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【飲食店の独立開業にも使える】MQ会計を知れば専門家じゃなくても経営戦略がうまくいく!

株式会社イデアルを経営しています、和田 亮(わだ りょう)です。

私は以前、「五郎」という飲食店で店長をしていました。飲食店に勤めている方の中には「私も店長になりたい」「いずれは独立して自分のお店を開業したい」と思っている方も多いでしょう。

いくら飲食店といえど、接客や料理の腕に自信があるだけではうまく行きません。

それはわかっているけど、店長業務や独立に必要不可欠な会計の知識がないという方もいるはず。

もしあなたが経営や会計に詳しくなくても、MQ会計を知っていれば、飲食店の経営戦略を立てられるようになります。

今回はそんな魔法みたいな会計術についてご紹介したいと思います。



そもそもMQ会計とは?なぜ素人でも経営戦略に役立てられるのか?

MQ会計とは、1976年、当時ソニーに所属していた西順一郎氏が開発した会計方法。

元々会計が専門職ではない工場長のために作られたものなので、「会計や経営の勉強をしたことがない」という方でもわかりやすいです。

MQ会計は「P(Price:価格)」「V(Variable Cost:コスト)」「Q(Quantity:個数)」「F(Fixed Cost:固定費)」「G(Gain:利益)」の5つの要素の組み合わせだけで、どうやって利益を出すかがわかるものです。

ちなみにMQ会計の「M」は上記のうち「Margin:粗利単価」、Qは5つの要素の「Quantity:個数」から取られています。

MQ会計は下記のような図(「トトロの図」とも呼ばれています)に当てはめて会計状況を表します。

※上記の5つの要素の組み合わせで経営を考えます


ゲームをすれば経営のノウハウが学べる?私がMQ会計にのめり込んだきっかけ

私がMQ会計を知ったきっかけは「マネジメントゲーム」です。

マネジメントゲームとはMQ会計と同じく西氏が考案したゲーム。こちらも工場長たちが経営のノウハウを簡単に取得できるようにと作られたものです。

※イデアルの研修でも使われているマネジメントゲーム。
画像の卓や会社盤・意思決定カードを使用してゲームをします。

マネジメントゲームはあのソフトバンクの孫社長など、有名な経営者がたしなんでいることでも有名。ゲームという名前ですが、名前(マネジメントゲーム)の通り、ビジネスの場の研修(MG研修)にも利用され、名前の通りマネジメントを学べます。

写真のボードだと6名でゲームができます。

プレイヤーはそれぞれの資本金を元手に会社を経営しているという設定。順番に「意思決定カード」を山から引いて、カードの内容に応じて会社経営の判断を行っていきます。ゲームの目的は、自分の会社の経営状態を最終的に黒字に持っていくことです。

経営とは常にマーケットを見ながら行っていくことが大切。それはソニーのような有名電機メーカーでも地元の小さな飲食店でも同じです。このマネジメントゲームでは、そんな「マーケットを見る」部分を学べるようになっています。

私は一時期、このマネジメントゲームにはまっていました。マネジメントゲームの会計方法にはMQ会計のやり方が使われており、そこからMQ会計にも興味を持つようになりました。


MQ会計にあって決算書にないものとは?MQ会計が戦略に役立つ理由

MQ会計は専門家の人でなくても会計が理解できます。でも、MQ会計のメリットはそれだけではありません。

例えば、企業や個人店では定期的に決算書を作ります。経営者はこの決算書を見た税理士から「仕入れが高いから減らしましょう」「人件費が高いから減らしましょう」とアドバイスをもらいます。

税理士は決算書上に書いてある売上だけを見て、この売上が上がるように、また仕入れや人件費を減らそうとアドバイスしてくるのです。
 
ただ経営者としては、売上も利益も大切ですがお客様の満足度もとても大切です。売上や利益のためにやみくもに仕入れや人件費を減らすことには疑問を感じていました。

MQ会計を学んだところ、この疑問が解消したのです。

実は通常の決算書には販売数(客数等)の概念が抜けています。売上高も営業利益もすべて金額の総数でしか記載されません。

MQ会計には決算書にはない「Q(Quantity:個数)」があります。決算書にはこの個数がないため、税理士は単純に売上の総数を見て仕入れや人件費を減らしてください、とアドバイスしてくるのです。

