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【stand.fm音声配信“上海生活のリアル”】ゲーム産業は今後どうなるのか?

2021年8月11日から14日にわたって、R(アール)が寺子屋LIVEで音声配信をした「ゲーム産業と今後」について、文字起こししたノートをシェアいたします。

箇条書きで読みにくいところもあると思いますが、ご了承いただければと思います。また、ご意見ご感想及びスキをいただけると励みになります!

文字は基本的に情報収集したものをベースにしています。stand.fmの寺子屋LIVEではR(アール)の実体験や日本のゲームの歴史(任天堂ゲームウォッチから)、以下のノート以外の情報もお話ししております。ご興味ある方は、音声配信もお楽しみください。

*今回の文字起こしに際しては、21年8月3日/4日の日本経済新聞の記事、21年7月17日のホフポスト日本版を主として採用させていただいております。ご理解をいただければと思います。

第1話:ゲーム業界の背景と現状


1. 背景
・中国政府はかつてゲームを「麻薬的依存性」として問題視し、ゲーム機の製造や輸入を禁じていた。ゲーム専用機が育たず、その代わりにパソコンやスマートフォン向けのゲーム開発が盛んになった経緯がある。
・IT大手テンセントの「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」など、大ヒットタイトルが生まれて、熱気も高まっている。
・中国政府の教育部(文部科学省に相当)は2016年9月、e-sports関連の専攻科目を普通大学に新設。2021年の夏に初の卒業生が誕生する。
・このうち、中国伝媒大学では20人が卒業予定。国営放送・CCTVによると、すでに多くの学生がゲーム開発などを担う会社から内定を得ているという。
・中国伝媒大学の陳京煒(ちん・きょうい)副院長はCCTVの取材に「ゲームで遊んでいる専攻と思われがちですが、そうではありません。概論やゲーム製作などについて学んでいます。業界全体の景気が良いため、就職の機会も多いのです」と話す。

2. 政府が介入したeスポーツ先進国
・2021年(今年)の夏には、大学に新設された「e-sports専攻」では初となる卒業生が誕生し、50万人規模の人材不足に悩む業界からは引く手数多だという。
・「e-sports」はゲームの腕前を競うもので、格闘ゲームや、「MOBA」と呼ばれるチーム同士で相手の拠点を攻撃し合うものなど裾野は広い。賞金総額が億単位にのぼることもあり、日本でも都道府県対抗大会が開かれるなど盛んになってきている。
・中国ではe-sports関連で36の職種があるとされ、大会の実況・解説のほかe-sportsチームの運営マネジメントやコーチなど多岐にわたる。CCTVなど現地メディアは、中国にはe-sports関連企業はおよそ1万8000社あり、2020年時点で人材が50万人ほど足りていないと指摘している。
・市場が急速に成長していることが背景にあり、2022年で市場規模は1800億元(3兆600億円)にのぼるとみられる。

