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ライフ・イン・ザ・シアター2022 観劇レポート&感想 -4-

長〜い長いオタクの観劇レポ第四弾です。本編もいよいよラストに向かいます!


*ライフ・イン・ザ・シアター2022
 http://lifeinthetheatre.jp/

出演:勝村政信さん、高杉真宙さん 演出:千葉哲也さん
戯曲は悲劇喜劇 2022/3 No.815より
デヴィッド・マメットさん 作 小田島恒志さん 翻訳によるものを参考にしています。セリフに関しては同誌からの引用また、うろ覚えの記憶から記載しています。


第21場 楽屋裏で電話

電話しているジョンの傍でエージェントや組合に対しての愚痴を言いながら、一緒に飲みに行こうとしているロバートが待っている。(もうダイエットは大丈夫?)
その後も劇評で良く書かれないことが続いたのかな?この頃はよく愚痴ってるのかな?
「おい、飲みに行こうぜ」ってセリフに、相変わらず俳優仲間としてのジョンを信頼し、評価もし、対等な関係であったり好感を持っていると感じるシーン。1場からずっとロバートはジョンのことが好きなんだろうなと何度も感じるのだけれど、ここでもひしひし伝わってくる。
だからこそ、このシーンでも、お前(ジョン)のことはよく知っている、よく理解しているのは自分だ。という空気を感じる。同時に、エージェントと仕事の電話をしているジョンにある種、嫉妬も感じているのかもしれないと感じる部分も。
繰り返して「どうもありがとうございます」というジョンの言葉に先駆けて、口癖を真似るかの様にセリフを先取りしたり、「まるで奴隷だな。」などと茶化した風に振る舞ってみたりしている。

ロバートは「俳優同士が話せなくなったらどうなる?」「役者の考えは役者にしかわからない」「仲間がいなくなったらおしまいだ」と言う。
一方で電話の最中にチャチャを入れるロバートに少し呆れた様子を見せながら「役者の才能は?」と言うジョン。
「そんなもん」と返しながら「役者の人間性は?」と言っておきながら、「どうだろうな」と自分でうやむやにするロバート。
このやり取りにも、『役者の人生』でお互いが感じていることに、小さなすれ違いを感じる。

ロバート「(電話なんて)切っちゃえ、切っちゃえ」「俺は飲みにいくぞ。飲まないわけにはいかないんだ。どうしてだと思う?」
ジョン「どうして?」
ロバート「それが一番似合ってるからだ🍺」(ジョッキを飲み干すジェスチャーでニヤリ😏)

電話中、手帳を出しながら右目ウィンクな時もあり(きゅん)、映画の仕事をめでたくゲットしたジョンの、大きな「やったー!」と言う声に、思わずこちらも毎度、客席から小さく拍手を送ってしまうのでした。

第22場 メイクを落としている楽屋裏

スキップして花束持って入ってくるうきうきジョン。(はい、かわいい)
メイクデスクで顔にクリームを付けてメイクを落としているジョンの横で、今日も劇評を気にしているロバート。
ここでも「君のこともちょっと褒めすぎだよな」「いや、君の芝居は褒められて当然さ、大いに褒められていい」とジョンのことは肯定しつつ、褒めているポイントが違う、やってもないことを褒めて、肝心な”一瞬の見せ場”をこき下ろすとご不満の様子。(寄生虫=劇評家のよう)
「あなたの意見ではね」と、上手にあしらえるようになってきた?落ち着いた様子のジョン。
「これからは耳を貸す相手を選ばなくちゃいかんぞ。誰の忠告を聞くかだ」
「耳を貸しちゃいかんのはどういう連中かというと…」
”役者同士”仲間である自分の声を聞いてほしい感じがひしひしと滲み出ているロバート。
「僕は的を射ていたと思うけどな」というジョンの、まるで劇評家の肩を持つかの様な発言に「本気で?」「ねこかぶってるわけじゃなくて??」とロバートは不満げ。若さゆえにまだ「わかっていない」という風。

ロバート「大バカやろう」
ジョン「なにか言いました?」
ロバート「聞こえてるくせに」

その言葉は誰に向けたものだったのか?
ジョンのマフラーを身につけ、彼の櫛、タオルを使い…。(ジョンのこと愛しすぎじゃない?)そんな姿に呆れつつも許しているジョンが、年老いた父をあしらっているかの様だった。

このシーンでいつも勝村ロバートがメイク落としクリームを顔面にこれでもかと塗りたくり、時には鼻の穴にも入れて吹き出したりしてて、笑。前が見えないほどタップリに塗ってすぐに暗転になるので、あれでよく物音を立てずにはけられるなぁと毎度感心していたのだけれど、上手側に行ってると思っていたらより離れている下手側にはけていたと札幌の公演でわかりました。(え、すごい)
さすがに塗りすぎて前が見えなかったのか、ほんのり明るくなってから歩いて行くシルエットが見えましたw
ジョンも時々クリームを塗りすぎ、早めにタオルを外してしまって頬にクリームが残っている時があったのですが、鏡の前であまり自分の顔も見ていないのかな?という時もありつつ、手で拭って、ベタベタしているらしい(安全ピンの場面曰く)髪に撫で付けることで乗り切ることもあり。(衣装につかないようにしているところがさすが!)

