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【企画初参加・エッセイ】決断するオンナ、寄り添うオトコ#私の思う女子力

#私の思う女子力
山根あきら様の企画に初参加させて頂きます。
よろしくお願いします。

PHS、いわゆるピッチと言われる携帯電話が流行った90年代。
私は派遣社員という立場で宝石店に勤めていた。

ファッションビルの中に突如現れるその宝石店には
有名人が夜の蝶に貢ぐため、
怪しい投資で稼いだ金で愛人に高い宝石を買う為、
エグいぐらい値引き要求をする新興宗教の教祖など、
一般的に暮らしていたらお会いできないような
人間関係で胃もたれするってあるのかな。とぼんやり考えてしまうような
そんなお客様に囲まれていた濃ゆい時期がある。

こう書くとぼったくりの宝石店に思えるだろうが、
まったくの真逆で誠実に値段をつけ、特に舶来時計に関しては
正規取扱店として名を馳せていた。

ここでいう舶来時計というのは、ロレックスやカルティエ等、
ブランド高級時計のことだ。

私は舶来時計担当だった。
だが、店に時計を見に来る方というのは
・自分で時計と組み立ててしまうぐらい好き。
・年代ものの時計が好き。
・中に入っている機械の構造が好き。
・ブランドが好き。
等々、鉄道ファンの方が「撮り鉄」「乗り鉄」と言われているように
ひとえに「時計好き」といっても細部にわかれている。

本物の時計好きにポッと出の派遣社員など叶うわけがない。

それでも時計に関する雑誌や本をかたっぱしから読み倒し、
どうにか時計を売っていた。
全くのウソは言わないし誤魔化せるものではないが
人間、ちょっぴりハッタリも必要だと勉強をさせてもらった。

宝石の顧客の方は全く触らせてもらえなかった。
そりゃそうだ。
「信頼」が最も必要な宝石店。
派遣社員などに「店の宝」といえる「顧客様」の相手などさせてもらえるわけがない。

宝のお相手が出来るのは会社の正社員のみ。

女性、男性ともにもちろんスーツ。
メガネをかけている人は、もちろん名のあるブランドで。
ピカピカの靴、何十万の時計、
モンブランのボールペンは必須。
シワのないワイシャツ、セットされた髪。
女性の手にはさりげないがダイヤをたっぷり使った指輪、
キラキラの宝石たち。

その宝石店の女性陣の接客は「動」
華やかに笑い、話しを聞き、リアクションをとっていく。
ほんの少しだけ、でも、気づかれないよう、
前に出ていく瞬間がある。
いわゆる「クロージング」というものだ。
その商品に意識を向けるように少しだけ背中を押す。
買うか買わないか、決定打はお客様にある。
だが、背中をどのタイミングでどんな圧で押すのか、で
その結果は明らかに変わる。
痛気持ちいいマッサージのようにグイっと入っていく。

一方、その店の男性社員の場合は「静」だった。

そうなんですよね。わかりますぅ。
どこまでも物腰柔らかく、きゃっきゃウフフと話していく。

井戸端会議の楽しさを
着飾るということの自己表現を
宝石を着けることによっての自己肯定感のあがり具合を
寄り添われるとどうして心地よくなるのかを
美しいものを身に着けることによって湧き上がる
他者への優越感さえも
彼らにはわかっているように見えた。


きっと、彼らは「自分の中の女性性を開花」させていったのだと思う。


宝石なんて贅沢品なのだ。
生きていくのに必需品ではないし、無くても差し支えない。

でも、それを手に取りたい、それを買いたい、と思う女性に
どこまでも寄り添う男性社員の心にある「女性性」は
すごくハッキリとしたものだったと今でも思う。

ほの暗い闇はそのままに
でも一筋の明るさは忘れずに。

圧をかけるより、どこまでも同調していく。

そして、一番大きな売り上げを立てていく。

私はそれを横目に見ながら
小指の爪より小さな石が入った箱をキレイに包装することに没頭し、
売れた後の事務処理、締め処理を静かにやっていた。

しかし、男性が自分の女性性を開花させてしまった場合、
一瞬でも気を抜くと高確率で「ただのオバチャン」となって近所の井戸端会議のようになっている場合が多いのが難点だ。
しかも勤続年数を重ねれば重ねるほど「オバチャン度」はマシマシになっていく。
お客様に対し「そうですね」という相槌ではなく
「そうよね」と気づかないうちに言っていて、
それがプライベートにも出てしまい、その場がなんともいえない
しょっぱい空気に包まれてしまうらしい。

そして、勤続年数が増すたび女性社員は「オレに任せておけ」と
大漁旗を掲げて荒波に出ていく男たちのような、
頼もしい背中のオッサンになっている。
「ここに行けば間違いない」という決断力マシマシになり
ぐいぐい回りを引っ張っていく。
クセ強めのお客様という波をもろともせず立ち向かう彼女達を見ていると
脳内BGMは北島三郎氏一択だ。


私が勤めていた宝石店は
男性が女性性を開花させてしまうと「近所のオバチャン」になり
女性は「大漁旗をかかげて荒波にでる頼もしいオッサン」になっていた。


当時のことを思い出すと
ワサビを間違えてすごくきかせてしまった蕎麦を食べた時のように
鼻の奥がツーンと痛くなり、ちょっぴり涙が出てしまうのだけど、
またあの時代に戻っても楽しいかな。と、うっすら思う
自分がいることも事実なのであった。

(完)


(感想)
企画に参加させて頂くこと自体初めてなので、
中々に緊張いたしました。
私の初めてを尊敬するクリエーター、山根様に捧げることが出来て
満足しております。。。(その言い方ヤメロ)
この度は楽しい企画をして頂き、ありがとうございました。

感謝をこめて。朱祥


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