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Ep.005:シャーマンのヤーマンな休日-ニューヨークの追憶

 私の友人で、シャーマン・ホリデイという名の男がいる。当時彼はブティックの警備として私と一緒に働いており、弁護士になる為にロー・スクールに通っていた。地頭がよく、聞き上手であり、トークも冴え、笑うと前歯のスキっ歯を惜しげもなく見せてくれるナイスガイであった。

 ある日、日本人女性がお店を訪ねた。小柄で少し目が鋭い印象であった。ひととおり店内を見たあと、彼女がシャーマンに近所の店について質問していたのを私は見た。彼は少しおどけた様子で顎を手に置き、考える様子を見せ、大げさに店の方向を指差したり、また腕を組んで考え込んだり、笑いとボディランゲージを交え、幾つかの店を紹介していた。

その数日後、シャーマンは苦笑いをしながら、私に話しかけてきた。ふだん聞き役に徹する彼からすると珍しいことだった。私も聞きたいことが山ほどあった。

彼が道案内している段階では、連絡先を交換している様子はなかったのだが、彼が仕事を終わって帰ろうとすると、職場の近所のRag&Boneの店の前にあるベンチにて例の女性が一人で座っていたらしい。お調子者の彼は挨拶がてら世間話を始め、その後に近場のバーで一杯。そして彼女と共にブロンクスにある彼の自宅に帰った。

 ここまで聞くと何ともうらやましいハナシであるが、一夜を共にした後の彼女の挙動が、少しづつおかしくなっていったようだ。2日目には彼女が泊まっていたNY在住の友人宅にて、ささやかなディナーが行われた。そこで酒に酔った女性はシャーマンの手を引き、共用バスルームに連れ込み一戦を交えた。

旅先とはいえ、大胆な欲望を見せた彼女に、シャーマンは少し怖気付き始めたそうだが、その後、彼女は友人そっちのけで、また彼の家にトンボ帰り。その後はまぁ説明するまい。

 3日目、彼は彼女に手を引かれ、34丁目のあたりを散策していたらしいが、突然彼女が「今、他の女性のこと見てたでしょ。私がニューヨークにいるあいだは、私だけを見てなさい。」と言い放った。何だか雲行きが怪しくなってきた。

その夜、彼女とシャーマンはベッドの上にいた。何回も肌を重ね、段々と馴染んできた実感があったらしい。

彼は迷っていたが、とうとう、彼女に「大麻を吸ってもいいか?」と訊ねた。

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