ノクターン第1番 楽曲分析
今回はショパン(1810~1849)のノクターン第1番を解説していきます。第2番、第3番と共に作品9として出版された初期のノクターンです。第1番はそれほど複雑な構成をとっておらず、演奏も比較的容易です。その中でもミクソリディア旋法を使用するなど、創意工夫がこなされています。では早速見ていきましょう。
1 概要
ノクターン第3番は1831~1832年頃に作曲された作品です。1831年というと、ショパンが故郷ポーランドを発ち、フランス、パリに活動拠点を移した頃です。第2番、第3番と共に作品9としてまとめられ1832年に出版されました。ピアノメーカーであるプレイエルを設立したカミーユ・プレイエルの妻であるマリーに献呈されました。最初に出版されたノクターンですが、これらの作品群が最初に作曲されたノクターンではありません。遺作として出版されたノクターン第19番や、ノクターン第20番(レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ)などがこの作品9が作曲される前に作られています。
第1番はA‐B‐Aの3部形式で作られており翳りを含んだ変ロ短調のAの部分と明るい変ニ長調のBの部分で構成されています。
では実際に楽譜を見ながら解説していきます。
2 構造
6/4拍子 Larghetto(ゆっくりと、ラルゴよりは速く) 変ロ短調
テンポはLarghettoとなっています。イタリア語で名詞や形容詞に-etto、-ino、-ettaが付くと「小さい」「かわいらしい」といった意味を持ちます。
このLarghettoではLargo(ゆっくりと)に-ettoが付くことによって、ゆっくりと、でもラルゴよりは速くという意味になります。また、この曲もそこまで演奏時間が長くないことから小さなノクターンという意味を含んでいるかも・・・?
他にも
AdagioーAdagietto
AndanteーAndantino
AllegroーAllegretto
などがありますね。
A 0:00~
この曲では左手はアルペジオに徹しています。
黄色とオレンジ色のハイライトの部分がAの核となる主題になりますが、1回目はシンプルな形で、2回目は変奏された形で現れます。11連符、22連符へと変化しており、リズムを掴むのが難しいところです。espress.(espressivoまたはespressioneの略。表情豊かに) の指示がありますので、ぶっきらぼうに演奏しないようにしましょう。Aの5小節目からは平行調変ニ長調に転調します。和声もI→IVの繰り返しで非常にシンプルです。8小節目で変ロ短調に戻り、冒頭のフレーズが繰り返されます。冒頭のフレーズを奏でた後は15小節目に向かって音量を上げていきます。15小節目でappasionato(情熱的に)となり、更に力を増していき、17小節目で頂点を迎えます。con forza(力を持って)に向かって演奏するとよいでしょう。その後は急に失速してP(ピアノ。弱く)でAを終えます。
B 1:27~
Bでは変ニ長調へと転調し、sotto voceの指示もありますので、かなり音量を落とします。Bの前半は肌色のハイライトの部分が核となるメロディです。Bの5小節目4拍目からは半音上の調、ニ長調に転調します。これは変ニ長調の-II調です。5小節目から7小節目3拍目まではpoco rallent.となり、少しずつテンポを落としていきます。7小節目4拍目でTempo I(冒頭のテンポで)となり、変ニ長調に戻ります。これを繰り返します。
17小節目からは新しい素材が導入されます。この部分はpoco strettoとなり、少しずつテンポを上げていきます。その後は、再びBの主題が再現します。
17小節目~24小節目のフレーズを繰り返した後、33小節目からは新たなフレーズが導入されます。ここでは教会旋法の一種、ミクソリディア旋法が用いられています。ここからは変ニ長調の主和音しか現れず、和音の変化がない場面が続きます。42小節目で通常の変ニ長調に戻ります。
ここまで和音の変化がないのもショパンの作品にしては珍しい気がします。
48小節目から左手がようやく変化します。構成音の変位、構成音の転位を使って変化を付けています。そしてAが再現されます。
A’ 4:15~
テンポを落としながらA’へと向かいます。メロディは同じですが、変奏の部分は最初のAと異なっています。こちらもTempo Iから9小節目を頂点にして音楽を進めていきましょう。10小節目からは短いコーダとなります。V9の和音根音省略形が用いられていますが第5音が下方変位しているのが特徴です。最後はこの和音の構成音をaccelerando(だんだん早く)しながら下っていき、最後はritenuto(すぐにテンポを落として)してピカルディ終止で曲を締めくくります。
3 終わりに
いかがでしたか?
ご存じの通りショパンの作品というのは大半がピアノ独奏曲です。ノクターンやマズルカ、ワルツ、ポロネーズといった作品はショパンの生涯を通して何作も作らていますので、彼の作曲語法が発展していく様子が窺えられます。作品9は作曲技法がそれほど熟しているとは言い難いです。後期の作品と比べて初期作品との違いを判別するのもショパンを知るうえで重要なものだと思います。
作品9に至っては、第1番、第2番と第3番ではかなり作曲技法の発展が見受けられます。第2番、第3番も解説していますので合わせてご覧いただければ幸いです。
それでは、ご覧いただきありがとうございました。
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