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3分でわかる宇宙交通管理

ドラゴンとISS

ゲームみたいなタイトルになってしまいましたが、今月3日、SpaceXのドラゴン宇宙船がISSとのドッキングに成功しました。
ドラゴン宇宙船は、6000kgの物資を輸送できる有人宇宙船です。今回は180kgの物資と、SpaceXの宇宙服を着たマネキン(リプリー)が搭乗しています。
宇宙活動がますます活発となる中、人工衛星や宇宙船が多く打ち上げられれば、それだけ軌道上に多くのモノが滞留し、衝突の危険や、電波による障害が発生してしまいます。どこかのタイミングで誰かが掃除なり整理整頓をしなければ、今後の人類の宇宙活動に支障を来しかねません。
今回は、これを解決するための方策である宇宙交通管理(Space Traffic Management:STM)を取り上げます。議論はまだ未成熟ですが、「このような問題もあるんだ」という程度に関心を持っていただければ幸いです。

宇宙の交通整理

宇宙交通管理とは、「物理的、電波的障害を受けることなく、安全に宇宙空間へアクセスし、運用し、及び地上へ帰還するための技術的及び規制的取決め」をいいます(出典:米国の宇宙交通管理(STM)を巡る動向    竹内悠)。つまり、安全に宇宙に行って帰ってくるための取り決めであり、軌道上に多くの宇宙船やデブリが滞留している状態では衝突や電波的障害によるリスクがあるため何とかしましょう、という方策です。スペースデブリに関する問題意識と共通しますが、スペースデブリに関しては、IADCスペースデブリ低減ガイドライン、国連スペースデブリ低減ガイドラインが作成されています。作成経緯についてはドラマがありますので以下の記事もご参照ください。

統一的なルール整備は今後の課題ですが、現在は打上げ時の衝突回避解析、運用時の衝突回避運用、打上げの許認可、衛星の運用許認可等を通じて部分的に実現されている状態です。

地球上の交通管理との違いによる課題

地球上の交通管理と、宇宙空間の交通管理は事情が違います。
例えば、宇宙空間は誰のものでもなく、領土や領海、領空といった領域で仕切るような管轄権は想定されません。また、地球上では自動車や船舶、航空機は登録をしなければ使えませんが、ロケットや衛星などの宇宙物体も登録によって誰の(どの国の)モノかが示されます。しかし、登録をしなかったとしても法的な制裁はありません。
そのため、そもそも宇宙交通管理に対する国家や運用者のインセンティブが高まりにくいという課題があります。

民間への移管(CSTM)

そんな中、アメリカでは、民間の宇宙交通管理(Civil Space Traffic Management:CSTM)は民間が担うべきではないかという議論が沸き起こりました。国防省の業務の一つとして宇宙状況監視(Space Situational Awareness:SSA)がありますが、これを民間にどう移管するかという問題提起がなされたのです。
現在は、これに加えて商業宇宙活動に関する主務官庁(商務省)や軌道上活動の安全性確保手段も含めて、広く宇宙交通管理の問題として考えられています。

まとめ

宇宙ビジネスの前提として、そのインフラ整備が必要です。より宇宙が身近になり、有人宇宙飛行が活発化するなどすれば、宇宙空間での事故に対する社会の見方はよりシビアになっていくものと思われます。その時代(もう到来している?)に備えた今後の議論の展開に注目しましょう。

参考・出典:
・COSMIC STUDY ON SPACE TRAFFIC MANAGEMENT    IAA
・宇宙政策委員会宇宙安全保障部会説明資料 米国の宇宙交通管理(STM)を巡る動向    竹内悠
・Space Traffic Management (STM): Balancing Safety, Innovation, and Growth A Framework for a Comprehensive Space Traffic Management System AIAA



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