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【決算まとめ】🇯🇵総合商社7社(三菱商事, 三井物産, 伊藤忠商事など)、23年度7-9月期

【決算総評】

双日を除く6社で通期業績予想が上方修正され、2023年度も半分が過ぎたところで総合商社の堅調さが継続している様子を表す結果となりました。ただし、セグメント別にみると業況がだいぶ異なります。
昨年度に発生したサプライチェーンの混乱が改善した自動車関連事業は各社が好調であり、特に同事業に強みを持つ豊田通商はQ1とQ2で2回連続となる通期業績上方修正&配当予想増額を発表するなど好調さが際立ちました。
一方、自動車関連は好調ながら、金属資源(原料炭や鉄鉱石)やその他エネルギー市況に足を引っ張られる形で三菱商事三井物産は前年同期比での減益幅が相対的に大きいです。期初に想定したよりも為替が円安に推移していることで業績押し上げ効果が見られましたが、本業としては絶好調だった前年度から厳しさが増しています。
とはいえ、もともと円高推移とエネルギー市況悪化の両方を考慮しても三菱商事や三井物産は9000億円前後の純利益をたたき出すほどに収益力が向上している点は流石でしょう。主な収益源となっている事業投資には減損リスクがつきものですが、今後は非資源分野の更なる強化により業績を可能な限り安定させられるか否かが見どころです。


補足)前回4-6月期の決算まとめはこちら👇

✅ 三菱商事(8058)

  • 会社紹介:三菱UFJ銀行、三菱重工と並ぶ三菱グループ中核。貿易仲介が祖業。終戦後に解散させられるが1954年に大合同実現。米経済の復調や神武景気の波に乗り業績拡大。新生の三菱商事では高度成長期に資源開発へ進出。現在では、傘下にコンビニのローソンやスーパーマーケットのライフなど非資源分野も手広くカバー。総資産で突出。

  • 総資産:22兆8919億円(総合商社1位)

  • 11月2日(木)13:00決算発表

  • 売上高:9兆5610億円(前年同期比▲10.8%、減収

  • 純利益:4660億円(同上▲35.3%、減益

  • 配当予想:増額(200円→210円)

  • 業績予想:上方修正(最終利益9200億円→9500億円)

  • 純利益の通期予想進捗:49%

  • 決算後の株価:▲4.23%

  • 好調なセグメント:天然ガス、食品産業

  • 低調なセグメント:金属資源、自動車・モビリティ、複合都市開発

  • 通期ドル円見通し:上方修正(130円→140.53円)※1円の円安で50億円の増益効果

  • ワンポイント👇

自社株買い実施中の三菱商事は、Q2決算で①通期業績上方修正、②配当予想増額と2つの期待要素が揃ったほか、今年末を基準に1対3の株式分割を発表。来年から始まる新NISAを意識か。
肝心の業績は想定内の減収減益。通期最終利益を従前の9200億円から9500億円に引き上げしたが、市場コンセンサスの9880億円には届かず。配当増額も他社にやや見劣り。LNGの持分利益が増加した天然ガスセグメントや三菱自動車の持分利益が増加した自動車・モビリティセグメントが増益要因となったものの、オーストラリアの原料炭市況悪化が響く金属資源セグメントが大きな減益要因で変わらず。前期の一過性利益の反動で複合都市開発セグメントも変わらず減益要因。特に金属資源セグメントは業績見通しにおいて上方修正されることなく低調さが顕著。決算発表後の株価は4%超の下落となり市場の評価厳しい。

三菱商事のIR資料はこちら

Q2の決算サマリー(三菱商事IR資料)
2023年度の業績見通し(三菱商事IR資料)

✅ 三井物産(8031)

  • 会社紹介:三井不動産、三井住友銀行と並ぶ三井グループ中核。1876年に旧三井物産創立。その後、三井組の貿易部門を併合し規模拡大。紡績機械の輸入などを手がける。一時は日本の貿易量の1/4を占めるほどに成長。終戦にて解散させられた後、紆余曲折あり1959年に大合同実現。新生の三井物産ではいち早くオーストラリアに進出し、炭鉱開発や鉄鉱山開発への参画を進める。現在では原油や鉄鉱石など金属資源・エネルギー分野で商社随一。

  • 総資産:16兆6445億円(総合商社2位)

  • 10月31日(火)14:00決算発表

  • 売上高:6兆3774億円(前年同期比▲14.1%、減収

  • 純利益:4562億円(同上▲15.4%、減益

  • 配当予想:増額(150円→170円)

  • 業績予想:上方修正(最終利益8800億円→9400億円)

  • 純利益の通期予想進捗:48%

  • 決算後の株価推移:+0.78%

  • 好調なセグメント:機械・インフラ、生活産業

  • 低調なセグメント:金属・資源、エネルギー、化学品、鉄鋼製品

  • 通期ドル円見通し:上方修正(通期130円→通期143.81円)

