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習作1(その13):転勤

短文を書きました。小説の一項になるにはどうすればよいかアドバイスをください。

転勤

畑仕事を終えて、帰ってくると郵便が来ていた。
開けてみると、中には紙と航空券、現金2万円が入っていた。


辞令
転勤を命ず。

行先:北海道目梨郡羅臼町船見町132−XX
発行日:即日
なお現地には、先任駐在者がおり、協力して業務に当たること。


航空券は羽田から中標津空港までの片道。
俺がいなくなったら、この畑はどうなるんだ。
毎日、雑草を抜いているだけだが。
このまま畑仕事続けるか、羅臼に行くか。
待て、そんな選択肢はおかしい
転勤も何もあるか。俺は、自分の意志でここにいるだけ。
給料をもらっているわけでもない。
そもそも、こんなところにとどまらず、畑仕事などやらなければいい。
とは言え、ここから抜け出せば、また、求職活動に逆戻りだ。
いや違う。ここにいても求職活動をすればよいのだ。
結局私は、ここを引き払って、羅臼に行くことにした。
羅臼には行ったことがない。どんな所か見てみるのも悪くない。
どこにいても、私は私だ。何も変わらない。
翌日、朝早く上越新幹線、山の手線、東京モノレールを乗り継いで、羽田空港へ。1日1便しかない中標津(なかしべつ)行のANA(NH 377)便に乗った。中標津空港からは空港バスで、中標津バスターミナルへ。そこから羅臼までは路線バスだ。
標津からは1時間ほど海沿いを走る。温泉街がある標津を過ぎると、左手には標津の湿原が広がる。湿原のはるか先には知床の連山、右手にはところどこから国後島を望めるバスの旅だ。
何年か前、国後から泳いできたロシア人がいたという事件があったが、近いとはいえ、この距離を泳ぐのはなかなか大変な気がする。
1時間半程で羅臼に到着する。
ついた時は夕暮れ。日は沈み、名残陽(なごりび)が夏の海を赤く染めていた。
羅臼とは関係ないが、苫小牧発のフェリーから見た夕暮れを「絞ったばかりの夕日の赤が、水平線から漏れていた」歌う曲があった。
北の夏は、陽光をなごり惜しむのだろう。



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