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京都書院アーツコレクションの工藤早弓「明治・大正 詩集の装幀」を読んで近代詩の歴史を振り返る

写真は、工藤早弓「明治・大正 詩集の装幀」(1997年)という文庫サイズの本。

40代以上は記憶があると思うけれど、「京都書院アーツコレクション」というシリーズがあって、新刊書店に並んでいた。

京都書院は老舗の美術書出版会社だったけれど、出版不況の影響で1999年に倒産。でも、出版物は宮帯出版社が窓口となり販売を続けている。

京都書院アーツコレクションは何冊か持っているけれど、一番お気に入れはこれ。

内容は、写真9割、文章1割だけれど、近代詩の幕開けから現代詩に引き継がれるところまでの歴史を概観することがてきる。

明治15年に発行された「新体詩抄」による、西洋の詩の概念を取り入れた「新体詩」の誕生。

新体詩の代表作家として、群馬県安中市出身の湯浅半月「十二の石塚」「半月集」の装幀と詩が紹介されている。

明治30年代に入ると浪漫主義が勃興。与謝野晶子・鉄幹夫妻の雑誌「明星」を母体に石川啄木、木下杢太郎、岩野泡鳴らが、投稿雑誌「文学」を母体に河合酔名らが活躍。

明治30年後半には象徴主義が勃興。上田敏がマラルメ、ボードレールらフランス象徴詩を翻訳し紹介したのがきっかけ。薄田泣菫、蒲原有明、北原白秋、三木露風、日夏耿之介、西城八十、永井荷風、堀口大学らが活躍。
本書には、安中市出身の大手拓次の装幀が載っていないのが残念。。。

中でも「パンの会」を結成した北原白秋は、詩壇の最重要人物になっていく。

口語自由詩は、明治末から自然主義の川路柳紅らが試みていたが、高村光太郎の「道程」(大正3年)で確立。

さらに、萩原朔太郎の「月に吠える」によって、口語自由詩が完成される。
著者工藤早弓さんの言葉を借りれば、「詩史の上からも詩集装幀上からも、「月に吠える」は一つのエポックだった」。

大正末にはヨーロッパのダダイズムや未来派の影響を受けた高橋新吉、村上知義らが活躍。
中でも前橋出身の萩原恭次郎の「死刑宣告」のインパクトある装幀は目を引く。

……といった具合に、美しい装幀を眺めながら、日本近代詩の勉強ができてしまう、とても優れた本。



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