#11メルティラヴァー


放り込んだ薬みたいに。
珈琲に溶け込む砂糖みたいに。
掌に触れた雪みたいに。

甘く深くあんなに交わったのに離れていく。
恋も愛も融解していく。

遅かれ早かれこうなる日がくることはわかっていた。

最初は妄想話をしていると勘違いされた。至極当然の反応だ。

「なんかの小説の話?読書なんてするっけ?」
そんな言葉が返ってきた。

確かな傷みが胸に去来する。
私は嘘に嘘を重ね続けた。
物語を演じ続けてきた。

サヨナラ。来夢。
サヨナラ、私の恋。
たったひとつの恋愛。
世界に一人だけの特別で大切な人。

青天の霹靂でしかなかった。
楽しかった。愛しかった。苦しかった。
切なかった。
きっと一生分、心臓は働いてくれた。

もう休もう。自分勝手なのはわかってる。
私は世界で一番、狡猾な咎人だ。
何をしても許されない。

ごめん。ごめんね。

ごめんなさい。

大量の錠剤。睡眠薬。
注射器には液状の睡眠薬。
きっと死ねるはず。

ライムにどう伝わったかだろうか。
真実は歪曲することなく伝わったろうか?
珍しくライムは黙り込んでいた。

別れらしい別れの言葉も言わずに
自宅に戻った。

酩酊してもなお、睡眠薬で
満たしていく。

きっともうライムの笑顔を見れることは
ないだろう。
最後の最後までワガママな私でごめんね。

これまでありがとう。

死ねるよね?これで。
これが最後の日。

最期の日。

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