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Universal Language

10月6日にJazztronikの6曲入りEP "Universal Language"の配信がスタートしました!

初のトリオアルバム

今回は初のトリオアルバムです。トリオと言うとどうしてもジャズのトリオをイメージしがちですが、Jazztronik trioは全く違います。なのでいわゆるジャズトリオ的なものを期待して"Universal Language"を聴いてしまうとちょっと違うかもしれません。長年一緒に音楽をやっているベースの藤谷一郎、ドラムの天倉正敬と僕の3人で作ったという意味でのトリオアルバムです。

実はこの3人での演奏というのは様々な場所で10年ほどやってきています。なのでトリオでのライブに来てくれた方もいるのではないかなと思っています。個人的には早くこのトリオの作品をリリースしたいとずっと思っていました。毎回ライブをやる度に満足度も高まっていくし、発見も多い、でもなんで録音で残してないんだろう?と常に思っていました。困った事に我々は前回やった事を再現出来ないポンコツな部分があります。毎回ライブ後に「今日のあれヤバかったね!次回もあれ絶対やろう!」なんて必ず言ってるにも関わらず。楽譜にメモを書いておいても思い出せない。そして次のライブでは必ずまた前回とは別の"今日のあれヤバかったね!"が起きます。そして忘れる。。そしてまた次のライブで。。。という生産性ゼロの無限ループに入り込んでいました。偶発的に何かが産まれるセッション性の高いトリオライブなので録音で残っていない限りやはり時間が経つと忘れてしまうんですよね。毎回自分達は新鮮な演奏ができてその度に興奮できるのでマンネリ化しなくて良いという点もあります。でも我々自体のこのトリオに対しての興奮が冷め止まぬ内に何としても録音物として作品はリリースしなくてはと思い制作したのが今回の"Universal Language"になります。

レコーディング

そもそもJazztronikは僕の1人プロジェクトなので、この"Universal Language"以前はどの作品も基本的にはいつも1人で考えて完結するのがほとんどでした。もちろん、楽器や歌に関しては僕だけではどうにもならない事も沢山あるので、そういった所はミュージシャンやシンガーの力を借りて助けてもらいます。でもあくまで僕がプロデューサーとして皆さんに指示を出し、イメージしている演奏や歌唱をしてもらうというのが基本の形です。レコーディングの当日にスタジオに来てもらい、そこで曲を聴いてもらい、楽譜を渡し、それを演奏し、レコーディングする、というのがほとんどのミュージシャンのレコーディングのスタイルです。皆さんプロのミュージシャンなので見事にこれを短時間で成し遂げて帰って行きます。

今回のトリオはその点ではかなり違っています。まず僕以外の2人の演奏やアイデアは基本活かします。レコーディングに入る前に何日間かレコーディングに向けてのリハーサルをし、そこでアレンジを3人で詰めていきます。バンドとして考えればごく普通の事の様に思えるのですが、実は僕にとっては非常に新鮮でJazztronikの作品でこの様な工程を踏まえレコーディングに挑む事はほぼありませんでした。『BB1』や『Cinematic』のレコーディングの際も事前リハーサルは行ったのですが、これはあくまで曲が難しく当日いきなりでは演奏出来ないというのが理由だったので今回とは少し内容が異なるリハーサルです。

録音する楽器の音色に関してもアプローチがちょっと異なります。通常のレコーディングは1日の中に色々な楽器のレコーディングを詰め込みます(莫大な予算のあるプロジェクトなら話は別ですが)。なので1人に対して大体2時間ほどしかレコーディングの時間が割り当てられません。こうなるとドラムの様な楽器自体のセッティング・録音用マイクのセッティングに時間がかかる楽器は準備に時間を取られてしまい肝心の音色の作り込みになかなか時間を割けません。しかし今回の様に同じメンバーで何日間か連続で同じスタジオに入る場合、まずその準備に時間をかけられるのでドラムの音色もじっくり考える事が出来ます。同じリズムを叩いてもドラムの音色でグルーヴはガラッと変わります。ドラムの音色にはかなり気を使いたいと思っていたのでこの点はかなり助かりました。

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ベースに関してもウッドが良いのかエレキが良いのか、このエフェクターをかけたらどうか、という感じでとりあえず色々試してみようという時間が設けられます。これはトリオという少人数編成だからこそ出来る大きな利点ですね。

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東京には色々なタイプのスタジオがありますが当然ながらそれぞれのスタジオが異なる特徴・響きを持っています。それに影響されて全体のグルーヴ、いわゆるノリが変わってしまう事もあります。今回もレコーディング初日にスネアがどうにもイメージした音にならなかったので藤谷さんが知人からスネアを翌日借りてそれを試してみるなんていう事もありました。自分達のイメージしているサウンドが損なわれない様にかなり気を使いました。