第23場 真っ暗な舞台上

ジョンがひとり、誰もいないスポットひとつだけ点いた舞台の上で台本を手に稽古を始める。(何も書かれていない真っ白な台本が見える)

「今やイングランドの若者は…」

深いブルーのモヘアっぽいセーターに黒のパンツ、マフラーをしたジョン。すらっとした長い足と濃い色の中に白い手が映えて、指の美しさも際立つ。劇中劇観客席側を向いているのに通る声がこちら側まで響いてくる。と…、ロバートが上手側から声だけ登場。の、存在感。笑
「命がみなぎっている、活気と、決意と、若さがみなぎっている…」
「君は実にいい芝居をする」「どんどんいい役者になっていく」
身近で見ているからこそ、実感している本音をロバートも素直に口にしているんだろうなと思うのと同時に、「若さゆえの欠点を持てるってのは、若者の特権だろう」いつもの調子で始まる。笑

ロバート「ひとつ君に言っておきたいことがある」「舞台のことだ」
 「これが舞台のいいところだが、そして舞台が人生に似ているところだ…」
ジョン 「で、何なんです?」

雑貨屋さんのたとえ話が始まる。
「つまりこういうことだ。舞台の上ではな、人生と同じように…といっても、舞台も人生の一部には違いないが…だろ?」
「例えば雑貨屋で買い物をしていても、その時間を人生から切り離すことはできないだろ…それも人生の一部というわけだ。だから、舞台の上で行われることは、それ自体がひとつの人生であると同時に…自分の人生の一部にもなる」

舞台でも何度も出てくるロバートの言葉、持論。きっとジョンにとっては、何年も言われ続けている言葉。
ロバートの口癖なのか「それが一番似合っているから」を真似るジョンに「おれの真似をするんじゃない」「学ばなきゃいけないこと」「舞台の上で行われることは人生の一部」。

救命ボートの芝居の開演前に激昂した時にも語っていた「先人の歩いてきた道をたどる」自分たちのこと、若い役者に出会い、親子の関係にも似た関係のなかで時間が過ぎていくこと。

「だからこそ俺は、嬉しいんだよ。…押し付けがましく聞こえるかもしれんが…」
「嬉しいんだよ、君に、…君のような若い役者に出会えることが…」
「わかるかなぁ…。君にはわかってもらいたいんだが。な?ジョン」

袖の奥からこっそりと、稽古するジョンを感じながらいろんな思いを巡らせただろうロバートが、自分が情けないと泣き出してしまう。(ロバートの中にも積もるものがあると感じるシーン。声だけなのに、すごい。)
嫉妬でもなく、ある意味「焦がれている」のかもしれないと感じるけれど、泣かれたジョンはビックリするだろうな。説教めいた言葉のようでいて、泣き出したロバートの気持ちはまだ”若い”ジョンにはわからなかったかもしれない。

「マジかよ、泣くかなぁ!?」「今すぐやめてください」と言いながらも、「大丈夫かなぁ?本当に!?」と、声をかけるジョンに、根の優しさと親子の距離感を感じさせられる。
「ロバート?そこに居るんでしょ?さっきもそう言って帰らなかった。僕を、見てたでしょ」
「怒ってないだろうね?」の問いに「怒ってないって」タメ口になったり、いつまでも帰らないロバートに「まだ居たか。」「ったくぅ〜!」
そのやりとりがあたたかい。

