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君は何を買うのだろう 僕は何を選ぶのだろう 寺田本家五人娘&香取(後編ってことで)

楽しい時間は想像以上に早く過ぎます。

昨日は飲み友のお宅へ伺って、家族どうして飲んだり食べたりしてました。

楽しかった。後何回あんなことがあるだろうか。あんな時間を共有してくれる人と会えるだろうか。

出会ってからまだ飲んだ回数なんて多くなくて、家族同士も二回目だけれど毎回心地よい時間を過ごさせていただいてます。

僕はそういうところでかわされるお酒の話が大好きです。
正しいかどうかは二の次の酒の話が好きです。

「正しいかどうかは二の次」というのは、デタラメなことを酔いに任せてしゃべくるということではありません。

誰も予想できないはずの酒の未来の話を、酔いで緩んだ脳が喋り手に積極的に話させる様が好きなのです。自分に関してもそう。他人だけではなくて。

なんでしょう。野放図に思いの丈を叫ぶってのもたしかに素敵なんですけど…。
明らかに予測不可能な1年後2年後…30年後とかの話に、今時分の手元にある確たる証拠とか想像力マックスで膨らませた推論でアクセスしようとすうる無謀さに惚れるのです。

(もちろん話している人がどれくらい正しそうなことを言っているのかはある程度自分にも知識や考えの積み重ねがないと判断つかないわけですが。りてらしい、ってやつですか?これ。)

時間が経つことに当たり障りの無い話はなくなっていき、お互いにそんな感じで日頃考えていることを交互に話していました。

僕はそういうことをまずちゃんと聞いてくれる人がいることが嬉しいのです。
哲学をやっていた時は、どこのコミュニティにも入れなかったし。パン屋はそもそも自分がプロフェッショナルな意見を持てるほど興味が持てなかった。

酒でそれができて、そういう人がいてとても嬉しい。

で、そんな中で自分が考えなしに(!)広げた寺田本家の五人娘の酒のことを考えていたのですが…。

前回の記事のリンクを一応張っておきますので、忘れてしまった方まだ見ていない方で興味のある方はぜひざっと見て下さい。

天然さんは、好きですか? 寺田本家・自然酒五人娘(前編)|りょーさけ @themiddleofm|note(ノート)https://note.mu/ryosake/n/nde34f9b39b9c

この記事の焦点は次のようなことです。

寺田本家のような唯一無二と言ってもいいくらいの個性を持ったお酒の風味が、未来に何らかの技術で簡易に再現できるようになったとき人々はどちらの酒を買うのだろうか?

これです。

注意点があります。
これはあくまで思考実験です。
寺田本家さんの価値を貶めるつもりはありません。あと、実際にそういう技術を持っているところがあるわけでもありません。

「○○だったら、どうなるだろう」と頭に中で考えてみることによって、想像力を膨らませてみたいのです。

お酒を買うとはどういうことなのかについての、想像力を。

で、はい。
昨日も寺田本家さんのお酒を飲んだのです。香取、90%純米。五人娘と同じような森の空気と乳酸チックな香りを高濃度に濃縮したような独特の風味があります。味は旨味もありますが、特徴的なのは酸味でしょう。飲んですぐに「これは癖の強いチーズなんかと合いそうだ」と思ってしまうような強烈な個性を感じました。

このお酒は無農薬米を用いて、限りなく自然的な手法で醸されたお酒です。
いわゆる自然派日本酒のトップランナーといっていいかと思います。トップランナーというより、最高の傾奇者といったほうがいいかもしれませんが…笑

さて。
この一本のドラマチックさが、簡易な手法で再現されたときみんなはどうするのか。あなたはどうするのか。僕はどうするのか。

更に想像してみましょう。寺田本家さんがやっていることは非常に手間がかかることだと思います。(自然的な手法にはいつでも腐敗などのアクシデントがついて回りますので…)

対して仮想の相手はその味を簡易な技法で再現します。ということはコストも自然的な手法よりはかからないかもしれません。価格は安いかもしれません。

で、ここが重要なのですが。

味が全く同じで価格も元のものより安い。それでも寺田本家さんの五人娘や香取を買う人はなんで買うんでしょう。それを買うというのはどういうことなのでしょう。

それはきっと、寺田本家さんの酒の味以外の部分に投資するということなのです。
それを尊く思い、応援したい人がどんな状況にあっても寺田本家さんのお酒を買うのです。

寺田本家さんは自分たちやそれ以外の人も巻き込んだお祭りイベントを開催されているそうで、純粋に酒に興味がある人から酒以外のものも含めた「自然的なもの」に興味がある人達が集まるそうです。

僕はいったことがないのですが、ヒッピーさんたちがわーわーやってるよーって話もその飲み友から聞きましたので楽しげなお祭りなのでしょう。

そういう人たちが、そういうコミュニティの存続を願って買うのです。
というか、寺田本家さんのお酒を買うということはそのコミュニティを持続させるという未来に投資するということなのです。

それを買い手が考えようが考えまいが、それを買えばその祝祭は続きます。

とまあ寺田本家さん中心に語ってきましたが、ここまでコアでなくてもいい。
日本酒の蔵には次世代を見据えて、例えば木桶の職人を育て始めている蔵がある。陶芸職人を囲って陶器の文化も一緒に盛り上げようとする蔵もいる。酒以外の麹、味噌、醤油などの発酵文化をまとめて盛り上げて里ごと生き残ろうとする蔵もある。

そういう蔵のお酒を買うということは、付随する(というと失礼かな、共栄している)諸文化へ投資することになるのです。

それらの価値を知って行動する人たちは、たとえ多少味がぶれてもそこのお酒を買うでしょう。そうやって年々その蔵とその周辺を応援するでしょう。そして、たとえ似たような味の商品が出てもそれを買い続けるでしょう。

さあ、あなたは何を買いますか?
僕は明日何を買おう?

酒蔵一軒一軒の個性を見極めてやろうとすることを見極めるのは簡単ではありません。それこそ直に蔵を知る必要があるでしょう。面倒かもしれません。

しかし、適当にトレンドのお酒や「うまいと言われている酒」を買って知らぬ間に「全然自分の思い描く未来と合致しない酒」を買ってしまうのって寂しい気がしませんか?
飲んでいる時は嬉しいけれど、上記のこと考えたら少しうーんってなりませんか?

…といっても、やっぱり美味しいのが一番なのかな笑

一番だよね。

でも、その一杯は、一本は確実に未来につながっている。
あなたが望もうと望まなかろうと、つながっている。

君は何を買うのだろう。
僕は何を選ぶのだろう。

どうもこんばんは、りょーさけでした。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。