第2話:eSports産業について

3.eSportsの産業発展
・中国のeスポーツはすでに十数年の歴史がある。2000年代に「ウォークラフト」ゲームシリーズが流行し、2005年にeスポーツの世界大会「ワールドサイバーゲームズ」で中国選手が優勝したことで、eスポーツは国民的なものになった。
・当時、中国の若者が多く集まる大学寮では昼夜問わずeスポーツを楽しむ大学生であふれていた。大学生たちによる人気が中国eスポーツにおける強固な基盤となり、中国国内でeスポーツ最初のビジネス「eスポーツカフェ」も誕生した。
・2020年初頭(執筆時:2020年2月)である現在、中国では様々な産業と協業することで新しいビジネスが生み出され、多様化が進んでいる。
・今回はオンライン配信業と不動産業での具体例を紹介する。
・まずオンライン配信業との協業である。中国ではeスポーツ観戦人口が多いことから、「Douyu」などのオンライン配信・観戦プラットフォームが発展した。プレーの実況から始まり、事業内容や視聴者数などの規模を広げてきた。2020年2月時点では各プラットフォームがプロチームや選手と契約することで、eスポーツコミュニティーとしての地位を確立している。2019年12月には中国オンライン配信プラットフォームの「bilibili」が2020~2022年の中国内での世界大会の独占配信権を120億円で獲得した。今後は多数のスポンサーや協力会社との協業によるビジネスが見込まれる。
・次に不動産業に目を向けると、中国政府の支援のもと、各地でeスポーツ特区ができている。例えば杭州政府がeスポーツ産業優遇策を打ち出し、杭州のeスポーツ特区にeスポーツ専用スタジアムを建設したほか、ホテルやeスポーツ教育施設などの企業を誘致した。中国の地方の産業改革や商業不動産関連のビジネスに好影響を与えたといわれている。
・直接の経済効果だけではない。eスポーツ特区を中心に周辺の不動産価値が上昇し、土地取引に伴う政府の収入が増えたことによる貢献も見られた。このように中国では、政府の支援で様々な産業によるeスポーツ市場への参入障壁が緩和されている。特に資金的に余裕のある不動産企業が参入したことで、エコシステム(生態系)が構築された。
・今後もeスポーツ関連企業と様々な産業のコラボレーションが促進され、先進的な事例が出てくることが予想される。

4. eSportsとは?
中国で人気のe-Sportsは?
・中国の人気のスポーツタイトルの代表的なのは,Riot GamesのLeague of Legends(リーグ・オブ・レジェンド,略称:LoL)」です。中国の新聞,China Dailyによると,2017年時点でLeague of Legendsプロリーグのライブ配信は70億回視聴され,合計視聴時間は18億時間にのぼっていました。
・Tencentのモバイル向けMOBAである王者栄耀も人気のタイトルです。王者栄耀は,2017年には中国の1億2000万人のプレイヤーを魅了し,19億ドルもの収益を生み出し, King Pro League(KPL)と呼ばれるe-Sportsトーナメントを開始しています。2018年のスプリングシーズンのコンテンツは40億回視聴され,前年比で42%も増加しました。
・中国で支持されているe-Sportsはこれらに留まりません。2017年末から配信された潜入系FPSのCrossfire(クロスファイア)は,ワールドチャンピオンシップが3750万人のユニークビューワーを動員し,前年比で50%の伸びを見せました。
・また,今や中国は世界中のe-Sportsチームの拠点となっています。Shanghai DragonsはOverwatch Leagueに参戦した初の中国のフランチャイズチームの一つであり,中国国内におけるOverwatchの運営元であるNeteaseがスポンサーとなっています。

中国のe-Sports視聴者の属性は?
・カナダ出身の実業家のCalvin Ayre氏のレポートによると,中国のe-Sportsの視聴者は80:20の男女構成比であることが分かっています。
・年齢層は驚くほど多岐にわたります。若年層が多くを占めるものの,e-Sportsファンの29%は子育て世代であり,そのうちの59%が31~40歳の年齢層に属しています。
・また,こうした視聴者はe-Sportsにおけるリテラシーが高いことも分かっています。また,e-Sports視聴者の36%が過去2年以内に視聴を始めたと回答しています。
・現在,世界一のe-Sports視聴者数を抱える中国ですが,今後もその数は増加の一途をたどり,さらなる成長を続けていく可能性が非常に高いことが見込まれています。

中国の視聴者はe-Sportsをどのように視聴しているか?

中国最大のe-Sportsトーナメントの一つとして成長を続けるKPL

・欧米諸国では,Twitchが動画ストリーミングのプラットフォームとして広く支持されています。しかしながら,中国においては,中国独自のストリーミングプラットフォームが市場を独占しています。
・中国のe-Sports市場で首位を占めるストリーミングプラットフォームは,Huya,Panda.TV,Doyou TVなどです。例えばHuyaはKing Pro League(KPL)の配信独占権を持っており,DoyouはInvictus Gamingのようなローカルの主力e-Sportsチームと独占的パートナーシップを組んでいます。
・中国のe-Sportsの視聴理由に注目すると興味深い事実が浮かび上がってきます。Tencentの調査によると,自分のゲームプレイの改善を目的としてプロのe-Sportsを観戦するプレイヤーは47%いますが,その残りの多くは娯楽目的で視聴していたのです。
・e-Sportsを流すプラットフォームは,今後,広告を流す媒体としても外せないものとなるでしょう。これほど多くの人が,積極的に視聴する動画プラットフォームはそれほど多くは存在しないため,広告主にとっては魅力的な媒体なのです。

