マウナケア

世界一の星空と神秘の夜明け

長いようで短かった船旅も残す寄港地はあと2つ。最後から2つ目の寄港地はハワイ島のヒロ。「ビッグ・アイランド」の愛称で知られるハワイ島は、圧倒的な大自然を体感することができ、オアフ島とはまた違う魅力がある。

いよいよこの旅も終わりが近いということで、乗船初日からずっと一緒に活動してきたグループのメンバーで周ることにし、早い段階から計画を立ててきた。1泊2日でレンタカーを借り、ハワイ火山国立公園とマウナケアの星空は絶対見ようと決めていた。

年間を通して雨が多いヒロ。この日も朝から雨が降っていた。レンタカーを借り、晴れるのを祈りながらまずはハワイ火山国立公園に向かう。途中雨足が強くなったが、到着したときにはかろうじて小雨になっていた。ここではキラウエア火山の火口が見えるのだが、日中は明るいのでイマイチよくわからない。夜に行けば炎が燃えているのがよく見えたらしい。

日も傾きかけた頃、ようやくマウナケアに向かって車を走らせる。天気が心配だったが、雲間から時折太陽が顔をのぞかせ、大自然を駆け抜ける絶景ドライブになった。知らぬ間にどんどん標高も上がり、星空観測の拠点になるビジターセンターは、すでに標高2800m。到着したときにはほぼ日も沈み、一気に気温が下がる。

この後の星空観測に備えてひとまず腹ごしらえ。寒空の下みんなでカップラーメンをすする。これだけでもお腹と心が満たされて幸せな気分になってくる。それから翌朝の山頂アタックが可能かどうかセンターに確認に行った。天気が悪ければ山頂までは行けないのだ。スタッフに聞いてみると今日は悪天候で山頂までは行けないそうだ。残念だがこの地点で星空と朝焼けを堪能することになった。

夜もしだいに更け、車の中で暖をとりながら星が出るのを待つ。空は一面雲に覆われ、なかなか姿を見せてくれない。一人また一人と車の中で寝息を立て始める。朝からはしゃぎっぱなしだったので無理はない。そろそろ日付も変わろうかという頃、ふいに雲が一斉に吹き飛び、満天の星が目の前に現れた。

ずっと起きていたかいがあった。周囲の騒がしさに気づいたのか、寝ていたメンバーも目を覚ます。眠い目をこすりながらもみんなで空を見上げた。寒さの中身体を寄せ合い、無言で星を眺め続ける。ああ、自分が見たかったのはこの景色だ。世界一の星空を見ることではなく、大好きなこのメンバーで同じ時間を過ごしているこの瞬間だ。

このメンバーとは船旅の間一番長く時間を過ごした。一緒に寄港地を周ったり、明け方まで語り合ったり。リーダーとしてみんなをまとめるのは大変だったし、いっぱい悩んで苦しいことのほうが多かった。でもこの光景を見ることができてすべて報われた。自分がやってきたことは間違っていなかったのだと。みんなが綺麗な星空に感動している中、これまでを思い返しながら一人感傷に浸っていた。

翌朝、日の出を見ようと夜明け前に目を覚ます。みんなに声をかけたが、疲れ切っているのか起きたのは4人。そのメンバーで朝日が見やすいポイントまで移動する。しばらく待って現れたのは、雲海から顔をのぞかせた黄金に輝く朝日。まさに神が住まうこの地にふさわしい神秘的な夜明けだった。







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