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コンビニ、で笑顔を見せるということ


コンビニオーナーぎりぎり日記

著者:仁科 充乃
30代でフランチャイズオーナーとなり、以降30年間にわたってコンビニの最前線で奮闘する著者による、怒りと悲哀と笑いの記録。「〜昨晩10時からワンオペ勤務、夫が来たら交替します〜」・・・・休日が取れなくなって、今日で1000日を超えた。




序文


今回書店でふと見かけてジャケ買い。

シリーズ化されている書籍で、様々な職業に就かれているその道のプロが、仕事にまつわる酸いも甘いもを教えてくれる書籍となっている。


就活生がその腹の内を探ろうと、あくせくインターンやOB訪問したりして得る情報をなんと1500円で売っている。
情報のたたき売り、もはや漏洩。

だがしかし、読者からするとなんともありがたやパタヤ。


そんな大人気シリーズのコンビニオーナー編。

弊社もこの作中でいうファミリーハート(もはや隠す気がない)をフランチャイズで4店舗運営している。
運営しているとはいえ、現場の苦悩を100%理解するのは難しい。

ただ一つ言えることは、どこの店長も死ぬほど忙しい、ということだ。


日々の棚入れ、接客、レイアウト、毎日の発注業務、フランチャイザーやオーナーとの折衝。
そして雇用とマネージング。
これをファミリー経営のコンビニは大抵ワンオペで管理している。

あなたの街のスーパーマンである。


本書で描かれているのは、そんなファミリー経営の日々の苦しみや楽しさ。
コンビニならではの話が盛りだくさんで、あっとゆう間に読み進めることができる。


コンビニのクリスマス事情


クリスマスは聖夜の稼ぎ時である。
トイザらスキッズもバーレルチキンもコスプレお父さんも、巷は聖夜の戦いで溢れている。

それはコンビニも同様だ。
オーナーはケーキやその他諸々のクリスマス商材を予測発注し、在庫処分とならぬよう売り切る為に死闘を繰り広げている。


そんな中でも注力しなければならないことがある。
シフト調整だ。


コンビニの労働力は若い世代(大学生やフリーター)が支えている。
クリスマスの主役ともいえる彼らに働いてもらわなければならない。

それだけでも苦労をしているのに、クリスマスのシフトはさらなる悩みの種を抱えている。


クリスマスは男女のペアで仕事をさせない。


これは店舗に寄るのだろうが、作中ではペアを見て気分を害し悪態をつく男性客が多く困ったというエピソードが綴られていた。
リア充爆発しろ!とでもいった感情なのだろう。
なんとも情けない。

しかし、一年で最も孤独を感じる日との形容には頷かざるをえない。

こんなことまでにも気を遣うコンビニ。彼らはホスピタリティの鬼なのだ。


ギリギリで回すシフト


左記に述べたように、コンビニは若い世代の労働力が必要不可欠。
その多くは独り立ちを始めた大学生だ。


大体年明け頃から大学入学を見据えて面接希望が増えてくる。
非常に有難いことだ。

しかし、彼らは大学生。4年経てば必ず居なくなる。
ここが非常に難しいところなのだ。


社会人経験ゼロの学生を手塩に育て、やっと一人でオペレーションを回せるようになったと思ったら新たな新天地へと旅立っていく。

これこそ中小企業も抱えている渡り鳥現象(私が勝手に呼んでいる)。
我々はそこを見据えた上で常に雇用問題と闘っているのだ。


今注目を集めているパートマッチングアプリ。
次世代型の雇用ツールだ。

今やビジネスも恋人も人材も、なんでもマッチングの時代。
これを活用するよう本部からもお達しが来るのである。

だが、何かしらのマッチングアプリを利用したことがある方ならわかるだろう。

マッチングの難しさを。


時間を費やしマッチングし条件面をすり合わせ、いざ会おうとしたら相手が来ない。
若しくは、来たところで内容が異なっていたり、望んだスペックを発揮できていない。
これがマッチングの難しさである。


今の時代、いい出会いとは非常に貴重で、そこには多くの対価を支払わなければならないのだ。
コンビニオーナーにそんな時間はない。


フランチャイズの闇


経営管理で最も根幹ともいうべき売上管理。
利益をいかに残すか、ここに叡智を集め経営者は日々奮闘している。

コンビニはフランチャイズ経営。
当然のことながら売り上げの一部をフランチャイザーである本部に納めなければならない。
ここにコンビニ経営の難しさが存在している。


本部への上納金はある一定の率で定められている。
その率を基に、上納金を収めた残りで店舗利益としてオーナーの手元に残るわけだが、これが売上に対してだけでなく、店舗に入ってくるすべての商品にかかる。


つまり、廃棄商材にもかかるのだ。


単純に売上の50%とするならば店舗も本部もウィンウィンとなるのだが、廃棄商材、つまり売れ残ってしまった商品の原価に対してもかかってくる。

すると、オーナーは売れ残りの原価分赤字であるのに、さらにそこへ売残り原価の50%分の上納金が発生し赤字幅を大きくしてしまうことになる。


これがコンビニ経営の儲からないと言われている部分。
フランチャイズ経営は他人のふんどしで始められる分スタートの敷居は低いが、そう簡単ではないということだ。

そしてコンビニ各社がそうだと思うが、本部はとにかく欠品を嫌う。
機会ロスをどのように減らすかを常に追い求めた形が、今の「何でもそろうコンビニ」を実現させた。
消費者としては非常にありがたいが、オーナーとしては地獄だ。

売残りのリスクを解消する為、何が起こるか。


値下げを行いとにかく在庫を吐き出す特売セール。
現在は特段問題なくオーナーの一存で行えるようになったが、過去は禁止されていた。
理解が得られて本当に良かったと思う。
(禁止されていた時代、社員がクリスマスケーキやおせちを買い取り持ち帰る姿をあちこちで見かけた。)


ドミナント経営


皆さんはコンビニの立地を不思議に思ったことはないだろうか。

都会では100m先に同じコンビニを見つけるなんてのはよくある光景だ。
オーナーがビッグダディで、一族展開しているというわけではない。


これはドミナント経営と呼ばれるコンビニ企業の戦略の一つである。


ドミナント=支配的であることからわかるように、これには売れ行きの良い地域への競合他社出展を抑制する意図がある。
その他にも、店舗を固めることでの宣伝効果や物流網の集約といったメリットも生じる。

とにかく本部として効率、競争に打ち勝つための戦略なのだ。

しかし、先ほど述べたようにそこには各々違うオーナーが経営する店舗が集められている。
そう、オーナーにとっては競合が集められているだけなのだ。
まるで蟲毒の壺だ。


実際、このドミナント経営によって潰れるコンビニが多くある。
これも、フランチャイザーとオーナーの間に横たわる大きな溝と言えるだろう。


跋文


巻末にコンビニ経営をして良かったことは?という質問に作者は考え込んでしまったという。
執筆されていたのがコロナ渦ということもあり、毎日シフトの調整を行っていたそうだ。

やはり、経営者にとって人材という問題は一番頭を悩ませる。


しかし、適度に体を動かし、頭をフル回転させながら、笑顔でいるということは、健康でいられる秘訣だと綴っていた。

作中、コンビニ経営を初めて一番心を痛めたのがお客様から挨拶やコミュニケーションが取れないことと語っていた筆者が、笑顔でいることというのに非常にサービス業のありがたみを感じた。


色々な苦労話にフォーカスしましたが、この本には多くの笑い話や大切にすべきことが書かれています。
是非手に取ってご覧ください。




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