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夏の終わり、朝焼けの空

ここ2日、いつもより30分ばかり早起きしている。朝活に励むわけでもなくシンプルに仕事の都合なのだが、たった30分でもいつもと全然違う空が見られて面白い。

広がる薄い雲が朝焼けに赤く染まっている。思わず早起きの眠気も忘れてしまう美しさだ。こんなにも美しいのに、この美しい雲を『薄い雲』としか表現出来ないことを、この美しい色を『赤』としか表現出来ない自分の力のなさを歯痒く思う。清少納言ならこの空を見て何を書いただろう。松尾芭蕉はこの空を見てどんな五七五を産んだだろう。谷川俊太郎はこの空からどんな詩を編んだだろう。偉大な先人に思いを馳せる。それでも5時起きの朝にも美しいものを美しいと思えるだけでも素晴らしいことじゃないかと自分で自分を甘やかす。

昼間はまだまだ暑かったりもするけれど、朝夕の空気はもうすっかり秋になってきたなと思う。アパートのドアを開けて外に出た瞬間に頬を叩く秋の風に驚く。こうやって季節はうつり変わってゆくのだ。……何だか今日は自分から出てくる陳腐な文章表現に苛立つ日だな。『昼間はまだまだ暑かったりもするけれど、朝夕の空気はもうすっかり秋になってきたなと思う』だなんて、誰でも思う感性から出た誰でも書ける文章じゃないか。そんな文章を捏ねくり回して、今日もnoteをアップしましただなんてことを言ってドヤろうとしている。お前は一体何様のつもりなのだ。さっき甘やかしたばかりの自分に冷や水を浴びせる。飴と鞭が過ぎる。

散らかった文章も陳腐な言い回ししか出てこない鈍色の感性も、どれもこれも全部早起きのせいにしてしまおう。慌ててちょっと背伸びをして『鈍色』だなんて言葉を使うあざとさも早起きのせい。いっそとびきり平易な言葉を使って今朝の思いをまとめてしまうことにしよう。

『いつもより30分早く起きた空はいつもと違ってとても綺麗で、でもその美しさをいい感じに表現する言葉が出てこない自分に腹が立つやら悔しいやらだ。もうすぐ夏も終わりですね』

うん、これでいい。お仕事の皆さまもお休みの皆さまも、どうかよき一日をお過ごしください。

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