしてくれている。 そのほとんどがこの村の人なのだが、常連の8割ほどは獣人が占めている。 私はこの国から外に出たことが旅行を除いてほぼないのでわからないが、この国において住人の多くを占めるのは獣人である事は知っている。 ちなみに、他の種族は気候やらなんやらで別の国に割合多く住んでいるのだが、人間だけは違う。 よほど気に入らなければ基本的に何処かにに定住する事は少ない。 彼らは、異世界から来てほとんどが

      • 道は一つじゃ無いのだし [小説 東の国⑥]

        東の国の南側に位置するこの村のぽこ食堂では、最近劇的にお客様が増えている。 いや、正確には流行りものの好きそうな人が、年齢問わずに一気に増えたと言える。 これが、北側のコン食堂(狐が中心となって経営しているおしゃれな食べ物が得意なお店)ならばよくある光景だ。 いつも出す新作のスイーツや食べ物は、色とりどりで美しく華やかでいて美味しい。 だとすると、このぽこ食堂でもそのような新作を出したのだろうか? 早速女将さんに聞いてみたらこの様な答えが返ってきた。 「メニューは何にも変わ

        • 真実と勘違い [小説 東の国⑤-2]

           拙者、種族はカラス。 名は訳あって明かせぬが、この村ではカラスの獣人はぽこ食堂のカラスと認識されているのでカラスと呼んでいただければよい。 獣人なので、変化の術も使えるし人間にはあまり知られていないが、獣人だと鳥の方のカラスより一回り程大きい。 まあ、田んぼとかで他の鳥ろ混ざっているとほぼわからないとは現在の拙者の奉公先であるぽこ食堂の女将さんの言であるが。 そしてこの漆黒の衣装は昔、絵巻物に乗っていた忍者の服装だ。 これでも、頑張って製図したりして作った思い出深い服であ

        重要なのは味見である [小説 東の国⑧]

        マガジン

        • 東の国の食堂の話 小説まとめ
          9本
        • 南の国の商人ギルドの話 小説まとめ
          8本

        記事

          好きと苦手は反比例しない[小説 東の国⑤-1]

          ここ、通称東の国は他国に比べて立地の的に比較的四季がはっきりしていると言われている。 それ故か、独特の文化や獣人の永住率が高く、商店街でもモフモフ商店街と揶揄されるほど独自の系統をたどっているのだ。 一番顕著に特徴に出ているのがその服装で、他国では洋服という布を切り分けて体に合った物を作成するのに対し、気候の変化の激しい東の国では布をシンプルに切って縫う着物というスタイルの方が多くの人が着ている。 もちろん、東の国で洋服を着ている人も居るし、他国で着物を着ている人だってい

          好きと苦手は反比例しない[小説 東の国⑤-1]

          本日カレーの日! [小説 東の国④]

          「あー、今日も尻尾にくる寒さだ。おばちゃん、今日のおすおすめは?」 「ないよ!なんて言ったって今日はカレーの日だからね」 そう、今日は月に2回しかないカレーの日。 その日はメニューがカレーしかなくなるけども。 「って、事はいつもの定食の半額だな!よっしゃ!」 懐にも優しくなるため、この村のぽこ食堂でも人気の日でもある。 毎日こまめに仕入れをしているためか、ぽこ食堂では基本的に在庫を極端に抱えて冷蔵庫を圧迫する事は少ない。 しいてあげるとするならば、仕入れの伝票に間違えて0を

          本日カレーの日! [小説 東の国④]

          囲炉裏のそばにチョコン  [小説 東の国③] 

          とっとっとっと…とっとっとっと… トタタタ…トタタタ… 「ええい!うるさーい!」 そういって放り投げた筆は、すこーんといい音がしたので多分あたったのだろう。 その後に、ポテッと落っこちた音もしていることだし。 「まったく、忍っていうのなら先ずは音を消すことでしょ?こんなにうるさくちゃ意味ないじゃない」 そう話しながら言うその先には黒装束の忍者が居た。 まあ、中身はカラスなので元々黒いのだが。 先日のあの雪の日に小ダヌキ達を預かった後、夕方になって質屋のご一行は商店街の人に聞

          囲炉裏のそばにチョコン  [小説 東の国③] 

          連絡出来ない場合には [小説 東の国②]

          パチッと目が覚めた。 普段ならもう少し寝ていられる時間なのだが、今日は何故この時間なのか。 今日はゴミ出しの日でもないし…? 寝ぼけた頭でそこまで考えながら障子を見れば、ここ最近に比べて気持ち明るい。 慌てて障子をあけて窓の外を覗けば、答えは眼前に広がっていた。 「うわっ!寒いわけだわ。何年ぶりかしらね、雪なんて」 どうやら私は寒すぎて起きてしまったようである。  はんてんを羽織ってぽこ食堂のある一階に降りてくれば、早朝特有のピンと張りつめた空気に出迎えられた。 先ほどまで

          連絡出来ない場合には [小説 東の国②]

          白米へのこだわり [小説 東の国①]

