今後、人的資源を確保できるかが企業の勝ち組と負け組を分けることになる①

今回は人的資源についてのお話です。
まず最初に、欧米では数十年前から経済学、経営学を深く研究しており、その中で人的資源についても研究が進んでいました。
経営学の中には、「人的資源管理論」などの、人的資源を多面的に見てきました。(余談ですが、経済学はノーベル賞の一つの分野にもなっているように、欧米では価値の高い学問なのですが、日本ではそこまでではないのは、金儲けに対する価値観の違いでしょうか)

しかし、日本では長らく人的資源について議論も、注目もされてきませんでした。
今回の記事では、人的資源を学問的に説明すると同時に、なぜ人的資源の確保が必要になるのかを解説していきたいと思います。

人的資源について

経済学、経営学では、企業が経済活動(物を作ったり、売ったりすること)するためには、いくつかの資源が必要であることを指摘しています。
例えば、電気や水、物を作るなら材料や工作機械、物流、お金などです。その中の一つとして、働く人が必要であるとし、それを人的資源(ヒューマンリソース)としました。

そして、人的資源は、ほかの資源と違う特徴がいくつもあることを指摘しています。

【人的資源は貯蓄できない】

貯蓄性がないことは人的資源、労働力の大きな特徴の一つです。
例えば、物を作るメーカーであれば、材料を多めに買って保管することが可能です。なので、安い時にたくさん買っておいて、高い時は最低限の量だけ買う、などができます。

しかし、人的資源はそうはいきません。
忙しい時だけ、大勢を雇って、暇になったらすぐにクビにして、また忙しくなったら雇うということは、簡単にはできません。
もちろん人が余っていれば可能ですが、特定のAさんに、「暇になったら来なくていい、もちろん仕事していない期間は給与も出ない。だけど忙しくなったら、無条件で駆けつけて」ということを言っても、わかりましたという人はほとんどいないでしょう。
少なくとも暇になって、収入が入ってこなくなったら、別の仕事を探すでしょうし、他の場所で働き始めたら、「戻ってきて」と急に言われても戻る人はほとんどいません。

ちなみに、日本は人為的に人余りを何度も作ってきたため、この人的資源の貯蓄行為が一時的にできていました。これが今の人手不足をより複雑なものにしている原因になりますが、これは後述します。

また労働力も貯蓄できません。
例えば、今日は暇だから早く帰っていい。その分、明日は16時間働くことと言われても、簡単にはできません。
人の体力は限りがあり、休んでも回復はしても貯蓄はできないというのも労働力の大きな特徴になります。

【人的資源の労働力は、感情の影響を受ける】

資源の中で感情の影響を受けるのは人的資源だけです。そんなの当たり前と思うかもしれませんが、しかしこういった感情を考慮して、マネジメントしようとしている企業、組織がどれだけあるでしょうか。

欧米では、人間は感情があり、感情を良い状態に保つ(モチベーションコントロール)ことが、労働力のパフォーマンス向上に繋がることを重要視していました。
そのため、心理学などを活用し、労働者にできるだけ前向きに仕事に取り組むように仕向けていきました。
最近になって日本でも「心理的安全性」という言葉が使われるようになりましたが、アメリカでは第二次世界大戦時から、PTSDや心理面など、組織の中における個人の心理衛生は研究が進んでいたことは知っておくべきことだと思います。

個人の私生活、働く環境、人間関係、会社の風土、上司の人間性、会社の業績、評価や給与、など様々な要素が感情に影響し、それらが各人のパフォーマンスに影響することは理解する必要があります。

【人的資源は購入できない】

これも当たり前のことです。しかし、日本の経営者、管理者の中には勘違いをしている人がいます。
社員が辞めることに対して、「恩を忘れたのか」、「良くしてやったのに」などと言ったり、「短期で辞める人間に損害賠償請求できないのか」ということを相談されたこともあります。
そもそも「なぜ辞めるんだ」と言っている時点で、理解が不足していると言えます。

人的資源は、常により良い環境のところへ流れていきます。
なので、想定より社員が辞めていくということは、単純に市場の中で「負け組」になっているからに他ならないわけです。
なので、「どうすれば辞めないのか」、「どこが不足しているのか」という話なら、建設的ですし、「ここを改善しよう」という結論になれば、それは理想的です。

雇うことで満足するのではなく、人的資源を確保し続ける努力を経営者側はする必要があるのです。

【人的資源は品質のばらつきが大きく、品質が常に変化する】

これも当たり前なのですが、「教育が足りてない」、「努力不足」、「苦手をなくせ」といったことを言っている経営者、管理者が多い時点で、理解が足りてないと言わざるを得ません。

欧米では、ヒューマンリソースですから、その目利きをする必要性を理解していました。そのため、いかに低品質の資源を掴まず、高品質の資源を確保するかに注力してきました。
また品質が変化することも考慮しないといけません。老化による体力の低下と、反面、経験値が上がること。時間の経過とともに、モチベーションが下がったり、上がったりすること。5年、10年と経過する中で、品質が上がったり、下がったりするわけです。

そうなると、欧米式の雇用体系になります。
・能力や経験を重視する(年齢や性別、転職回数などはその分重要度が下がる)
・雇用期間や給与査定を変動しやすくする(品質が下がったら、それに相応の給与にしたり、解雇したりできるようにする)

まとめ

他にも人的資源については特徴はありますが、大きなところは以上になります。
少し長くなったので、今回はここまでとし、日本企業・組織が人的資源の確保がなぜ必要なのかについては、次の記事としたいと思います。

今回も読んでいただき、ありがとうございました。
また次の記事でもよろしくお願いします。

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