  • ワンポイント👇

Q1と同様に前年比減収減益変わらずだが、想定為替レートの円安修正や原油価格の上方修正などから通期最終利益を引き上げ。通期最終利益9400億円は、市場コンセンサスの9360億円を若干上回る水準。自社株買いは、上限500億円、来年1/31まで実施(今年度合計1200億円)。
セグメント別では、原料炭や鉄鋼価格の下落から主力の金属資源セグメントが軟調ながら、関連会社からの受取配当が増加した生活産業セグメントは堅調。

決算発表資料はこちら→三井物産IR

三井物産、IR資料より
三井物産、IR資料より

✅ 伊藤忠商事(8001)

  • 会社紹介:初代伊藤忠兵衛が創業。丸紅と同根。繊維商社が源流。高度成長期には総合商社化を目指し百貨店事業を手がけたこともあったが、軌道に乗らず後に売却。その後、1977年に安宅産業を合併。同社の鉄鋼部門を手にしたことで総合商社化が加速。現在では、傘下にファミリーマートを有するほか、アパレルブランドや不動産など非資源に強み。川上から川下まで事業ポートフォリオのバランスは商社随一。中国最大の国有企業であるCITICと戦略的業務・資本提携を行うなど中国とのパイプ太い。

  • 総資産:14兆1696億円(総合商社3位)

  • 11月6日(月)13:00決算発表

  • 売上高:6兆7740億円(前年同期比▲3.1%、減収

  • 純利益:4128億円(同上▲14.5%、減益

  • 配当予想:変更なし

  • 業績予想:上方修正(通期最終利益7800億円→8000億円)

  • 自社株買い:新規設定。750億円上限(1.2%相当)、2/29まで。

  • 純利益の通期予想進捗:51%

  • 決算後の株価:+1.66%

  • 好調なセグメント:エネルギー・化学品、食料、情報・金融、第8

  • 低調なセグメント:機械、金属、住生活

  • 通期ドル円見通し:130円

  • ワンポイント👇

Q2までの累計収益(売上高に相当)は前年同期比▲3.1%、半期最終利益も同▲14.5%とQ1に続き減収減益続く(減益幅拡大)。通期の最終利益は為替の円安推移により300億円の押し上げ効果があるものの、資源価格やパルプ、豚肉市況が悪化していることを踏まえて、従前の7800億円から8000億円と小幅な引き上げに。市場コンセンサスは8200億円程度となっており未達。
ただ、同社が「バッファー」と呼んでいる余裕分が300億円差し引かれているためネガティブさは多少なりとも緩和されているが、決算発表直後に乱高下した後、大引けにかけて上げ幅を縮小。前日比プラス引けは相場全体の上昇に助けられた一面も(同日の日経平均株価は、前営業日比+2.37%と2023年で最も上昇した)。

伊藤忠商事IR資料
伊藤忠商事IR資料

✅ 丸紅(8002)

  • 会社紹介:初代伊藤忠兵衛が創業。伊藤忠商事と同根。繊維卸が創業だが、高度成長期初期に高島屋飯田(現在百貨店の「高島屋」から独立した商社。一足先に総合商社化していた)と合併、鉄鋼商権などを手に入れ総合商社化へ。穀物メジャーを目指し2012年に米ガビロンを買収したが課題山積で2022年に売却。ただ、現在でも紙・パルプや食料・アグリなど非資源に強み。特にコーヒー豆は日本における消費量の1/3を丸紅が取り扱っている。

  • 総資産:8兆2615億円(総合商社5位)

  • 11月2日(木)11:00決算発表

  • 売上高:3兆7506億円(前年同期比▲33.0%、減収

  • 純利益:2513億円(同上▲20.1%、減益

  • 配当予想:増額(78円→83円)

  • 業績予想:上方修正(最終利益4200億円→4500億円)

  • 純利益の通期予想進捗:56%

  • 決算後の株価:+1.56%

  • 好調なセグメント:電力

  • 低調なセグメント:アグリ、金属、エネルギー、航空・船舶

  • 通期ドル円見通し:上方修正(130円→140円)

  • ワンポイント👇

通期最終利益の上方修正、配当予想の増額、自社株買いの3要素揃う。通期最終利益は4500億円となり、市場コンセンサスの4450億円を若干上回る水準に。配当予想の増額はほぼ織り込み済みだが、前期同等の78円から83円に増額し、3期連続での増配を計画。自社株買いは上限200億円(発行済み株式(自己株除く)に対する割合1.2%)を来年2月9日まで実施。
セグメント別では、前四半期から好調な電力部門の見通しが上方修正されたほか、前期比減益要因のエネルギー部門も見通し引き上げで減益幅縮小の計画。一方で、主力のアグリ事業は見通しをやや引き下げたほか、前期からの減益幅が大きい金属部門も銅価格等の資源市況厳しく見通し引き下げ。