例えばAというお店があります。Aは一般的な大衆居酒屋を思い浮かべてください。Aは約500万円の売上があると仮定します。そして利益は50万円です。

※売上が約500万円ある大衆居酒屋AのMQ会計

次にBというお店です。このお店は高級志向の隠れ家的なレストランを思い浮かべてください。
こちらは約250万円の売上があると仮定します。そして利益は70万円です。

Bは売上だけ見ると250万円でAよりも低いですが、利益はAよりも高いです。

※少し現実的な数値ではないかもしれませんが、わかりやすくするためにこの数値にしてあります。

※レストランBのMQ会計。AよりもP(売上)は低いがG(利益)は高い

BはどうしてP(売上)が低いにも関わらずAよりもG(利益)が高いのでしょうか。BのMQ会計を見ると、AとVQ(原価総額)は同じですが、MQ(粗利総額)とF(固定費)が低くなっていることがわかります。

通常、売り上げが高いお店ほど経営が安定して利益が出そうですが、なぜBの方が利益が出ているのでしょうか?

これを説明するためには「F/M比率」という考え方も必要になってきます。

F/M比率は企業の安全性を示す指数で、Fは固定費、Mは粗利総額(ここでいうMQ)を表します。本によっては「損益分岐点比率」とか「経営安全率」などとも言い換えています。

例えばF/M比率が50%であれば、その企業は1年で得る利益の半分を固定費に払っています。
利益に対する固定費の割合は低い方が良いので、F/M比率は低い方が企業の収益構造が良いと見られます。

F/M比率は「F(固定費)÷MQ(粗利総額)×100」で出てきます。

今回の場合、AはF/M比率が85.7%、Bが30%。F/M比率は数値が低くなるほど良いので、BはAよりもはるかに経営が安定していることがわかります。

ではこのF/M比率を踏まえてから、再びMQ会計の表を見てみましょう!AはMQ(粗利総額)こそ高いですがF(固定費)が高く、MQ(粗利総額)との差がほぼありません。反対にBはMQ(粗利総額)とF(固定費)の差が大きく、F(固定費)が低く抑えられています。

※上がA、下がBのMQ会計の表
AとBのMQ(粗利総額)とF(固定費)の状態には大きな差があり、BはF(固定費)が非常に低い

たとえP(売上)やMQ(粗利総額)が高いとしても、BのようにF(固定費)を抑えなければ利益はプラスにならないことがわかります。

このため、BはP(売上)やMQ(粗利総額)が低くても、それ以上にF(固定費)が低くなっているため、利益が出ているのです。

決算書にはMQ会計の「Q(個数)」の概念だけでなく、F/M比率の概念もありません。ただ1番上に売上が来ているのみです。

そのため税理士は「売上をもっと上げましょう」or「原価や経費をもっと下げましょう」としかアドバイスできないのです。

そして決算書に載ってない概念の人数Q(個数、この場合左下の客数)を見てみると、Bは「120人(1日6人集客)」としています。私の経験上、1人で料理からサービスまでするなら、お客様に満足してもらうには1日6人が限界だと思ってます。
 
しかし1日6人の場合、そのお客様だけにフォーカスして仕入れや調理が出来るので満足度が上がり、客単価2万円も可能になります。
 
6人であれば店の規模は小さくでき、他のスタッフは1人いれば十分。固定費を低くでき、利益は出しやすいのです。

またAはPQ(売上)が約500万円、VQ(原価総額)は150万円で原価率はVQ(原価総額)÷PQ(売上)×100=30%です。BはPQ(売上)は約250万円、VQ(原価総額)150万円だと原価率は同様の計算式で60%。

原価率は30%程度が目安で、高いほど利益が出ないのが普通です。Bの原価率60%なら普通に考えると利益はあまり出ないはずですし、税理士もこんな悪い手法は絶対にすすめません。でも結果的にBは利益が出て、2万円の単価で集客できているのでお客様の満足度も高いと考えられます。
 
