23回:わるいヤドラン

 小学校の頃、ポケモンカードが流行っていた。当時はまだ赤とか緑しか出ていないからポケモンの種類自体は151匹しかいなかった。ただポケモンによっては幾つかバリエーションがあって、例えばピカチュウなんかは3,4種あったと思う。《ロケット団》というカードパックが販売されてこのバリエーションは更に増えた。

 この《ロケット団》には「わるい」という冠の付いたポケモンが登場する。例えばピカチュウならばそれまで進化先はライチュウだけだったがわるいライチュウ(このカード自体はロケット団よりも後のパックだったと思うけど)という選択肢が増えたのだ。この「わるい」ポケモンたちは無印よりもHPが低く、変わった能力やギャンブル性の高いワザをもっている。
 自分のデッキにはわるいヤドランが入っていた。元々ヤドランが好きだったこともあるし(間抜けと侮られてたのが器用でタフなヤツに進化するのってカッコよくない?)

 当時、やたら長い試合が好きだった。小学生だから夕暮れまでの時間制限があるのに悠長なデッキばかり考えて使っていた。ポケモンを倒すのが忍びなく、だったらデッキを引き切らせてしまおう、と考えた。わるいヤドランは使ったカードを3枚リサイクルできる特殊能力を持っていたのでまさにピッタシだった。
 なんでこんなに面倒な手を選ぶのだろうか?エビワラーとかでガンガン攻めたりリザードンで一発逆転狙うのは性に合わない。相手をいなして、ちょっとずつ搦め手を仕込んで、息切れするのを待つ。この性分は未だに変わらないから三つ子のspirits up to one hundred。

 そんなたくさん遊んだポケモンカード、費やした時間の割に思い出も乏しく、同年代との会話でもほとんど挙がらない。実家の物置にあるはずのその束を今度引き出してみようかしら。

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