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【しくじり企業】中国Ofo:自転車シェアで世界制覇するはずだったのに・・・

概要

Ofoは2014年北京大学の学生が起業した学内の自転車シェアリング事業会社。安く手軽に自転車を借り、好きな場所に返すという画期的なビジネスモデルによりシェアリングエコノミーの象徴として、一時は時価総額3000億円に到達。しかし、慢性的な赤字を解消できず、味方であるはずのベンチャーキャピタル(VC)からも見放され、2018年ついに倒産。

1. Ofoとシェアリングエコノミー

Ofoは2014年北京大学の学生が起業した学内の自転車シェアリング事業会社。使い方は非常に簡単で、自転車のQRコードを読み込み、IDとパスワードを入力すればロックが外れる。乗り終えたら、好きな場所に返却するという、シンプルな方法である。
2016年には中国国内で85,000台の自転車を運用。その年VCから1.3億ドルの出資を受けシンガポール・イギリス・アメリカ・アーストラリア・フランスにまで手を広げると、全盛期には1億人のユーザーと2,000万代の自転車を運用する巨大企業に成長。

当時日本でも中国の同シェアリング自転車は賞賛されていました。
・中国はダイナミックで素晴らしい。それに引き換え日本は~~~~~~
・これからは所有ではなくて、シェアの時代だ
・(あとついでに言うと)これからの時代はサブスクだ

しかしOfoは、①慢性的な赤字、②VCとの関係、に苦戦して最終的には2018年倒産、2019年早々に世界各地の拠点も解散したのだった。

英語ですが、勢いがあったころのOfoのCMがこちら

2. 失敗原因①慢性的な赤字

Ofoサービスの使用料は1時間1元(17円)。日本の類似サービスであるダイチャリの使用料は70円/15分であり、日中の物価を考慮してもOfoは破格である。実際、設立当初から赤字続き、VCから資金調達し経営指導を受けたであろう後も倒産続きであった。

捕捉すると、ベンチャーが赤字であることは悪ではない。特にOfoの場合、競合スタートアップとのシェア争いに勝利することがまずもっての目標であり、当面赤字であることは経営陣・VC共に覚悟の上であった。ベンチャー界隈では「赤字を掘る(burning cash)」という言葉すらある。

しかし問題は、シェア確保の後でも利益が上がらないことである。Mobike等Ofoの競合自転車シェア会社も同じく撤退し、日本でもメルカリが自転車シェア事業(メルチャリ)を売却するなど、そもそも収益が不可能な事業であった。

更に言うならば、Ofoは「どこでも借りれて、どこでも返せる」のコンセプトのもとドックを準備せず(ドックがあるとそこまで取りに行き、そこまで返しに行く)、放置自転車が社会問題化。以下の写真はもはやギャグである。

ゴミ

3. 失敗原因②VCとの関係

一般論として、経営者と株主(VC等)は呉越同舟(同じ船に乗っていても、違うことを考えている)である。事業を通じた利益は当然共通であるが、以下の違いがある。

経営者
・会社の規模拡大(売上、従業員数、海外展開) 
・社内での盤石な地位
株主
・株価 
・配当
・いざという時の売却/撤退

Ofoの場合は、世間の期待値が高まるに連れて次々と新たなVCが表れ、その度に旧株主は売り抜けていった。上述の通り、株主が期待するのは株価上昇であり、Ofoはシャアリングエコノミーの象徴として圧倒的な期待を集め最盛期は時価総額3,000億円に到達。今となってはバブルであったことが分かるが、バブルがはじける前に売り抜ければそれで十分である。

Ofoのケースにおいても株主との関係が不健全だったかは不明だが、現地メディアでは「OfoはVCにハイジャックされた挙句、急激な成長に耐え切れず瓦解した」とも伝えられている。倒産後には元従業員から「必要以上の出資金額をVCから受けていた」との証言もあり。投資からの無理な成長期待に沿おうとした典型例である。

4. まとめ:中国のベンチャースピリット

世間や株主からの実態以上の期待に応えられず倒産したOfoだが、少なくとも中国経済の規模・スピード感を世界に理解せしめる機会となった。

当時取り上げられた、色とりどりの大量の自転車(会社毎で色が異なる)が並ぶ様子は圧巻である。特に個人的に強調したいのは、同社が学生ベンチャーから始まったことである。若者たちがリスクマネー(投資資金)を活用して世界各国に事業展開したことは尊敬に値する。本件のみで見れば失敗に終わったが、やはり今後も、中国経済のダイナミズムとベンチャースピリットは要注目である。

参考文献


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