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"Cool Japan" made in North Korea?

2回続けて英語のタイトルは、ややくどいかなと思いつつ…
このニュースが話題になっていますので、少しばかり過去の取材経験も交えながら掘り下げます。


実は北朝鮮のアニメ技術は世界水準

今回、北朝鮮が日本やアメリカのアニメ制作を下請け(ないし孫請け)している可能性を発見したのは、アメリカの北朝鮮分析集団「38ノース」。中国・遼寧省やスペインにあるIPアドレスが北朝鮮管理下のクラウドサーバーであると分かり、そこから大量のファイルをダウンロード・分析したそうです。

その結果、7月から放送される予定のアニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」や米アニメ「インビンシブル」などの作画を、北朝鮮のアニメーターたちが請け負っていた模様だと判明。また、札幌市のアニメ制作会社のレイアウト用紙もあったそうです。

「魔導具師ダリヤはうつむかない」の作画画面には、「頭はもう少し原画に忠実にして」といった指示が中国語と朝鮮語で書かれていて、中国企業が北朝鮮側に作画を発注したものとみられています。

おそらく北朝鮮側で請け負ったのは「朝鮮4・26児童映画撮影所(SEK Studio)」。ここはアニメの世界では有名で、かつてはディズニーの「ライオンキング」などの作画を請け負ったこともあるほど、レベルは世界水準。ただ、2021年にアメリカの制裁対象に加えられました。アニメ制作で稼いだ外貨が核やミサイル開発にまわされている可能性を考慮してのことでした。

今回の「魔導具師ダリヤはうつむかない」でいうと、日本の制作会社が中国企業に作画を発注して、そこから制裁対象のSEKに孫請けの形で流れているとは聞かされていなかったものとみられます。

アニメに限らず、コンピューターのプログラム作成でも、北朝鮮技術者が(多くは中国に拠点を置いて)日本の仕事を請け負い、それを日本側が知らなかったケースは、そう珍しいことではありません。最近も警察庁が注意喚起をしたところです。

私が北京に駐在していた2008年から11年は、今ほど北朝鮮に対する経済制裁が厳しくなかった時代で、日本企業が北朝鮮プログラマーを雇うことも問題になっていませんでした。
実際に雇っている日本人経営者に話を聞いたところ、かの国のプログラマーたちは勤務態度は総じて真面目、アプリ開発などは指示に沿ってそつなくこなす、とのこと。

「でも…」とその経営者が苦笑交じりで披露したエピソードが印象的でした。

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