レコーディングに使った機材

マニアックな話になります。今回のレコーディングでは普段なかなかお披露目出来ない僕の秘蔵シンセサイザーやローズピアノを多用しています。70年代〜80年代あたりのが好きで長年ちょこちょこと買っていたら大小合わせて40台位になってしまいました。でもほとんど今までのJazztronikの作品には登場していません。特に理由はないのですが、たまたまそうなってしまいました。
"Universal Language"ではMini Moog, Prophet5, Oberheim Matrix-12, Solinaといった往年の名器と言われるシンセ達が良い味を出してくれています。エフェクターも古いものが好きで僕のシンセだけでなく藤谷さんのベースにもかけてます。今回多用したのはBoss Ce-1, Mu-tron Bi Phaseといったエフェクターです。なので少しだけ懐かしいサウンドに感じる箇所もあるかもしれませんね。マサの斬新なドラムが入っていなかったら70年代のサウンドに聞こえる様な瞬間もあるかもです。新しいエフェクターもいくつか試したのですが、Game Changer AudioのAudio Light Pedal, Plus Pedal、StrymonのNightsky, Timelineはかなり効果的に使っています。ピアノの録音には2年ほど前に購入したお気に入りのマイク(Samar VL373)を使用しました。今までなかなかピアノの音は理想の感じでは録音できなかったのですが、このマイクはまさにイメージしている音で録音出来るので今回は絶対使おうと思っていました。ドラムのアンビを録音するのにも今回はVL373を使ってみましたがかなり良いアンビ感が録音できました。

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僕にとってのトリオ

このトリオスタイルは僕の中での音楽バランスを保ってくれる重要なポジションのスタイルなのだと思っています。語弊があるといけないので言っておきますが、Jazztronikの歌モノや今までリリースしてきたJazztronik作品もどれも同じ様に楽しんでやっています。当然どれも自分の音楽なので。でも、なんて言うんでしょうか、トリオの場合、僕の趣味が全てそこに出ると言うか。中学、高校、大学、そして20代、で聴いてきて僕を育ててくれた音楽の要素が全開になる感じがとてもします。
ファーストアルバム"Numero Uno"では表現したい事やアイデアは山ほどあったけど、まだ23歳の僕にはそれを具現化する技術がありませんでした。そこでのモヤモヤは僕の中にはその後ずっと存在していて、きっとそういった部分がトリオでは色濃く出てくるのかもしれません。そしてその自分ではどうする事も出来なかったモヤモヤ部分を藤谷さんとマサが解消してくれてるのだと思います。

753Recordsと変わりゆく音楽業界

"Universal Language"は僕のレーベル"753Records (Shichigosan Records)"からリリースしています。レーベル名は日本人には馴染みあるあの"七五三"から来ています。753Recordsは主にJazztronikの作品をリリースするレーベルです。ちなみに僕は他にもMusilogue、Fat lot of goodというレーベルを運営しています。

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10年ほど前から世界の音楽産業の流れは物凄いスピードで変わり始めました。音楽を聞くスタイルがCDから配信へ変わりレコード会社も以前の様な体力は無くなってきています。そういった状況を見ているうち、自分のやりたい音楽を常にリリースしていくには自分でレーベルを運営しておかないといけないなと思い始めました。そうでないとそう遠くないうちに自分のやりたい音楽をリリース出来なくなる日が来るのではないかと思い8年前に立ち上げました。
70年~90年代の音楽業界に体力がある時代には日本でも歌謡曲、J-POP以外にもかなり面白い作品が作られていました。僕もそういった時代に作られた日本の面白い音楽(特にインスト)はかなり聴いてきました。しかし残念ながら、現在はJ-POP的な音楽以外は大きなレコード会社からのリリースは昔の様にはいかないのが現実でしょう。実は今年の春頃にJazztronikのアルバムがとあるレコード会社からリリースされている予定でした。しかしそのアルバムのリリース条件が途中で変わり、今の僕がやりたい事とあまりに乖離し始めた為"Universal Language"は753Recordsでリリースする事にしました。諦めてしまう事だけは嫌だったので。
新たな音楽や実験的な音楽をやる為には自分でアクションを起こすしかない時代になっています。幸いな事に僕にはそこをサポートしてくれるスタッフがいたり、そして世界中で新たな音楽サポートサービスが日々登場しています。今回はそういった部分をフル活用させてもらいリリースした第1弾と言える作品だと思います。僕にとってはこれからの主流のスタイルになる制作・リリース方法なのかなと思っています。そのスタイルを確立して若いアーティスト達には自分達のやりたい音楽を続けていくにはこんな方法もあるよと教えてあげたいですね。
そういえば特に海外から問い合わせが多いのですが"Universal Language"はアナログ盤も作っています。完成までにはもう少し時間がかかりそうですがお楽しみに!

Playlist

"Universal Language"は個人的にはやっとここに辿り着けた、これが出来た、という満足感で一杯の作品です。SpotifyやApple Musicでも大々的に取り上げてもらいかなり沢山のPlaylistで選曲されています。嬉しい限りです。中でも、フォロワーが50万人近くいるSpotifyのPlaylist "State of jazz"に2曲選ばれさらにPlaylist自体のトップの写真も僕になっていたのには喜びと共に非常に驚きました(タイミングによっては変わっていると思います)。

ぜひ"Universal Language"を聞いた皆さんの感想も聞かせてください!!

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コンサートツアー

そしてこのEPリリースを記念してツアーを行います!
大阪、名古屋、福岡、広島、東京で開催します!
2021年、Jazztronikとしてはこれで多分最後のライブとなると思います。
みなさんぜひ来てください!

< Jazztronik “Universal Language” Release TOUR >
2021年10月18日(月) 19:00開演 (18:00開場)
大阪公演:BananaHall
2021年10月19日(火) 19:00開演 (18:00開場)
名古屋公演:TOKUZO
2021年10月26日(火) 19:00開演 (18:00開場)
福岡公演:FUKUOKA BEAT STATION
2021年10月27日(水) 19:00開演 (18:00開場)
広島公演:Yise
2021年11月9日(火) 19:00開演 (18:00開場)
東京公演:Veats SHIBUYA

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