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院試合格体験記(京都大学/宇宙物理・地球惑星)

大学院入試が終わって、成績開示を受け取ったので、そろそろ院試合格体験記を書く気分になってきた。あまり優秀な学生ではないので、参考にならない部分も多いかもしれない。一方で、自分自身を優秀ではないと思っている方なら、少しは参考になるかもしれないと思う。覚えていることや思ったことをそのままつらつらと書いているだけなので、そんなに期待してほしくはないが、院試勉強の休憩がてら、読んでもらえると嬉しい。

東京大学大学院の院試合格体験記は、別記事で書いた。

1. 自己紹介

京都大学理学部宇宙物理学教室(物理科学系)に所属し、同大学大学院理学研究科を受験した。理学研究科では、専攻によって様々だが、基本的には併願が可能である。いくつ併願しても受験料が同じだったこともあり、せっかくの機会なので、色々と併願してみることにした。最終的には、以下の専攻・分野に合格した。

  • 物理学・宇宙物理学専攻 宇宙物理学分野

  • 地球惑星科学専攻 地球物理学分野

  • 地球惑星科学専攻 地質学鉱物学分野

併願した専攻・分野は、すべて合格であった。別記事で書くが、東京大学大学院も受験し、そちらも合格した。ちなみに、第一志望は、東京大学大学院であった。

学部4回生前期の段階では、地球や惑星の環境に興味があった。京大理学部の物理科学系なので、基礎的な物理学を学習していたが、それだけでなく、地球惑星科学系の地球史学や古生物学、生物科学系の生態学や数理生物学なども軽く学習していた。というか、あまり物理学には興味がなかった。それもあって、院試対策を開始した4月時点では、力学と解析力学以外、ほとんどの物理学の演習問題を解くことができていなかったし、院試を迎えても、解けるようになったとは言いがたい。しかし、それでも合格できたので、似たような境遇の方には希望をもってほしい。がんばれば、なんとかなる。

2. 院試対策

第一志望は、東京大学大学院であったので、基本的には、それに向けた院試対策を行っていた。その内容については、別記事で書くので、該当箇所を読んでもらえるとよいと思う。それとは別に行った対策について、専攻ごとに以下に記録しようと思う。先に断っておくが、英語試験は、ほとんど合否に影響しないという噂を聞いていて、それを信じていたので、英単語と英熟語を覚えようとした以外、特に対策をしていない。

物理学・宇宙物理学専攻の対策

試験の対策について記録する前に、志望した分科(研究グループ)について記録する。宇宙物理学分野では、研究グループが5グループあり、それらの中から志望する研究グループを選択することになる。また、他の専攻・分野とは異なって、願書の分科の欄には「理論」あるいは「観測」とだけ記入し、別の書類に志望する研究グループを記入する。研究グループは以下の通りである。

  • 理論:理論宇宙物理学

  • 理論:太陽・宇宙プラズマ物理学

  • 観測:太陽物理学

  • 観測:恒星物理学

  • 観測:銀河物理学

僕は、学部生として理論宇宙物理学グループに所属していて、そこが第一志望であったが、その他については、(できれば理論で)どれかに受かればよいと思っていたので、とりあえず、学生募集要綱に記載されていた順に志望することにした。つまり、上述の順である。おそらく多くの受験生は、順番はそれぞれだと思うが、とりあえず、全グループを記入していると思う。ちなみに、研究グループごとに志望するが、合格の際には、研究グループとともに指導教官まで決定されることになるので注意が必要である。つまり、事前レポートや口述試験の内容で、指導教官まで決定するということである。

筆記試験は、大きく以下の3つの範囲から出題される。

  • 物理学

  • 数学

  • 英語

まず、物理学から記録していく。物理学は、学部1回生で扱うような力学や電磁気学、熱力学から学部3回生後期で扱うような電磁気学や統計力学、量子力学までが範囲であると言われている。その他、解析力学や物理実験学も含まれる。特に対策が必要な分野としては、電磁気学と熱・統計力学、量子力学が挙げられる。もし、物理学第一分野あるいは物理学第二分野を志望するなら、この3分野は、しっかりと習得しておく必要があるだろう。一方で、宇宙物理学分野を志望するなら、そこまで難しい内容まで習得しておく必要はない。京大理学部のカリキュラム的に、物理学第一教室と物理学第二教室の学生が履修するような「統計力学C」と宇宙物理学教室の学生が履修するような「太陽物理学」が同じ曜時限にあることなどからわかる通り、宇宙物理学教室の学生は、物理学の三大分野のいずれかには精通していても、すべてに精通しているわけではないからである。もちろん、すべてに精通していた方がよいのは事実だが、三大分野のすべてに精通していないからといって焦る必要はない。もし、時間的余裕がなくて、すべてを十分高い水準で習得することが難しそうであれば、電磁気学あるいは量子力学の対策に力を入れるとよいだろう。ただし、僕は、いずれもほとんど対策しなかったが、奇跡的に合格できた。

