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「働く」の時間論⑧ 人生のエゴイズム

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「働く」という時間には、「他者のため」、「自分のため」という二つの時間が流れている。

この二つのうち、前提にあるのは、まず自分が食べて生きていくため、「自分のため」である。また「働く」ことを享受して幸せに生きている。レヴィナスはこのことを恐れず「人生のエゴイズム」と呼んでいる。人間はまず自分自身が生きることをしなければならない。それが第一である。ここでいうエゴイズムというのは、他者を踏みつけにすることではない。自分の人生を幸福に生きる、そのことである。

しかし果てしない成長が求められる社会では、「自分のために働く」という前提が覆い隠されてしまってはいないだろうか。理想の実現という未来の目的のために働く時間ばかりが要求される。「自分のために生きる」時間が失われてはいないだろうか。

以前にも書いたように、さらなる成長が求められている日本では、より成果を上げるために無駄な業務を可能な限り減らし、意味のある業務を優先するようになってきている。簡単にいうと効率化である。では無駄だと判断された業務をしていた人間の時間も同様に無駄だったのか。それは「自分のために働く」という時間軸でいえば全くそんなことはない。しかし、現代社会の流れの中では、一人ひとりの仕事を享受し幸福に生きる時間、「自分のため」という前提が見失われてはいないだろうか。




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