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【ブルーマウンテンMBA戦記-21】▶企業合併・買収③(2021/10/6)

~企業買収・合併講義と企業価値評価について色々~

MBAの買収合併講義…
最初のケースは、北越製紙vs王子製紙の敵対的TOB
次のケースは、ブルドックソースvsスティール・パートナーズ

 当時の新聞記事とか、関係書類を一気にガーッと読み込んでいきますが、買収って本当に検討事項が多岐にわたるのだなと感じます。
 実務担当としてM&Aの経験は無いのですが、経営企画室という部門にいる限りは、今後必ず触れる分野だと思いますので、引き続き全力で当たっていきたい。

 さて、北越製紙にしても、ブルドックソースの場合でも、TOB提示価格は当時の株価水準に対して3割程度のプレミアムがついていました。
「結局は、経営者の感情的なところで結論ありきで走ってるでしょう。」
という感も強いのですが、企業価値とは何ぞや?ということについて自分なりの答えを持っておくべきだと思うし、場面場面で企業価値についての議論がしっかりできるように広範な考え方や評価軸を使いこなせるようになっておかないといけないと思います。

 時価総額というのは、まず間違いなく企業の本当の姿を表すものではないわけですが、現実には時価総額がいくらだ、PERがいくらだなどという話はよく話題に上がります。PERについては、同業種における期待値の高低を図る意味で、会社としても投資家としても重要な指標であることに異論はないのですが、少なくとも当期純利益と比べて、今の株価水準が何倍だなどと、そんな曖昧なものに一喜一憂したくはないですね。

 とはいえ、上場企業において買収戦が行われる場合、その市場価格が基準になるわけで(マーケットアプローチ)、買収防衛のためにも、買収する側に立つ場合にも自社の株価が高い(市場から評価されている。)というのは非常に重要だというのは理解しています。

一方で、非上場企業買収においてはコストアプローチが一般的という認識。
■コストアプローチ①簿価純資産法
 簿価純資産法では、評価対象企業と、その企業が持つ事業の資産・負債を、帳簿に基づいて計算を行う方法。計算方法は、帳簿に記載されている資産の合計から、同じく記載されている負債を差し引いた額を企業価値としますが、この方法だと現在の市場価値が反映されていないので、帳簿上の数字の差し引きがその企業の現在の正しい価値を表しているとは言えないですよね。監査だとか会計基準上のこと、税法上のことはさておき、M&Aのような局面で「簿価がこうだからこれで売ってくれ。」などというのは土俵に乗らないだろうと思います。
(特に、私自身が保有試算の簿価と市場価格に大きな乖離のある業界にいるのでそういう感覚がなおのこと強い、というのはありますが。)

■コストアプローチ②時価純資産法
 上記①をベースとしながらも、資産・負債を時価に直したうえで、時価換算した資産合計から時価換算した負債合計をひいた額を算出します(つまり事実上の純資産)。手間はかかりますが、今現時点の企業の価値B/Sから評価するものであって、妥当性はあると納得できます。
 実際、持ち込まれてくるM&A案件も、この方法で評価されたものを基準にしながら、「P/Lの稼ぎ力の観点からEBITDAの~倍の評価。」を併記し、今の被買収企業の社長の金額目線が提示されてくる、というのが多いです。
こちらの手法がM&Aでは多く使用されます。

ファイナンスではおなじみですが、DCF法(将来のFCFをWACCで割り引く)や配当還元法(配当割引、定率成長モデル)はインカムアプローチという部類になりますが、これって実際に使いどころってあるのだろうか?というのがやはり正直なところです。


ファイナンスの基準で言うと
・企業価値=将来のFCFをWACCで割り引いた現在価値の総和
・株主価値=企業価値から負債の現在価値分をマイナスした額
となりますが・・・。
 例えば、被買収側の企業が恣意的に作った事業計画5年分だされて、それを資本コスト(それも多分に仮置きの話が多くなるはず。)で割り引いてNPV出したとして
「おう、妥当だ!」
・・・ってどう考えたって、なるはずないじゃないですか(笑)

 企業の内部の投資判断の局面で現在の複数の選択肢を比べる、ハードルレートについて検討をするというのは、ファイナンスでおなじみDCFだとかIRR、NPVというのは非常に有用だと思います。

 一方、やはり企業買収という局面では前述したとおり、経営者の感情面というのが多分に入ってくるわけで、「まあこの辺だろう」というある程度納得できそうな数字を基準にして詰めに行かないと話はまとまるはずないですよね。
  日本ではファイナンスの考え方が浸透していないとはよく言われることですが、DCF使って出した企業価値をもとにするよりは、ファイナンスの考え方からすると批判の多い回収期間法とかの方がやはり感覚的には現状は合うのだろうと思います。(単に簡単というだけでもありますが。)

 仮に、私のところに「お宅を買いたい」という買収話が来たら時価純資産+EDTDAマルチプルについて実績並べられて提示されるのが一番納得して社長に話しやすいかなと想像します。(つまり現状のよくあるパターン?)

 色々思うことを書いてみましたが、M&Aに関してはまだまだ実務感覚に乏しいので、これから実務でも積極的に案件取得して検討していきたいと思います!

【前回】▶経営戦略②
https://note.com/ryuheimatsumura/n/n62fab327596c

【次回】▶

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