今こそ選挙のはなしをしよう #2 どういう投票をすればいいのか

 さて、「投票」というのは「投票所」に行って投票用紙を投票箱に入れることであり、それにはそれなりの手続きが必要であるものの、選挙権さえ有していてちゃんと手続きに従えば投票できることは前回で述べた。しかし、実は選挙の投票といっても様々なものがあるし、どういう投票行動をとったらいいのかなんていまさら人に聞けないし、てきとーだと後が怖い、という方もそれなりにいると思われる。
 そこで、ここでは、選挙の種類をおさらいしつつ、どう投票すればいいのか、についてぼくなりに調べた結果、ヒントを共有していきたい。今回では、ホットな話題でもあり、身近でもある地方議会を中心に考えていきたい。
 いきなり地方議会について、といっても難しいので、もういちど前提を共有しておこう。
 選挙に際して、投票用紙に書くものが、実は大きく分けて2種類あることはご存じだろうか。選挙のほとんどが、「その選挙の対象となっている候補者」の氏名を書いて投票するものであるが、実はこれ以外に「選挙の対象となっている政党名」を書く選挙もある。それが最初に述べた国政選挙である。ぼくが地方選挙を「国政よりは簡単」と述べたのは、地方選挙であれば確実に「候補者」に投票できるからであり、「候補者」のみを考慮に入れることができるからである。当然ながら政党も加味した国政選挙は地方選挙よりも段違いに複雑で、投票だけで意思表示できるものの、そのニュアンスが純粋に反映される可能性はかなり低くなってしまう。まず地方選挙で「この候補に投票したらどうなるのか」というのを考えてから、国政選挙について考えた方が、選挙がわかりやすくなるようにぼくは思っている。
 そして、地方選挙には大きく分けて2種類の選挙がある。「首長選挙」と「議会議員選挙」である。首長、すなわち都道府県知事ないし市町村長については、各自治体につきひとりしかなれないため、候補者の中で最大の得票であることが当選の必要条件である。実を言うと候補者の中でいちばん票を取っていてもそれすなわち当選、ということにはならないのであるが(最近の大きい自治体の例で言うと、前々回の千葉県市川市長選なんかは記憶に新しいところだ。この選挙で結局再選挙を経て当選したのは、テスラ公用車やガラス張りシャワー室などで話題になった、かの村越祐民氏である)、最大得票となった候補者はほとんどの場合そのまま当選する、と考えていただければ問題ない。つまり、候補者が何人出ようと当選者はひとりしかいないということになる。いたってシンプルな選挙である。
 一方、議会議員選挙については、県でも市区町村であってもそれぞれに選挙区ごとの定数があって、その順位で当落が決定する。ぼくの故郷である千葉県浦安市を例にとると、浦安市は浦安市内全域が県議会でひとつの独立した選挙区となっており、その定数は2人である。先の選挙では4人の候補者が立候補し、得票数上位2名が当選した。また、浦安市議会の定数は21人であるので、次の市議会議員選挙では、得票数が上から数えて21番目までは当選し、22番目以下は落選することになる。
 「首長選挙」と「議会議員選挙」のどちらでも共通する基本的な戦略として、「自分が損をすることになる政治を行う政治家が、得をするような投票をしない」が第一原則である。これは「自分が当選望む政治家に票を入れる」ことと必ずしもイコールではない。
 たとえば、憲法を改正したくない、と思っているのであれば、「憲法改正反対」を掲げる政治家を当選させることよりも、「憲法改正」を掲げる政治家が「議席を得る」ことを防ぐことが優先される。
 ちなみに、余談であるが、日本国憲法は国政の範囲であるので、ぼくから言わせれば地方選挙にそれを持ち出してくる政治家はトンチンカンで信用ならない、と思ってしまう。あくまでこれは例であるということを念頭に置いていただきたい。
 しかしながら、政治家もそんなことはよくわかっているので、ポスターやホームページには(本人の、よほどな)強い思いでもないかぎり極端な政治マターを出してこない。それだけで票が絞られてしまうからだ。とくに、自民党などの大手政党が公認している候補の場合、大抵は「○○市のために一生懸命!」みたいなぼやっとしたフレーズが並ぶことになり、「こいつの政治思想よくわかんねえな」となってしまう。まして、現職や元職であれば、自治体に残っている議会議事録などで活動内容や表現している政治姿勢などは確認できるが、新人であるとそれすらないため、その候補者がどのような思いで選挙に臨んでいるのかがわかりにくい。
 議会議員選挙で、まず確認する必要があるのは、その候補が現職かどうかということと、その候補の事務所がどのあたりにあるのかということだとぼくは思っている。
 つまり、「自分が困ったときに、より話を聞いてくれる可能性がある人間」に投票する、というのが基準としては確かなように思う。ご近所さん、つまり地元から選出された議員さんであれば、ふつうであればその地域には詳しいはずである。まして、現職であればその行動を追うことは簡単だ。近所から立候補している人間が、政治思想やその他の事情でよっぽど話を聞いてくれなさそうでなければ、まずは自分の地域の近くに事務所のある候補者を第一候補として確認するのがよいと思う。
 候補者の事務所のおおむねの位置や現職かどうかは、当該地方自治体、つまり都道府県議会なら都道府県が、市町村議会なら市町村が、告示(これこれこういう日に選挙しますよ、という「自治体から」の「公式な」お知らせのことを「告示」という)後に発表している立候補者一覧を確認することでだいたいわかる。また、地方紙をとっている方はそれで確認できる可能性もある。