このように売上をあげなくても、利益を出す方法はいくらでもあります
 
売上を下げるというと、ネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし例を出せばBがもっと原価を低くするために、田舎に移住して自分で魚や山菜をとりに行ってもいいのです。
 
売上も下がりましたが固定費も大幅に下がり、そういう「自分でとってきた食材を使うお店」の方がお客様には喜ばれ、お金をたくさん出してくれる可能性があります。
 
売上を下げても利益が増えるのが見えてくるのがMQ会計の良さなのです。
 
そんな決算書では描けない内容も、MQなら簡単に想像できるようになります。


MQ会計応用編:利益をどうしてもアップしたい時の戦略の見つけ方

例えば、MQ会計は「利益を〇円アップしたい」という時にも使えます

先ほど例に挙げたAのお店が100万円の利益をあげたいとします。ただVQ(原価総額)とF(固定費)は減らせない。この場合、VQ(原価総額)は150万円のまま利益をあげなくてはいけません
 
この場合はG(利益)の場所を100万円として、F(固定費)+G(利益)の合計は400万円。MQ(粗利総額)が400万円になるには、PQ(売上)を約550万円にしなくてはいけません。

PQ(売上)を約550万円にする方法を考えれば、利益が100万円になる計算です。

例えば「集客を増やして売上(PQ)をあげよう」と考えた場合、1日のQ(客数)が約37人で1日あたり約4人増やせばいい計算なので、1日4人増やす方法を考えればいい

「客単価を上げて売上(PQ)をあげよう」と考えた場合は、1日のP(客単価)を約5,600円にすればいいので、1日約600円客単価を上げる方法を考えればいい

このようにMQ会計を使えば、自分のお店の経営戦略が見えてきます

具体的な戦略は、状況に応じて異なります。
例えば、新潟のお店で100万円の利益を出そうとするなら、このような方法があります。

お客様が飲んだり食べたりしたいのは、新潟の有名なもの。例を挙げれば、のどぐろのお刺身や新潟の地酒です。集客目的にのどぐろの刺し身や地酒は単価を安めにし、ビールや唐揚げなどどこでも食べられるメニューは通常の単価にしておきます。

お客様はのどぐろや地酒の安さに魅かれて来店。ただそうは言ってもビールや唐揚げなどの定番メニューも頼むでしょう。そうすると、のどぐろや地酒で利益が出せなくても、通常単価のメニューで利益が出ます。

ここで気を付けなくてはいけないのは、売上が上がっても利益が出ないことがあるということ。
「原価が高くても、地元新潟のものしか出さない」と強いこだわりを持ってしまうのはよくあること。しかしそれでは利益につながりにくい。高いメニューをお客様が注文してくれたとしても、原価が高ければ利益が出ないからです。


イデアルでも取り入れているMQ会計とマネジメントゲーム

私はこのMQ会計を取り入れてから、「仕入れを減らしましょう」「人件費を減らしましょう」という税理士に「こういう理由で仕入れや人件費はこの金額になっている」と説明できるようになりました。

税理士に「電気代が高いのでは?」と言われても、暖かいお店で働いた方がスタッフのやる気が出る。その分、売上に繋がるし、お客様も暖かいお店で快適に過ごせるので、結局は集客と売り上げに繋がる。こんな風に説明できるようになりました。

※個人的に買い求めたMQ会計関連の本

イデアルではこのMQ会計だけでなく、マネジメントゲームも取り入れています。幹部スタッフにはどちらもやってもらっていて、戦略を立てるのに役立てています。独立したスタッフたちも活用していることでしょう。

※イデアル社内で実際にマネジメントゲームをやっている時の様子
※他社の代表者(会計事務所やコンサルタント)とマネジメントゲームをした時の分析表。
今までの飲食店での実践経験が役立ち、優勝することができました。

もちろん、売上は大切です。
イデアルでは売上だけを意識しない事業戦略を行っています。MQ会計やマネジメントゲームを取り入れて効率的に利益をアップさせ、イデアルの理念「Make People Happy」通りのみんなが幸せになるお店作りをしています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

引き続きお店や会社のことをnoteに書きたいと思っています。ぜひチェックしていただければと思います。よろしくお願いします。

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