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同じ旋律を840回⁉ サティ ヴェクサシオン

今回紹介する作品はエリック・サティ(1866~1925)ヴェクサシオン(Vexations)という作品です。ジムノペディ(Gymnopedie)やジュ・トゥ・ヴ(Je tu veux)など素晴らしい旋律を持った作品も遺したサティですが、彼の特徴として奇抜なタイトルや不思議な楽曲構成をもった作品も多いです。今回紹介するヴェクサシオンもかなり変わった作品ですが、とても興味深いので紹介していこうと思います。

エリック・サティ(Erik Satie)

1 概要と曲の中身

この作品は明確な作曲年が特定されていませんが、1892~1895年頃に作曲されたと推定されています。解説書によって作曲年の推定は様々です。

構成は拍子も無く、無調で作られており1つのテーマを840回繰り返すというものです。

では実際に楽譜も見てみましょう。

最初に「作曲者のメモ(NOTEノートゥ DEドゥ L'AUTEURロトゥール)」と題された文章が書かれており、

Pourプル se jouerジュエ 840(huitユィットゥ centサン quaranteカラントゥ) foisフォワ deドゥ suiteスィットゥ ce motifモティフ, ilイル seraスラ bonボン deドゥ se préparerプレパーレ au préalableプレアラブル, et dansダン le plusプリュ grandグラン silenceスィランス, parパル des immobilitésイモビリテ sérieusesセリオズ.

《訳》
このモチーフを840回連続して演奏するには、予め準備が必要になるだろう。最も深い静寂の中で、確固たる不動性によって。

※❝sérieuses❞は直訳すれば「真剣な」という意味です。

Trèsトレ lentラン 非常にゆっくりと
この楽譜の上段と中段の初めにはコーダマークのようなマークが書かれています。

このマークには

A ce signeスィニュ ilイル seraスラ d'usageデュザージュ deドゥ présenterプレザンテ le thèmeトェム deドゥ la Basseバス.

と書かれており、「このマークを通ったらバス主題を演奏する」という意味になっています。

すなわちこのマークがある所へ到達したとき、下段に書かれている主題を一度演奏してから、楽譜通りに演奏するということになります。

なので流れは
主題→上段→主題→中段→主題→上段→主題→中段・・・
となり、これを840回繰り返すことになります。

上段、中段とも和音はほぼ減3和音であり、減3和音以外の場所はそれぞれ2ヵ所ずつしかありません。(赤いハイライトが減3和音ではない部分)

すべて不協和音で構成されているのでこれを840回繰り返すとなると気が狂ってしまいそうな気がしますね。

ちなみにヴェクサシオンの意味はフランス語で「嫌がらせ」です。

2 終わりに

今回はサティのヴェクサシオンを紹介しました。いかがでしたが?
この作品だけに限らずサティの作品には不思議な作品を数多く残しています。気になった方は是非調べてみてください。

よければ他の記事もご覧ください。

また作曲もしています。

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