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『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』の好きな話

ちょっとした本の紹介をしたいと思う。『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』という本だ。

この本は本とどのように関わってきたかを書いたものである。
一つ面白いお話があるので書いてみたい。

ウンベルト・エーコ氏はこんな話を以前に書いた。

ある世界において、川の底に沈んでいた箱を人々は引き上げてきた。 その箱の中には文章が書かれた紙が収められていた。
物語上の世界では一度文明が崩壊し、人々はそれを再生するべく、収められていた文章を用いることにした。
ちなみにその文章はその当時の流行歌を記したものであった。

つまり、その世界においては、以前の文明で人々の楽しみとして用いられていた歌が、文明崩壊時には再生のための重要な文書として用いられたのである。
(参考 『ウンベルト・エーコの文体練習』)

さて、私達がいる世界でこの話を読んで反応した方々が居た。
紀元前に存在した文明の文章を解読している学者たちである。彼らは、「私達がやっていることも、同じことではないか」と議論したそうだ。

要は、私達が何気なく投稿しているような文章も、現在の文明を形作っていた1つのパーツとして解釈されるかもしれない。
あるいは、古代文明について私達が解釈していることも、同じようなことかもしれないのである。


そんな話が好きなひとに、気楽に手にとってほしい本。


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