中国におけるe-Sportsの賞金プールの規模は?
・中国は莫大なe-Sportsの賞金プールを抱えています。e-Sportsearnings.comによると,e-Sports史上最大規模の賞金プールを誇るe-Sportsイベントのうち3つは中国で開催されていました。
・少し古いデータになってしまいますが,2016年と2017年に開催されたLoLのファイナルチャンピオンシップや,2015年のDota2 Asian Championship (DAC)の賞金総額は1300万ドルでした。グローバルな規模ではまだ大きな金額とはいえないものの,中国の賞金プールの総額は,ヨーロッパの各イベントよりもはるかに大きいです。
・世界のe-Sportsイベントで誰がが賞金を獲得しているかを知ることで,中国がグローバルのe-Sports経済全体に及ぼしている影響をおのずと理解することができます。たとえば,2018年のe-Sportsで獲得した賞金のランキングのTo10の中に,中国のプレイヤーが4人もランクインしていました。
・中国国内の大会では,Newbee,LGD,Vici Gaming,Invictus Gamingなどの中国に拠点を置くトップグローバルe-Sportsチームが,賞金の多くを獲得しており,中国のe-Sportsシーンをさらに盛り上げています。

中国トップクラスのe-SportsチームNewbee

5. 日本でも存在感の中国製ゲーム
・米調査会社センサータワーによると、日本のモバイルゲームの市場規模は2021年1~6月に約97億ドル(約1兆700億円)だった。17年1~6月と比べ63%拡大したが、けん引役を務めたのがこの4年間で成長した中国製だった。
・タイトル別では、21年はトップ10に中国製が3つ入った。最上位は網易(ネットイース)のバトルシューティングゲーム「荒野行動―スマホ版バトロワ」の7位。ロールプレイングゲームの「原神」(9位)と「放置少女~百花繚乱の萌姫たち」(10位)が続いた。
・17年のトップ10では中国製はゼロだった。上位100タイトルを見ると、17年に8つだった中国製は21年1〜6月では22まで増えた。
・世界のゲーム市場では騰訊控股(テンセント)など中国勢の台頭が著しいが、強豪がひしめき参入が難しかった日本市場にもついに押し寄せてきた。
・日本市場で伸びている中国3社は、いずれも日本のゲーム産業やサブカルチャーの集積・基盤を利用している。中国3社は以下の通り。
①網易(ネットイース):
20年6月、東京・渋谷にゲーム開発拠点「桜花スタジオ」を開設し、日本のクリエーターを積極的に引き抜いている。
② 上海米哈游影鉄科技(miHoYo):
原神は理工系の名門・上海交通大学の卒業生で、オタク文化を愛する3人が12年に設立した上海米哈游影鉄科技(miHoYo)が手がける。日本アニメ風のイケメン・美少女キャラが活躍するストーリーで、JR線の車内広告などで日本での知名度を高めている。
③北京有愛互娯科技(C4Games):
開発した放置少女~百花繚乱の萌姫たちでは、三国志の武将がアニメ風の美少女キャラとなって登場。同社は日本でテレビCMを打っているほか、5月には国際化の加速を狙って動画投稿アプリ「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の傘下に入った。
・「中国勢の日本でのシェア拡大は、この4年間に現地化の投資や日本の専門家のスカウトなどの努力を続けた成果だ」。センサータワーのナン・ルー・アジア太平洋担当アナリストはこう指摘する。

