見出し画像

だまし絵

だまし絵
噴水に降る春時雨 ひかりとも影ともつかず瞬いている
ぬすまれた傘はどこかの書店にてまた別の手に開かれるころ
シロツメを摘みながら行く早春のふくらはぎにも触れる草原
Kneippのソルトを溶けば春の夜のこのバスタブも海のはじまり
トンネルに再びもぐる地下鉄よ ひかりはひかりのまま運ばれて
駅前の生花店には黄水仙ならび異国の水辺のにおい
それぞれの楽器ケースを抱え持ち春の車両に出会うひとびと
だまし絵にだまされたいね蔓草の飾り文字濃き洋書を開く

『置き場』第3号 2024年4月


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?