次に、数学である。数学は、微分積分や線形代数といった学部1回生で扱うような分野から、偏微分方程式やFourier-Laplace解析といった学部3回生で扱うような分野まで、広く範囲に含まれると思われる。しかし、数学分野の配点は、全体としては小さく、あえて数学の対策を行う必要があるとは思えない。時間的に余裕があるならば、数学の対策を行ってもよいかもしれないが、そんな時間があるならば、量子力学の対策をした方がよいと思う。そもそも、ある程度の数学を習得しておかないと、物理学の対策をすることすらできないと思うので、そういう意味では、数学の学習(対策ではない)は、かなり早い段階で進めておくべきだと思う。

一応、少しだけこの演習書を使用したが、効果があったかどうかはわからない。それ以外に、参考書や演習書として、物理学・宇宙物理学専攻のために特別に使用したものはない。前日に前年度の過去問題を見て、数学の問題を解いただけである。このときに取り組んだ数学の問題は、半分程度しか解けなかった。

地球惑星科学専攻の対策

物理学・宇宙物理学専攻の対策とは異なり、地球惑星科学専攻の対策は、地球物理学教室と地質学鉱物学教室(ともに地球惑星科学系)に所属する友人がいたので、その友人たちが行っていた院試対策に参加させてもらう形で進めた。具体的な対策について、以下に記録する。

まず、志望する分科を選択した。地球物理学分野は、学部生のときに所属できる研究室よりも、院生のときに所属できる研究室の方が多いため、内部生であっても学部生の頃に所属していた研究室以外の研究室に所属することも少なくないらしい。そのため、学部生のときに配属された研究室が合わなかったり、そもそも第一志望ではなかったりすると、所属研究室とは異なる分科を志望することもあり、分科によって第一志望倍率が大きく異なることがしばしばある。ちなみに、2023年度入試(2022年8月実施)では、熱学火山群と地球表層群の第一志望倍率が低かったという噂である。ただ、志望を複数記入することもできるので、とりあえず、自分自身の興味関心に合わせて、素直に志望を記入してもよいと思う。地質学鉱物学分野は、そもそもの人数が少ないので、あまり志望順位が影響することはないと思われる。

次に、受験科目の選択である。出題分野は、以下の通りである。

  • 数学 1問

  • 物理学 2問 :力学と電磁気学が多い。

  • 化学 1問

  • 地質学鉱物学 2問

  • プレートテクトニクス 1問

地球物理学分野を受験するならば、受験科目は、数学と物理学(力学)にしておくことが無難である。あるいは、数学と物理学(電磁気学)でもよい。地質学鉱物学分野を受験する場合でも、数学と物理学(力学)が最もよいと思うが、自分自身の専攻分野に合った分野を選択することもよい。数学や物理学が苦手だという場合には、とりあえず、プレートテクトニクス1題を選択するとよいと言われている。数学と物理学は、演習問題が豊富であり、対策がしやすいという特徴がある。化学も対策がしやすい方ではある。一方、地質学鉱物学とプレートテクトニクスは、演習問題が少なく、対策がしにくい。普段から自主ゼミなど行っていて、一緒に学習する友人あるいは先輩がいるならば、協力して対策を行うこともできると思うが、そのような人が周りにいないならば、プレートテクトニクスはまだしも、地質学鉱物学は、選択しない方がよいと思う。もちろん、1人でも十分高い水準に達することができる人もいると思うので、そのあたりは、自分自身の熱量や時間と相談するしかない。

以下では、実際に対策をした数学と物理学(力学)について記録する。数学の対策は、演習書を用いた演習を中心に行った。まずは、以下の2冊からはじめた。計算問題だけでなく、証明問題まで丁寧に進めることが望ましい。4月頃に開始して、6月頃に終了したと思う。

チャート式シリーズでの演習を終えていれば、普通の微分積分学・線形代数学の演習問題は、そんなに苦労しないだろう。一応、他の演習書を用いて、習得内容の確認と演習を行うとよいと思って、「演習 行列・微積分」を軽く進めてみた。2週間もあれば1周できたと思う。この時点で、地球惑星科学専攻の数学は、ほとんど対策できたようなものである。

あとは、常微分方程式とベクトル解析、Fourier解析を確認する必要があったので、「演習 応用解析」を用いて、そのあたりの演習を行った。特に、Fourier解析は、頻出分野なので、注意深く演習した。

