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3分でわかる中国の宇宙活動法(民生用宇宙飛行打上げプロジェクト許可管理暫定弁法)

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ロケットや人工衛星を打ち上げるための根拠法は、日本やアメリカにだけ存在するものではありません。今回は、中国の法律を紹介します。

宇宙条約で求められる監督体制と許可制

そもそも宇宙条約は、宇宙活動の基本的なルールとして、民間企業などの非政府団体の宇宙活動を監督する義務について定めています(2条)。

月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。

宇宙条約を批准している国は、宇宙活動法のような「許可制度」を設けた法律によって国民の宇宙活動を監督しています。
中国では、「民生用宇宙飛行打上げプロジェクト許可管理暫定弁法」によって許可制度や監督制度が規定されています(訳:https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/china/20021221.pdf)。

定義

本法では、「民生用宇宙飛行打上げプロジェクト」を以下のように定義しています。
※長いので、以下「プロジェクト」とします。

軍用でない用途のために、中国国内にある衛星などの宇宙機を宇宙空間に打ち上げる行為及び中華人民共和国の自然人、法人又はその他の組織が既に財産権を有し、又は軌道上での引渡により財産権を有する衛星等の宇宙機を、中国国外において宇宙空間に打ち上げる行為

プロジェクトは「民生」であることが前提であり、軍事目的のものは除外されています。
対象は中国国内の衛星などの打上げ行為、中国の会社などが持つ宇宙機を国外で打ち上げる行為です。
なお、宇宙物体の登録については別途「宇宙物体登録管理弁法」で規定されています。

許可・管理制度

プロジェクトを実施するには許可が必要です(3条)。許可制度が採用されているのは、日本を含む各国の宇宙活動法と共通しています。
プロジェクトの審査、許可、監督をするのは国防科学技術工業委員会で(4条)、許可はプロジェクト単位でなされます(11条)。

申請及び審査認可手続
許可申請をするのはプロジェクト総請負業者です(5条)。申請については以下の要件を満たしている必要があります。

①国家の法律及び法規を遵守し、国家の秘密を守ること。
②申請するプロジェクトが国家の安全を害さず、国家の利益を損なわず、国家の外交政策及び締結されかつ発効している国際条約に違反しないこと。
③申請するプロジェクトが、重大な過失又は故意による行為により、公衆の健康、安全及び財産に対して、補償できない危害を生じさせることがないこと。
④国家の関連当局が発行する、申請されているプロジェクトに従事する関連許可文書を有すること。
⑤申請されているプロジェクトに従事する技術力、経済力及び完全な技術資料を有すること。
⑥法律、法規及び規則が規定するその他の条件

また、本法に違反する行為などがあった場合、国防科工委は是正を命じ、状況によっては許可が取り消されます(16条)。

保険制度

許可証の保有者は、宇宙に打ち上げる物体に関する第三者責任保険、その他の関連する保険に加入しなければなりません(19条)。保険加入が必要とされている点も、他国の宇宙活動法と共通しています。

法律責任

本法では、許可証保有者が虚偽の申告によって許可を得たり、無許可でプロジェクトを実施したといった場合への制裁が規定されています、(24〜26条)。
しかし、他国にあるような形での「第三者に対する損害賠償ルール」は規定されていません。例えば、ロケットの打上げに失敗し、地上で損害が発生した場合の処理や、軌道上で人工衛星同士が衝突した場合の処理について規定されていない点が特徴的です。

参考:
・民生用宇宙飛行打上げプロジェクト許可証管理暫定弁法
https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/china/20021221.pdf

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