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3分でわかる宇宙活動法〜ロケット打上げ計画〜

Falcon Heavy

SpaceXのFalcon Heavyが初の商業打上げを成功させました。「Arabsat-6A」というサウジアラビアの通信衛星を搭載し、ブースターの自動着陸にも成功しています。
アメリカではロケットを打ち上げる際、商業宇宙打上げ法に基づき運輸省連邦航空局(FAA)の許可が必要ですが、日本で人工衛星を搭載したロケットを打ち上げるには、宇宙活動法によって内閣総理大臣の許可が必要となります。
なお、宇宙活動法についてはアウトラインをまとめていますので、併せてご参照ください。

打上げの許可に関する判断では様々な項目が審査されますが、その中に「ロケット打上げ計画」の内容が含まれています。
条文上は

ロケット打上げ計画において、飛行中断措置その他の人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する方法が定められているほか、その内容が公共の安全を確保する上で適切なものであり、かつ、申請者が当該ロケット打上げ計画を実行する十分な能力を有すること

とされていますが、具体的にはどういうことでしょうか?

1 保安・セキュリティ対策

(1)保安
個体・液体推進役や不活性ガスなどを保安物として識別し、安全対策を講じる必要があります。

(2)セキュリティ
体制整備、第三者の進入防止対策、情報セキュリティの構築といったセキュリティ対策が必要です。

2 防災計画の策定等

警報装置、防火・消防設備、ヒドラジン等廃液処理設備、その他災害防止のための必要な設備を踏まえた防災計画の作成が必要です。

3 推進薬等の取扱いに係る安全対策

推進薬の種類に応じた安全対策が必要です。

4 落下予想区域等を考慮した飛行経路の設定

(1)分離物落下予想区域
燃え殻等ロケットから計画的に分離投下される物体について、分離物落下予想区域を設定する必要があります。

(2)飛行経路
落下予測点軌跡の分散範囲が人口稠密地域から可能な限り離れて通過するよう飛行経路を設定する必要があります。また、傷害予測数を計算し、国際的な水準と同等以下となることを示す必要があります。

5 適切な落下限界線の設定

落下限界線は、ロケット落下等による損害から保護すべき領域の境界をいいます。ロケット打上げ活動は落下限界線によって保護される領域に危害が及ばない範囲で実施しなければなりません。
落下限界線、落下予測区域、落下予想域の整理については以下をご覧ください。

6 警戒区域の設定及び第三者の進入防止体制の構築

整備作業期間中・打上げ時における警戒区域を定める必要があります。

7 自然災害等による警報発令時の対策

ロケット・設備の安全化処置等の荒天、襲雷、地震等の自然災害対策、実施条件を定める必要があります。

8 航空機や船舶等への事前通報

航空機、船舶及び周辺住民等の安全を確保するため、一定の区域及び警戒が必要な期間について関係方面への連絡要領(方法、時期等)を定める必要があります。

9 適切な打上げ日時の設定

ISS・有人宇宙船と衝突を回避するよう打上げ日時を定めなければなりません。

10 搭載される人工衛星を考慮した飛行能力

ロケットの飛行能力が、予定の軌道に人工衛星を投入できるものであることが必要です。また、ロケットの飛行経路・打上げ施設の周辺の安全を確保する機能を構成する重要なシステム等が、搭載される人工衛星によって強度不足による破損や電磁干渉等、重大な支障を生じないことが必要です。

11 気象状況を踏まえた飛行成立性の確認

確認手段や判断基準は申請時に明確にしておく必要があります。最終的には打上げ可否判断の際に確認し、問題が予想される場合には打上げ中止・日時を変更することも計画として示す必要があります。

12 警戒区域解除前の第三者損害発生の防止

第三者損害の発生を防止するために、作業の停止等の対策・その条件を計画することが必要です。

13 飛行安全管制の実施

ロケットが故障した場合の落下物に対する安全を確保するため、飛行中の状態監視を行い、必要な場合には飛行の中断を安全に行うことができるようにしておく必要があります。

14 飛行中断の実施

ロケットの異常飛行等により公共の安全及び財産に損害を及ぼす可能性が生じた場合には、ロケットの飛行を中断する必要があります。飛行中断の実施条件の設定が必要です。

15 海上浮遊物の回収

ロケット落下物により発生する海上浮遊物のうち、船舶の航行に重大な支障を及ぼすおそれがあるものについては、回収に努めなければなりません。

16 軌道上デブリ発生の抑制

ロケットの軌道投入段の指令破壊用火工品の誤作動防止措置、を講ずること、液体燃料ロケットの場合、なるべく残留推進薬、残留ガス等を排出し、排出が完了しない場合にも破砕することがないよう、内圧上昇に対して安全弁の設置等の措置を講ずるか、安全性を設計で確保することが必要です。

17 ロケット軌道投入段の保護領域からの除去

低軌道域を通過する軌道・低軌道域と干渉するおそれのある軌道で打上げを終了したロケットの軌道投入段は、軌道寿命が短い軌道に移動させるか、地上の被害を防ぐ方法で再突入して処分することが必要です。
また、ロケットの軌道投入段と静止軌道保護域との永久的あるいは周期的接触を避けることが必要です。

18 ロケット打上げ計画を実行する体制の構築

上記のロケット打上げ計画を確実に実行するため、安全組織及び業務体制、安全教育訓練の実施体制、緊急事態への対応体制を整備することが必要です。

参考:
・人工衛星等の打上げに係る許可に関するガイドライン 内閣府宇宙開発戦略推進事務局


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