その後は、友人たちと一緒に数学の過去問題を解いていただけである。とはいえ、友人たちは、いわゆる内部生なので、Webサイトに掲載されているものよりも古い過去問題をもっていて、僕は、結局、約7年分解いたはずである。ちなみに、友人たちは、約15年分解いて(本番で満点を取って)いた。

物理学(力学)の対策は、教科書も利用した。退官前、僕が学部1回生の頃の「物理学基礎論A」という力学の授業の担当だった篠本先生の教科書をずっと使っている。力学の教科書は、他にも有名なものが多いので、どれを使ってもよいだろう。余談だが、篠本先生は、学部1回生なら誰でも常微分方程式を解くことができると思っているのではないか、と思うほど自然に常微分方程式を解かせてきた。

問題数は少ないが、以下の演習書を使って軽く演習をした。一応、全部解いた。その後、過去問題を解いてみたところ、普通に解けてしまったので、これ以上、地球惑星科学専攻の対策としては特別な演習をしていない。過去問題の物理学(力学)は、結局、4年分だけ解いて飽きてしまった。

3. 院試当日の感想

日程的に、先に地球惑星科学専攻を受けて、後に物理学・宇宙物理学専攻を受けたので、以下では順番が入れ替わっていることに注意してほしい。いずれも、筆記試験の試験場は、理学部6号館であった。長時間座ることを想定した椅子ではないので、心配な方は、座布団などをもっていくとよいかもしれない。ちなみに、感染症対策のため、英語リスニングのとき以外には窓を全開にしていたので、とても暑かった。京都の夏は、暑い。あと、昼食を北部食堂で食べる時間はあるので、プロミーラーの方は心配しなくてよい。

地球惑星科学専攻

筆記試験は、英語試験(TOEFL ITP)と基礎科目試験である。
英語試験は、全然わからなかったが、上述の通り、合否にほとんど影響しないという噂を信じて、特に後半部分は適当に色塗りをしていた。あまりにも点数が低ければ、それだけで不合格になるのかもしれないが、京大を受験するような人ならば、おそらく問題ないと思う。
基礎科目試験では、数学と物理学(力学)の問題を解いた。数学は、標準的な問題ばかりで、ほとんど想定通りの時間で解き終わった。物理学(力学)は、過去問題からは少し傾向の異なる問題であった。地球物理というよりは、宇宙物理のような問題であり、むしろ解きやすかった。ただし、内容はそれほど単純ではなく、難しくはあったため、すべての問題を解くことはできなかった。
筆記試験を終えた後、試験室の外の壁に口述試験の実施場所と時間帯が掲示されていた。それを確認してからアルバイトに向かった。

口述試験は、地球物理学分野と地質学鉱物学分野で、その実施方式が異なる。ちなみに、2023年度入試(2022年8月実施)で、地球物理学分野と地質学鉱物学分野の両方を志望したのは、僕だけであったと思われる。

地球物理学分野の口述試験は、志望した分科に応じて、その分科に関係のあるであろう約6名の試験官と行う。志望する分科によるが、内部生ならば、講義や演習などで面識のある先生が試験官になっていることが多い。僕は、地球物理学分野としては外部生であったことと試験官が自己紹介をしなかったことにより、試験官のことを誰一人知らない状態で口述試験に臨んだ。志望した分科の教官の氏名と研究内容については、一通り確認していたが、顔を覚えていなかったので、有用な情報とはならなかった。口述試験は、試験室の教卓周辺にある椅子に受験者が座り、普段学生が座る方の席に試験官が座るという形で実施された。口述試験の内容としては、まず、事前に提出していたレポートについて、数分間のプレゼンテーションを行った。このとき、事前に提出していたレポートの補足説明として、当日、事前に指定された枚数以内で資料を配布することができる。結局、この配布資料をもとにプレゼンテーションを行った。後から聞いた話によると、友人たちも、事前レポートよりも配布資料をもとにしてプレゼンテーションを行った、と言っていた。プレゼンテーションの後、試験官からの質問が行われる。僕は、志望する分科とはあまり関係のない内容をテーマとして選んだため(外部生だったからかもしれない)、それほど高度な質問をされることはなかった。口述試験でされた質問を大まかに記録しておく。

  • レポート内容の理論について(多数)

  • レポート内容の観測について(多数)

  • テーマに興味をもったきっかけ

  • 今後、深めていく予定はあるか

  • 理論の過程が実際の物理過程と逆であるのはなぜか

  • 大学院での研究の現状のイメージ

レポート内容に関する質問は、ある程度勉強してから臨んだので、ほとんど問題なかったが、「大学院での研究の現状のイメージ」については、中身のある回答ができたとは言えない。そもそも、宇宙物理学教室では、4回生の夏休み時点で、まだ研究活動を行わないので、具体的にイメージすることができなかった。「これから卒業研究をしつつ、具体的なイメージをもてるようにしていきたい。」と回答するしかなかった。口述試験は、約30分で終了した。その後、時計台ショップにいき、シュークリームを購入して食べた。