第3話:中国政府と規制と対応する企業

5. 中国政府がゲーム規制に乗り出した
・中国国営の新華社系列の経済紙「経済参考報」が21年8月3日、「精神的アヘンが数千億元規模の産業に成長」との表題の記事を掲載した。
・記事は騰訊控股(テンセント)の大ヒットゲーム「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」を1日8時間遊ぶ学生などを紹介。「ゲームの危険性は社会の共通認識であり、精神アヘンや電子ドラッグと呼ばれている」と強く批判した。
・この記事のネット版はすでに削除されたという。経済参考報のサイトでは閲覧できる。削除後、下げ幅は縮小した。

6. 金融市場の反応
・この報道を受けて、3日の香港市場では、ゲーム関連株が急落した。テンセントの株価下落率は一時10%を超える場面があった。
・香港上場のハイテク関連銘柄で構成する「ハンセンテック指数」も一時3%超下落した。
・ゲームの網易(ネットイース)や、動画配信のBilibili(ビリビリ)も急落した。テンセントは売上高の32%、網易は同74%をゲーム関連事業が占める。


7. 騰訊控股(テンセント)やゲームグループSNSの対応
・これを受けてテンセントは3日、小学生によるゲーム利用の全面禁止について業界で議論することを提唱すると発表した。これまで実施してきた子供の利用時間制限も一段と強化する。
・テンセントは先回りして自主規制を敷き、当局が厳しい締め付けに乗り出すことを避ける狙いがある。
・テンセントは「関係当局から業界全体が率先して未成年を保護し、社会的責任を果たすよう期待と要求が寄せられた」と説明する。
・テンセントは未成年者の1日の利用時間制限を平日で従来の1時間半から1時間に、休日で3時間から2時間に強化するほか、12歳未満の課金を禁止するといった方策も順次実施するという。
・グループのSNS(交流サイト)上でゲーム利用に関する新施策を打ち出した。「業界でゲーム依存症対策を強化する」とした上で「小学生によるゲーム参加を全面禁止することの実現可能性について業界全体で議論することを提唱する」と示した。

8. 21年8月4日中国共産党機関紙「人民日報」
・インターネットの危険性から未成年者を一層保護すべきだという論説記事を掲載した
・未成年者をインターネットから保護する目的で策定された法律を称賛、オンラインゲームやオンライン番組の中には低俗的なものや暴力的なものがあり、未成年者の精神的、身体的な健康を脅かすというコメント
・突然やり玉に

参考資料;
e-sports人材、50万人足りません。市場規模3兆円越え、「e-sports専攻」初の卒業生は就活市場で大人気 中国:ハフポスト日本版
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60f23be1e4b01f1189598dfb

【グローバル市場から見るe-Sports最新動向】世界最大級のe-Sports大国,中国の現状
https://jp.gamesindustry.biz/article/1909/19091801/

世界のeスポーツ市場(3):中国 KPMG
https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2020/05/esports-china-market.html

中国におけるeスポーツ
https://www.pinnacle.com/ja/esports-hub/betting-articles/educational/esports-in-china/xzu2cyvju2a52e4h

“精神鸦片”竟长成数千亿产业:経済参考報道
http://dz.jjckb.cn/www/pages/webpage2009/html/2021-08/03/node_5.htm

中国、教育産業に続き、ゲーム産業も批判。関連株が急落。:Newpicks Podcast
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/newspicks-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%BC/id1567108964?i=1000531029282

「精神的アヘン」中国国営紙がオンラインゲームを批判。ゲーム関連株が一時急落後、記事削除:ハフポスト日本版
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6108ec43e4b039aafa0ea684

中国ハイテク株再び下落、ゲームは「アヘン」中国紙批判:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB024UH0S1A800C2000000/

小学生ゲーム禁止、議論:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74469780T00C21A8ENG000/

モバイルゲーム、中国製がけん引:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74471670T00C21A8FFJ000/

荒野行動
http://www.knivesout.jp/

原神
https://genshin.mihoyo.com/m/ja

「放置少女~百花繚乱の萌姫たち」
http://hcsj.c4connect.co.jp/

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