          ここは通称東の国。 その中の南寄りの山間にある小さな村。 あたりは、米が主食のこの国を表すように田んぼの連なっている風景が広がる。 この東の国では、食堂を見ればそこが北寄りなのか南寄りなのかを見分けることができる。 それは、村や町には必ず一軒ある食堂を見てみることだ。 ちなみに、私の食堂は南寄り。 何故ならタヌキの獣人が経営する通称「ぽこ食堂」だから。  北寄りの食堂は狐の獣人が経営している通称「コン食堂」。 料理が、おしゃれで最新のものが多いのに合わせてか外見もしゃれてい

          白米へのこだわり [小説 東の国①]

          当主が座る暖炉前のロッキングチェア[小説 南の国⑧]

          今、あなたが話しているのは過去の事? 未来の事? それとも、今必要な事? 魔道石板という代物がある。 これは、大層高いらしくこの中央の国でも持っているのは貴族以上の身分かそれと同等の権力を持っている者だという。 一見するとただの手のひらに収まる大きさの石板なのだが、中に魔力の収まる石が入っておりそれにより登録している他の魔道石板の所有者との会話を可能にするらしい。 私はこれを作ってる人間でも魔道具に詳しいものでもないので、その理論がいまいちわからないが所有者としては、それぐ

          当主が座る暖炉前のロッキングチェア[小説 南の国⑧]

          心の中で涙した[小説 南の国⑦]

          「それで、このジュースは健康にも美容にもいいはずなんだよ。 なんたって うちの八百屋の選ばれし残り野菜…えーっと、ギリギリまで待っていた…あ、追熟された!そう!追熟された野菜のブレンドジュースだからね!」 「へー、そうなんだ」 なんとか笑顔を保っていると思うんだけども、正直いつもよりも自信がない。 だってこれ、苦くてすっごく…不味い。 それとおばちゃん、追熟って言葉の使い方間違えてると思うよ! 本音隠しきれてないどころか全部聞こえてるし! 先程、この村唯一の本屋でおじいち

          心の中で涙した[小説 南の国⑦]

          真の意味で話を聞くとは [小説 南の国⑥]

          この小さな村にも書物は存在している。 羊皮紙の物から高価な紙のものまで形や材質は様々だ。  大昔は高価な物として貴族や研究とかの偉いところしか所蔵できなかったらしいが、魔法との組み合わせによって今は庶民にとって身近な物として存在している。 と、本一つとっても歴史があるらしいけれど本を読むのは宿題が出た時ぐらいの私は、この村唯一の本屋に向かう事はほとんど無い。 けれども、商業関係での話ならば別だ。家業からしたらお得意様の部類である。  今日は商人ギルドの見習い仕事の内容でここ

          真の意味で話を聞くとは [小説 南の国⑥]

          新年あけましておめでとうございます。 昨年はあなたの大切な時間を使って読んでいただきありがとうございました。 また、イイネもしていただきまして本当に嬉しかったです! 本年が皆さまにとって素敵な年になりますように… 苅野 リン

          新年あけましておめでとうございます。 昨年はあなたの大切な時間を使って読んでいただきありがとうございました。 また、イイネもしていただきまして本当に嬉しかったです! 本年が皆さまにとって素敵な年になりますように… 苅野 リン

          もう一つの手紙には[小説 南の国⑤]

          私が居る南の国は地図上ではひし形の様な形をしていて、下半分の辺にあたるところが海沿いという地形である。 その海辺のいくつかには川が流れており人々の生活用水も兼ねている場合もある。  うちの村もそのうちの川が大小合わせていくつかあるのだけども、村の一番大きな川には観光用に橋にも装飾が施されてるのとちょっとした椅子が設置されている。 午前中はよくここにうちのお得意さんのおばあちゃんが日向ぼっこを兼ねてここで座っているのをよく見かける。 これはそんな場所で起きた少し不思議な

          もう一つの手紙には[小説 南の国⑤]

          きっと、この料理の味は忘れない[小説 南の国④]

          うちの商人ギルドはどうしてゲン担ぎが好きなのか。 発酵師の誕生事件から数日たったある日。 商人ギルド内において脇役扱いだった豆の入った小皿は幸運の豆料理との名前を変え今や空前の豆ブームとなっていた。 あの糸引く豆は北の国にしか無いためかなり輸送費がかかる事と、クセが強いためどう扱えばいいかわからずギルドで扱うのは見送りとなった。 しかし、そこは腐っても商人ギルド。 特にギルドマスターがチャンスを逃してたまるかとばかりに糸引く豆の前に提供していた乾燥豆をあの話と共に大々的

          きっと、この料理の味は忘れない[小説 南の国④]

          重なったため息[小説 南の国③]

          魔法使いという職業がある。  それを専門としている人もいれば兼用して冒険者ギルドや商人ギルドに登録している人もいる。  けども、その中でも適正がなければなれない別格の階級がある。  その内容と代表的な職業を下記の記述せよ。 かれこれ10分ぐらいだろうか。商人ギルドの受付近くの椅子に座りながら用紙とにらめっこをしていたのは。  うーん。勉強してないからかわかんない!勉強してても会ったこと無いと忘れちゃう!  そんなしょっぱい感情と共に商人ギルドの年期の入った天井を見上げても答

          重なったため息[小説 南の国③]