野球部で風俗ボーイの同級生と25年ぶりの再会
故郷の本屋に行ったら、たまたま中学校の同級生とすれ違った。
中学校卒業以来会っていないので、24、5年ぶりだろうか。
一緒のクラスになったわけでも、仲が良かったわけでもないけど、なぜか一目見ただけで分かった。それくらい印象深い奴だったのかもしれない。
彼の本名は忘れたが、あだ名は「ハラパン」と呼ばれていた。
たしか「原」と言う苗字で、パンはなぜパンなのかは知らない。
当時はカトパン、アヤパン、ミタパンなどフジテレビアナウンサーのパンシリーズはまだ世に出ていないはずなので、もしかしたらパンシリーズの元祖なのかもしれない。
彼は田舎のヤンキーが着るような、またはドンキホーテで安売りしてそうな、柄がド派手についた服を着ていた。靴はサンダル。
一人でCDコーナーを歩いて、何かを探しているようだった。
向こうは自分のことは気づいていないようだ。まあ、あんまり目立った存在じゃなかったからね。
彼は野球部だった。
あまり頭が良い方ではなかったし運動神経が飛び抜けていいわけでもなかったが、いじられキャラで、野球部の中でおどけて見せたり、気のいい奴という印象だ。
当時の印象はそんなところ。
時は過ぎて、大学卒業後。
中学校の同級生と飲んでいた時に、「ハラパンが風俗のボーイをやっていた」という話を聞いた。
何でも、名古屋の歓楽街・錦で歩いていたら、ハラパンから「うちの店どう?」と呼び込みの声を掛けられたんだとか。
野球部で「気のいい奴」が、「風俗で働く」というギャップに驚いた。
足に刺青を入れていたとも聞いた。そんなに不良のイメージはなかったのでそれもまた驚いたのだった。
彼がCDコーナーをまっすぐ歩いて行こうとするふと我に帰った。
いや、待てよ。
俺は彼のことは全然知らないし、もしかしたら当時からヤンチャな奴だったのかもしれない。
風俗が好き過ぎて「風俗業界の王になる」と旗を掲げたのすげー奴なのかもしれないし、ただただ女性が好きで入った女ったらしな奴なのかもしれない。
彼がどんなストーリーで生きてきたのだろうか。
まあ、どんな人生でもいいじゃないか。
ド派手な格好で、CDコーナーを闊歩する彼の後ろ姿を見て、少なくとも元気であることは分かった。
「生きて会えて、うれしいよ。」
心の中でそう呟いた。
俺のストーリーとハラパンのストーリーがTSUTAYAの2階CDコーナーで交わった事実が、なんかうれしい。
RADWIMPSのスパークルがBGMで流れていた。
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