Q2までの実績(丸紅IR資料)
2023年度の見通し(丸紅IR資料)

✅ 住友商事(8053)

  • 会社紹介:住友グループの総合商社。5大商社の中では後発組。源流は1919年に設立された大阪北港(株)。港湾の造成や不動産経営が主たる業務。戦後直後に商事部を設立し、従前から関係のあった住友グループの製品を取り扱う。1952年に住友商事に改称。現在は、メディアや不動産など非資源に特徴。

  • 総資産:10兆73318億円(総合商社4位)

  • 11月2日(木)14:30決算発表

  • 売上高:3兆3438億円(前年同期比▲0.3%、減益

  • 純利益:2848億円(同上▲18.7%、減益

  • 配当予想:増額(120円→125円)

  • 業績予想:上方修正(最終利益4800億円→5000億円)

  • 純利益の通期予想進捗:57%

  • 決算後の株価:+1.66%

  • 好調なセグメント:輸送機・建機、インフラ

  • 低調なセグメント:生活・不動産、資源・化学品

  • 通期ドル円見通し:130円

  • ワンポイント👇

通期最終利益を5000億円に上方修正し、市場コンセンサスの4890億円をやや上回る水準に。Q2での配当予想増額についても、慎重派な住商にしては多少なりともサプライズ感。自社株の設定はないがQ3に期待。
セグメント別では、資源ビジネスが昨年のバブル的増益から一転減益続く。一方で、非資源分野が業績を下支え。5大商社では伊藤忠に次ぎ減益幅小さい。自動車関連セグメントが好調、電力等のインフラセグメントや同社強みのメディア・デジタルセグメントも前年比で堅調な推移。


✅ 豊田通商(8015)

  • 会社紹介:トヨタグループの総合商社。トヨタ車の販売金融を行う「トヨタ金融株式会社」が源流。1960年代からトヨタ完成車の輸出を開始。2000年に加商、2006年にトーメンと合併し、幅広い事業領域を獲得。総合商社へ。

  • 総資産:7兆276億円(総合商社6位)

  • 10月31日(火)16:00決算発表

  • 売上高:5兆1352億円(前年同期比+4.6%、増収

  • 純利益:1777億円(同上+17.5%、増益

  • 配当予想:上方修正、年間214円→250円(今期2回目)

  • 業績予想:純利益上方修正、3000億円→3200億円(今期2回目)

  • 純利益の通期予想進捗:55%

  • 決算後の株価推移:後日追記

  • 好調なセグメント:グローバル部品・ロジ、アフリカ、モビリティ

  • 低調なセグメント:金属、機械・エネルギー・プラントPJ

  • 通期ドル円見通し:上方修正、(通期135円→140円)

  • ワンポイント👇

為替レートの円安修正と、とにもかくにも自動車関連が絶好調で今期2回連続となる業績上方修正&配当予想増額。他社と比較して自動車関連の恩恵絶大で総合商社で唯一の前年比増収増益基調続く。セグメント別では、商品価格の下落が響く金属セグメントと、電力価格の下落が響く機エネセグメントで前年同期比減益ながら、その他のセグメントは自動車関連が要因となり幅広く増益。

✅ 双日(2768)

  • 会社紹介:2004年にニチメンと日商岩井(ともに10大商社と呼ばれる企業に該当)が合併し誕生。宇宙航空部門など独自色のある非資源分野に強み。

  • 総資産:2兆7747億円(総合商社7位)

  • 10月31日(火)12:30決算発表

  • 売上高:1兆1872億円(前年同期比▲6.8%、減収

  • 純利益:479億円(同上▲39.2%、減益

  • 配当予想:変更なし

  • 業績予想:変更なし

  • 自社株買い:設定なし

  • 純利益の通期予想進捗:50%

  • 決算後の株価推移:+0.39%

  • 好調なセグメント:リテール・コンシューマーサービス

  • 低調なセグメント:金属・資源・リサイクル、化学

  • 通期ドル円見通し:上方修正(通期125円→下期140円)

  • ワンポイント👇

Q1と同様にQ2も前年同期比で減収減益。セグメント別では、石炭価格の下落やコスト増で金属・資源・リサイクルセグメントが軟調続く。化学品価格も下落響く。一方、商業施設の売却益や国内リテール事業の回復などからリテール・コンシューマーサービスセグメントの利益が前期比大幅増。双日は元来、非資源分野に強みを持っており、昨年度までの資源バブルは一過性のものとして織り込み済み。非資源分野では既存事業のみならず、新規事業の割合が徐々に増えており(23年度の予定では既存と新規で半々になる)、安定基盤構築に向けたポートフォリオの整理を着々と進めている様子。

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