地質学鉱物学分野の口述試験は、志望した分科に関係なく、地質学鉱物学分野のほぼ全教官が試験官となって行う。ただし、実際に質問するのは、志望した分科の教官ばかりである。レポート内容によっては、志望した分科以外の教官からも質問があるかもしれない。地質学鉱物学分野の教官については、氏名と研究内容に加えて、顔も知っている教官ばかりだったので、そういう意味で、とても気楽に臨むことができた。口述試験は、試験室の教卓周辺にある椅子に受験者が座り、普段学生が座る方の席に試験官が座るという形で実施された。口述試験の内容としては、地球物理学分野と同様に、事前に提出していたレポートについて、数分間のプレゼンテーションを行った。配布資料についても同様である。ただし、地質学鉱物学分野の口述試験の方がプレゼンテーションで与えられた時間が短かったし、質問時間も短かった。口述試験でされた質問を大まかに記録しておく。

  • レポートテーマについて考えようと思ったきっかけ

  • 地球惑星の修論では、新規性のある研究することになるが、どのようにイメージしているか

  • 地質学的証拠から現象を説明する手法について

割と厳しい質問が多かったので、あまり適切に回答できていない。地質学鉱物学教室の友人に聞いたところ、それほど厳しい質問はなかったということだったので、外部生だから厳しかったのかもしれない。口述試験は、約15分で終了した。

物理学・宇宙物理学専攻

筆記試験は、午前の部と午後の部の2部あるので、体力勝負でもある。上述の通り、ほとんど対策せずに受験したので、その程度の受験生の感想であることを承知願いたい。

午前の部では、力学(100点)と電磁気学(50点)、物理数学(25点)、量子力学(25点)が出題された。力学と物理数学しかわからなかったので、この2題だけがんばった。申し訳程度に、電磁気学を1問だけ解いた。量子力学は、白紙で提出した。力学の配点が100点だったこともあり、思ったよりもよくできてしまって驚いた。その後、北部食堂で昼ごはんを食べた。
午後の部では、統計力学(100点)と量子力学(50点)、実験(50点)、英語(50点)が出題された。実験は、熱力学だった。実験と英語を解いて、統計力学の序盤の数学問題だけ解いた。量子力学は、またも白紙で提出した。250点中150点程度を落とした状態での提出だったので、若干焦りはしたが、その後のアルバイトには問題なくいくことができた。

口述試験は、一次試験である筆記試験を通過しなければ受験することすらできない。逆に、口述試験に進むことができれば、一次試験は突破できたということであり、口述試験で変なことを話さない限り、合格できるという噂であった。翌月にいく予定のキャンプ場の下見をしているときに、発表時刻になったので、恐る恐る結果を見てみると、無事に一次試験を突破していた。口述試験は、翌日にあるということで、その日は、早めに寝ることにした。

感染症対策のために、口述試験は、Zoomを用いたオンライン形式で実施された。宇宙物理学分野の教官のほぼ全員がミーティングに参加していたように思う。上述の通り、志望する研究グループとしてすべての研究グループを記入していたこともあってか、各研究グループから1名以上は、何らかの質問をしてきた。ただし、レポート内容などから察してか、多くは第一志望と第二志望の研究グループの教官からの質問であった。宇宙物理学教室所属なので、全教官の氏名と研究内容、顔(Zoom上で氏名が記載されていたので顔までは覚えていなくてもよかったかもしれない。)がわかっており、質問意図の把握も楽にできてよかった。
もし、外部生がこれを読んでいるならば、指導教官として志望する教官以外にも、宇宙物理学教室附属天文台の教官について、しっかりと確認しておいた方がよいだろう。

4. 成績開示

11月になれば、成績開示の申請が可能となる。受け取った成績表から点数部分を抽出した表を作成したので、以下に記録する。

宇宙物理学分野

地球物理学分野

地質学鉱物学分野

おわりに

理学研究科の院試は、学部1,2回生で扱うような内容をしっかりと習得しておけば、意外になんとかなる。もし、学部3,4回生で扱うような内容を理解するのに時間がかかって、自信を失っているような方がいれば、学部1,2回生で扱かった内容をしっかりと復習して習得しておくとよいと思う。もちろん、学部3,4回生で扱うような内容も将来的には必要になってくるが、院試に間に合わせる必要はないだろう。院試が終わってから、じっくりと時間をかけて理解していこう。

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動け!タイムライン

動物園か水族館にいきたいですね。