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ユーロと同等?アフリカ最強の通貨があることを知っていますか

世界で「強い」通貨と言えば何を思い浮かべるでしょうか。まずUSドル、次にEUのユーロ、そして日本円や人民元と言ったところを挙げる方が大半ではないかと思います。これは世界での流通量、通貨としての信頼性という観点で見る限りその通りだと思います。

しかしアフリカの、それも日本人にはほとんど馴染みのない西アフリカにある意味これらと遜色ないほど安定している通貨があることをご存知でしょうか。今回はそんなフランス語圏の西アフリカ諸国で使われる史上初(?)の国際統一通貨・CFAフランをご紹介します。

あまり通貨や経済の小難しい話には突っ込まずご紹介するので、是非お付き合い下さい。

目次:
1:西アフリカって?
2:それでCFAフランって?
3:それでCFAは何が凄いの?
4:おわりに

1:西アフリカって?

本稿のヘッダーにある都市の夜景画像ですが、これ、アフリカはコートジボワールの経済首都・アビジャンの夜景です。今回ご紹介する旧フランス植民地の西アフリカ諸国(以降、「西アフリカ」という時はこれら仏語圏の西アフリカ地域を指します)は日本からのアクセスも非常に悪いため、日本の方々にはイメージし辛い地域かと思います。

その為何となく「アフリカ」で一括りにしがちですが、この西アフリカ地域は欧州から飛行機で6-7時間とアクセスが近いこともあり、欧州資本は数多く入っており、恐らく皆さんのイメージするよりも近代化されている国が多くあります。政治的にも安定している国が多く、欧州、特に旧宗主国であったフランスからすると、日本にとってのタイやインドネシアくらいの身近さで活発にビジネスが行われています。

我々から遠くて想像し辛い場所で着々と発展し続ける西アフリカ。そこで西アフリカの国々が集まって作ったのがCFAフランです。

2:それでCFAフランって?

CFAフランはセーファーフランと読みます。レートはだいたい1CFA = 5円くらいで、以下の国々で共通通貨として使われています。

西アフリカ諸国中央銀行のCFAを使う国々:

ギニアビサウ、コートジボワール、セネガル、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、マリ

中部アフリカ諸国銀行のCFAを使う国々:
ガボン、カメルーン、コンゴ共和国、赤道ギニア、中央アフリカ、チャド

(出典:http://www.thelondonglobalist.org/an-outdated-currency-for-an-emerging-continent-time-to-reform-the-cfa-franc/)

ややこしいのはCFAの発行主体である中央銀行が2つあることです。互いのCFAはデザインも異なり、一方のCFAをもう一方のCFA圏の国で使うことは出来ません。但し通貨コードや通貨としての設計はほとんど同じなので、あまり難しく考えず、基本的にはどちらも同じCFAと思って貰って構いません(変なの)。

3:それでCFAは何が凄いの?

(a)世界初(?)の国際統一通貨である

統一通貨というと真っ先に思い浮かぶのがEUのユーロですね。1999年に導入され、未だに苦難が尽きないもののドルと並ぶ世界の主要通貨です。しかし歴史性という意味で言うと、この西アフリカのCFAは何と1945年に導入され、未だに運用されているのです。

ユーロが導入される際、国力も異なる欧州の国々で同じ通貨を使うなんて不可能だなんて議論が根強くありましたが、フランスは頑なに(現在に至るまで)ユーロ推進派です。その裏側には、既に1945年の宗主国時代に西アフリカでCFAを導入し、70年間積み上げてきた実績があるからなんですね。

CFAはユーロより遥かに早く世界に登場し、未だに安定して運用されている世界初の統一通貨なのです。

(b)ユーロと為替レートが固定されている

これ、めちゃくちゃ大ごとです。CFAは常に1ユーロ = 656CFAの固定レートで換金出来ます。ややこしい話は省きますが、要はどれだけCFA圏の西アフリカ諸国の経済がズタボロになっても、CFAは紙くずにならず、それまでと同じレートでユーロに交換出来るのです。

例えばジンバブエは経済がボロボロで天文学的な数字の紙幣が発行されたりしました。仮に日本があんな状況になると、例えば昨日は100円出せば1ドルと交換出来て1ドル相当の物が買えていたのに、今日は200円出してようやく1ドルと交換して貰える、なんてことになる訳です。しかしCFAの国々では仮にあんな経済状況になっても、いつもと同じレートで手持ちのCFAをユーロと交換出来るのです。

日本円を始め大半の通貨はその国の経済の強さで為替が上下しますが、CFAは西アフリカの経済がどう動こうと常にユーロの隣にいます。ある意味ユーロと横並びで最強の座に座っている通貨が、西アフリカにはあるのです。

(c)フランス政府がCFAの安定性を保証している

上記(b)の話を聞くと、「そんな紙くずになるかもしれない通貨をユーロの価値で保証しちゃっていいの?」と不安に思う方もいるかもしれません。

でも大丈夫なんです。なぜならフランス政府、正確には財務省がCFAの安定性や、他のEU諸国にはCFAのせいでユーロやEU経済に迷惑を掛けることがない(何かあればフランスが尻を拭く)ことを保証しているんです。

ユーロが1999年に導入される前、CFAはユーロではなく旧宗主国たるフランスの通貨・フランと固定されていました。フランスとしてはこの西アフリカ経済圏を手放したくないので、政府が保証してまでユーロとの固定レートを守っているんですね。

4:おわりに

いかがでしたでしょうか。

遥か西アフリカにこんな独特な通貨があること、私自身も数年前まで知りませんでした。しかしこの通貨を通して、西アフリカ諸国への理解だけでなく、ユーロ導入の議論の裏側や、なぜフランスにはあんなにアフリカ由来の方々が多いのか、そんなにアフリカとフランスの繋がりが強いのは何故なのか、その一端が伺えると思います。

遠くて見え辛いアフリカと欧州のこんな関係に少し目を向けてみると、欧米・中国・日本だけで国際関係を捉えるよりも新しい視角が見つかるかもしれません。

以上

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