第24場 医者の場面

一転、キリッとした”ドクターY”、否、緑の術着、ドクター衣装のロバート登場。
ちょっと気分的に沸き立つ。笑(これはキャストが勝村さんならでは!)
続けてジョンも登場。視線だけでやり取りする手術シーン。いつかそんなドラマや映画も!?と、思いつつ、難しい用具の名前やら…の、矢先、ロバートもその「腫瘍」の名前が思い出せない様子。
劇中劇客席に見えないようにジェスチャーでジョンに「セリフが出ない」と言いたげなのに、ジョンは「???」の表情。
役者同士の助け合い、役者の気持ちは役者にはわかる?ともいかず、一度は舞台袖にはけたジョンもすぐに戻ってきて、芝居の筋に戻す。
ロバートが言いたいのは「すまないが、ちょっと(台本を)読んできてほしいんだ…」だろうなと思っているわたしたち。
ジョンはロバートがシーンを間違えていると思っている様子で(別のシーンで心電図を見るというところがあるのか…)「そのシーンじゃなくて、腫瘍の名前を言うシーンでしょ!」と言いたげ。
何度うったえてもジョンに伝わらないので、ロバートがセリフを変えてくる「脾臓の脇にできものはないだろう、”まだ”」(症状を戻してしまう!?)「頼む、私のためだと思って、見て来てくれ」
ついにジョンも口に出して「そこはもうやりましたよ」と。
あまりの伝わらなさに痺れを切らしたロバートのアドリブなのか「私を怒らせる気か?いいか、君がこの世界でやっていくつもりなら、データを読んでくるんだ」というセリフが、この世界=演劇界?と、いやな聞こえ方もしてしまいそうなところ…。
「この病院で仕事を続けたいのなら…。警察を呼ぶことになるぞ!」
ロバートの焦りとは裏腹に、また何かが切れてしまった様子のジョン。マスクを脱ぎ捨て、手術用の人形をベッドから投げ落としてステージから立ち去ってしまう。
上手側でうな垂れながら少し肩で息をするようなジョン。
ステージ上ではロバートが筋書きのない出来事に対してなんとか場をつなごうと思ったのか、マスクをはずし「皆さん、本日お目にかけましたのは—完璧とまではいいませんが、ひとつの良い例として—…」劇中劇観客の笑い声…。
人形のお腹から飛び出した赤色の生地がヒラヒラと舞う様子がとてもシュールで、必死に笑顔で説明している姿が哀しかった。
「ほんの一瞬の混乱と…ほんの一瞬の動揺で…皆さんも気づかれたと思いますが…」取り繕おうと振る舞うロバートの目の前に幕が下りる。
ステージ上にセットを片付けに来た黒衣くろこさんが、ロバートの手から人形を勢いよくぶん取る。
「誰か、台本持ってないかっ!?」幕を落としたステージの上に響くロバートの声…。
心停止のアラームに似た音とともに、ジョンの雲った表情の奥も…。

スポットライトの加減や身体の微妙な向きによって、ジョンの苦悩の表情が見える回もあれば見えない時もあったけれど、真っ暗な中に隠された息遣いや、うな垂れた肩や背中、少しだけライトに浮かび上がる表情に、観ているこちらも胸の奥がぎゅーっとなり、喉が詰まるような気持ちがした。

動揺の第25場

血のついたタオルぐるぐる巻きの左手を抱えて、よろよろと蒼白したロバートが入ってくる。「どうしよう、どうしよう…」「切っちまった」。
憔悴した様子でおろおろと目が泳ぐ。
「どうしました?」と入ってきたジョンもその様子を目にして驚愕。
「なんてことを」
「大ボケだろ?」と、故意ではなく失態のような言い方をするロバート。病院へ行こうと促すも「まさか!いいよ、もう大丈夫だから」「行っても笑われるだけだ」という返しに、ロバートのいう「寄生虫」や観客たちからの心ない嘲笑の声がロバートをそこへ追い詰めたようにも思えた。
「剃刀が滑っただけ」と言いながらも、いっときは…何かを考えただろうロバート。話をすり替えて「役者みたいに剃り上げて…」昔の理髪店の広告のセリフだろうか?ロバートの中にある”憧れの役者”という価値観をここでも感じる。

ジョン「いったいどうしちゃったんですか…?」
ロバート「どうもしちゃいないよ」
「手が滑ったんだ」と言いながら、「疲れてるんだ。俺たちみんな…、休まなくちゃ」「もうたくさんだ…。休まなくちゃ…、休まなくちゃ…」

ロバートが「ジョン」と呼びかける声が切なく、力なく狼狽える姿に溢れる涙を止められなくなる。「眠らなければ頭が冴えるなんて…」と、きっと日々、葛藤して眠れず、眠らずにいたんだろう。
「自分で切っちまった」「洗面台を汚しちまった」いろんなことを気にしながら、医者にかかることを拒むロバート。
「送りますよ」というジョンの申し出も受け入れずその場から動くことを拒否し、しばらく休んでから帰るという様子を放っておけないながらも、なす術なく、それでも、ロバートに優しくタオルをかけ、そっとその場を後にしたジョン。
立ち去って大丈夫なのか、でも、そっとしておくしかないのか、葛藤や心配や戸惑い、たくさんの思いを残しながら去る背中が印象的でした。

その後、ステージのライトがわたしたち客席側に向けられ、眩しい光にすべてが包まれる…。


初見の時も、このシーンまでがあっという間に過ぎて、ハッと気づいた。
「あれ、90分の芝居、もしかしてもうすぐ終わっちゃう…?」
ジョンとロバートの心中に渦巻くものを感じながら、最後の26場が始まる。


第四回更新はここまで。
超個人的意見が反映された感想をお読みくださってありがとうございます。
4回で終えるつもりが終わりませんでした。。💦
第五回はいよいよ舞台も終わりに…。2人の今後は?
- つづく -

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