がまんして!

「がまんして!」この言葉を面白い場面で、ダウン症の我が息子はよく使った。例えば、こんな時である。パソコンゲームが大好きな彼は、眼を赤くしながら3時間近く画面に熱中している。母親が、「もうそろそろ、止めなさいよ」と言うと、この言葉、「がまんして!」が発せられるのである。思わず口元が緩む。

子供がデーパートの玩具売り場で、おねだりをしている。その時、「今日は、がまんしなさい」と親は言う。この場面には、あまり違和感はおぼえない。意味としては、子供(相手)の欲求を止めている言葉である。そう考えると、彼の場合も、母親の欲していることに対して発している言葉であるから、同じようなことである。そう考えれば、あまりおかしくはない。

大学時代、渡辺昇一氏の本をよく読んでいた。生き方についての本が多かった。その中に、他人の考え方、行動を変えることは極めて難しい、「何であの人は、こんな考えをするのだろう」と怒り、ましてそれを直させようなど全く無理な話。間違えなく変えられるのは自分の考え方、行動だけであるというくだりがあった。

さて、息子のこと。彼に、私は一度たりとも、「お父さん、これはおかしいよ」と言われたことはない。人の考え方、行動を変えさせようなど思ってもいないだろう。私と遊びに行く約束した日に、仕事が入り、変更する場合でも、「来週のこの日に行こう」と言えば、寛容なご対応をくださる。ただ、あまりにも自分の考えを変えないのは問題かも知れない。しかし、これも、ダウン症の特徴であるようなので、問題はないと言えるだろう。


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