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かっこいい入門

非喫煙者だが、2、3年に1回くらいの頻度でタバコを吸いたくなる時がある。大抵それはかっこつけたくなった時だ。眉を少ししかめて物憂げにタバコを咥えてふぅっと煙を吐く。それはとてもかっこいいものだ。しかし、先日映画を見ていてこれに匹敵するかっこいいを見つけた。それは、

『ちょっと大きめのロックグラスで茶色い酒を飲む』

だ。ウイスキーか、バーボンか、ダークラムも悪くないだろう。少し手に余るくらいのシンプルなロックグラス。気取らず、いつもやっているように無造作にドボドボと酒を注いで、ぐっと呷ってはぁと息を吐く。1人でそれをやるのもかっこいいが、友人と酌み交わすのもまた最高にかっこいいものだ。「まだ飲むか?」「……ああ、もう1杯だけいただくことにしよう」言葉少なにそんなやり取りをするのも良い。行きつけのバーで顔なじみのマスターとそれをやるのもいいが、やはりこれは自室でやるのがよりかっこいいものだと思う。俺ももう40半ばになった。こういう大人なかっこよさに浸れるようになろう。背伸びをしてかっこつけてタバコをふかしたあの日のように、俺の中にロックグラスへの憧れがむくむくと湧き上がってきた。

持っていたロックグラスを割ってしまってから、我が家にはロックグラスはない。これを機に少しいいロックグラスを買おう。家でかっこよく茶色いお酒を飲めるようになろう!そう思って目星を付けて、仕事帰りに寄ったお店に置いてあったのは、5500円のロックグラスだった。5500円……さすがにそれは高すぎるよ……。しかし近場にロックグラスを売ってそうなところが他に思い当たらない。面倒がらずに新宿とかに行けば良かったと後悔した。少しいいロックグラスと言っても、1000円から1800円ぐらいのやつでいいんだよ。5500円まで行くとやりすぎなんだよ。複雑な乙女心だ。一応帰りに寄ってみた100均にもロックグラスは置いてなかったので、結局昨日はロックグラスを買えぬままとぼとぼと帰って、酒も飲まず、タバコも吸わず、かっこつけもせずに寝てしまった。

『いいロックグラスを買う』ミッションは今日に持ち越しになった。日曜だが昼間は予定が詰まっている。狙うは夕方。何とか手頃なお店を見つけて、手頃な値段でいい感じの、ちょっと大きめのロックグラスを手に入れたい。そしてダークラムをちびりとやるのだ。こういう、ちょっとした楽しみなミッションがあるというのはいい生きがいになるものですね。日曜日、行ってきます!

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