 また、政治思想については、最近だとNHKがインターネットで特集記事を組むことが多く、各候補者のアンケート結果などを掲載している場合もある。特に統一地方選や国政選挙の場合はほとんど掲載しているはずなので、もしよければ確認してみるとよいだろう。これを見ていくと自民党であっても何を優先とするかは候補によってそれなりにばらつきがあることや、共産党や公明党はどの候補者もほとんど回答内容が変わらないことがわかると思う。党が公認もしくは推薦している候補はその党の影響を受けているし、無所属であっても回答内容で影響を受けている政党がわかったりもする。これらの特集記事は、候補者の比較検討、特に後述する「議席を取らせたくない候補」を絞るのには非常に役立つ。
 あなたが特にさしたる政治信条もなく、「とりあえずヤバい人じゃなければ誰でも」というような場合は、前述のとおり「住所の近くに事務所がある候補者」が投票先として優先すべきところではあるが、問題は、とかく当選者の多い議会選挙だと、その「ヤバい人」も結構な確率で立候補しているところである。自分の近所にいる「ヤバい人」が議員さんになってもあまりいいことはないので、そういう候補者にはできるだけ投票しない方がいい。
 「ヤバい人」の見分け方というと語弊が出てくるが、つまり「うちの地域には目を向けてくれなさそう」という候補者であればある程度見極めることが可能であると、ぼくは考えている。
 ひとつは、「その地域に対して有効な、通り一辺倒の広報策を打てるのに打っていない」ということである。選挙といえばポスターと選挙カーが思い浮かぶだろう。まず自宅の最寄りの選挙ポスターを確認して欲しい。できれば、期日前投票が可能になる日の次の日くらいがいい。この時点で、「立候補しているけれどもポスターがない」候補は、何らかの理由で「ここにポスターを貼るのを後回しにしている」候補であるので、仮に議員さんになったとしてもこちらの話を聞いてはもらえなさそう、と予測できる。また、選挙期間中はかなり頻繁に選挙カーで候補の名前を聞くと思う。これは公職選挙法で、選挙カーで走っている間は候補の名前を連呼するくらいしか「宣伝」ができないからなのだが、この選挙カーが「うるさい」と思ったらその候補の名前をメモしておこう。あなたが「うるさい」と思うということは、たいていの人間が「うるさい」と思う時間帯にうるさい選挙カーを走らせている、はた迷惑な候補ということになる。また頻繁に選挙カーを走らせているということは、その候補が一票でも多く票を欲している、すなわち「当落線上にいる」可能性が高い。そこで「頑張っているな」「大変なんだな」と思わず、「うるさい」と思うのであれば、その候補には投票しないほうがいいと思われる。すなわち、選挙カーや選挙ポスターで「あれ?」と違和感を覚えたのなら、まずそれを大事にした方がよい、ということである。
 これらを考えていくと、自ずと消去法で投票する候補が決まってくると思われる。まずはその候補の名前を書いてみればよいと思う。
 また、どうしてもこの候補に議席を与えて欲しくない、という方もいるとは思う。それは政治信条の上でそうという人もいれば、単に「選挙カーがうるさすぎる」とか「困っているのにせせら笑って助けてくれなかった」のような人柄上の問題もあるだろう。とにかくこの候補に当選してもらうと困る、という候補がいるのであれば、その候補にできるだけ近い事務所の、できるだけ政治信条が遠い候補に投票するのがもっとも効果がある。事務所が近いということは先述したように「地元票」も近いということであり、そこで対抗しているライバルということにもなる。ライバルを見つけるという一手間がかかってしまうが、これもひとつの手である。ちなみにぼくはこの考え方で投票することの方が多い。どの候補もイマイチ、という場合はこの考え方が効果的である。結果として自分の考え方とはかけ離れてしまっても、背に腹は代えられない。政治家を選出するということは、「ベターなほうを選ぶ」ということであり、ベストな選択というのは基本あり得ないと思ったほうがよいと思う。選挙は、「当選させたい人を当選させる」ものではなく、「当選させたくない人を当選させないようにする」ためのものであるとぼくは考えている。
 首長選挙も結局は同じである。候補者を見比べて、「どれがいちばんマシか」を消去法で選んでいくものだ。首長選挙の場合、「当選させたくない」が候補者の数ぶん増えていくことになるので、この消去法が「究極の選択」じみてしまうところがある。
 もし、消去法を迷ってしまった時は、その候補が現職か、もしくは現職の応援を受けているかどうかをまず考えてみるとよいかもしれない。そして、今住んでいて、まちの中で自分がどのような部分に悩みを抱えているかを書き出してみて、それの解決をうたっているようであれば現職に、そうでなければその解決について言及している候補に投票するのが、よりベターであるとぼくは考える。
 また、選挙ポスターや選挙カー、選挙公報は、誰でも取り得る宣伝手法なので、意外に重要である。首長選挙であろうと議会議員選挙であろうと、これらをざっと眺めてみて違和感を覚えるような候補は投票の候補から外しておくことを、強くおすすめしたい。
 長くなってしまった。ここまで「どのように投票を考えればよいか」を書いてきた。
 次回は、最終回として、ぼくがこれまで見てきた選挙や政治家のあれこれについて、すなわち「ザーヒーのなるほど集」みたいなものを書いていきたい。事情により期間があいてしまうと思われるが、ぜひお付き合いいただければ幸いである。

おすしを~~~~~よこせ!!!!!!!!おすしをよこせ!!!!!!!よこせ~~~~~~!!!!!!!おすしを~~~~~~~~~!!!!!!!!!!よこせ~~~~!